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竹刀の剣士、異世界で無双する ハルミ編 その26

「竹刀の剣士、異世界で無双する」の第2部です。ヨウスケの娘のハルミとその周りの人たちの活躍をお楽しみください。

 この小説は、毎週木曜日に更新する予定です。

26 小狐 その弐


 小ぎつねから手をはなすと、小ぎつねはあたしに目配せをした。早くみんなに説明しろ、と言うことなのだろう。

「ねえ、みんな・・・」

あたしは、恐る恐る声を出した。だってこんな話をしても、信じてもらえないかもしれない。あたし自身が夢を見たような気分だから。

「ハル?どうしたんだい?」

ユカが溶けた顔を直して、聞いてくれた。

「あのね、・・・信じられないんだけどね・・・・」

「この小ぎつねが、お稲荷様だってことかい?」

ユカが、あっさりと言い切った。みんなも、なるほど、と納得した顔だ。

「ええっ?どうしてそれを?」

「考えてみてごらん。落ち葉に紛れて現れたこと。丸い形から変身したこと。なにより、ハルにはお稲荷様がついていること。それならこの小ぎつねが、お稲荷様っていうのが、一番しっくりくるだろう?」

ユカがすらすらと説明した。とろけた顔をしていたけど、ちゃんと考えていたんだ。でも、あたしにお稲荷様がついているってのは、ちょっと納得できない。

「そうね~。そう言われれば~。」

「お稲荷様は、狐の神様なのです?納得なのです!」

「・・・ん・・・この子は、・・・お稲荷様・・・」

何か、みんなあっさりと信じちゃった。

「あのね、みんなの考えは、ほとんどあってるんだけど、ちょっと違うの。この小ぎつねは、お稲荷様じゃなくて、お稲荷様のお使いのような者なの。それで、名前がほしいって言うから、”モミジ”って名前を付けたら、喜んでた。あと、これからこの家で暮らすんだって。」

あたしは、みんなに説明した。

「ほえ~!ハルは、小ぎつねとお話しできたのです?わたしもお話したいのです!どうすればいいのです?」

ミオが食いついてくるけど、食いつくところが違うような・・・。

「・・・毎日、・・この子と・・会える・・」

サキは、小ぎつねを抱っこしたまま、離さない。可愛い顔が輝いている。

「お姉ちゃん~たちにも~、しらせないとね~。」

ナナもニコニコしている。

「なるほど、ハルはこのモミジと話すことができるんだ、・・・剣道を頑張って、お参りもがんばれば、わたしたちもモミジと話すことが、できるかも・・・」

ユカが、顎に手を当てて考えている。

 なんか少しずれてる気がしたけど、みんなが納得したので、もういいや。あたしは家の方に、じいちゃんとばあちゃんを呼びに行った。


「じいちゃん!ばあちゃん!庭に来て!」

「どうしたんじゃ?」

「何ですか?大きな声を出して?」

じいちゃんとばあちゃんが、小走りでやってきた。あたしはじいちゃんとばあちゃんを連れて、みんなのところに行き、小ぎつねのモミジを紹介した。

「なんと、お稲荷様のお使いが・・・。これは大変じゃ!どこに住んでいただこうかのう?」

「お稲荷様は、油揚げが好物と聞いてますが、お食事は油揚げでよいのでしょうかねえ?」

じいちゃんもばあちゃんも、あっさり納得してくれたけど、なんだろう、この違和感。みんな、不思議なことを当たり前に感じているのが、納得できない?

「それは、ほれ。目の前に不思議の塊がおるからのう。」

「ほほほほっ。春海には、お稲荷様のご加護があると言ったでしょう?こういうこともあると思っていましたよ?」

 じいちゃん、あたしは剣道がちょっと好きな、ただの小学1年生だよ?それを、不思議の塊なんて・・失礼な。ばあちゃんも、お稲荷様のご加護なんて、真剣に信じてたの?今は、21世紀だよ?神話の時代じゃないよ?科学の時代なんだから!

「確かに科学の時代だけど、それでも、わたしたちに理解できないことは、たくさんあるよ。小学校に入学してから、たくさんの不思議なことがあったのだから、このくらいは当たり前って、思ってしまうよ。」

ユカが悟ったように、説明した。

(わらわには、食事は必要ないのじゃ。人々の心から糧を得ておるからな。しかし、300年ぶりに現世に来れたのじゃ。この世界のおいしいものを食べてみたいのう。食事はそなたらと同じでよいと、伝えてくれ。寝るところも、そなたと同じでよい。)

突然、モミジの声が聞こえた。

(今は、触れていませんよね?どうして声が聞こえるのですか?)

あたしは、びっくりした。

(先ほど、つながりができたと言うたであろう?一度つながりができれば、触れていなくても、話すことができるのじゃ。)

(じゃあ、モミジはあたしの考えが読めるんですか?)

(うん?すべての考えが読めるわけではないぞ・・・)

うそだ~。あたしの頭の中を覗けるんだ~。

(そう、嫌がるでない。まだ、わらわには力が足りんでな、それほど読めるわけではない。)

(やっぱり、読めるんだ~!)

あたしが頭を抱えていると、じいちゃんが

「春海、どうした?」

と尋ねてきた。

「うん、モミジがあたしに話しかけてきたの。食べ物はみんなと同じがいいんだって。そして、寝るのも、あたしの布団でいいんだって。」

「まあ、それはそれは。楽しくなりますねえ。家族が増えたようです。」

ばあちゃんが大喜びをしている。

「ハルの布団なのです?なんてこと、なのです!わたしも一緒に寝たいのです!」

ミオがなんかずれてる。

「・・・話せるのは・・・ハルだけ・・・」

サキが、落ち込んでいる。

「ハル、モミジ様に聞いてみてくれないか?わたしたちとも話せるようになれるのか?って」

ユカが真剣な目をしている。

「ええっと?・・・・」

(うむ、聞こえておる。皆には、これからの修行次第じゃと、答えておくがよい。)

「なんか、みんなの修行次第だって。」

「・・・ん・・・分かった。・・・がんばる・・・・」

「そうか~。じゃあ~もっと強くなれるように~がんばろう~。」

「お母さんにお願いして、稽古の日を増やしてもらおう。」

ユカが目を光らせる。

「わたしも、なのです。いっぱい稽古して、強くなるのです~。」

ミオが張り切っている。

「わしらも、負けておれんな。」

「ええ、そうですね。でも、薙刀の道場はもうありませんし、どうしたらよいかしら?」

「剣持道場で稽古するがええ。剣持先生の奥さんが、薙刀の使い手じゃ。お願いしてみよう。」

剣持先生の奥さんも、武道家だったんだ。知らなかった?今まで、奥さんが道場に来たことがなかったからねえ。

「剣持先生の奥さま?ひょっとして、静子先輩ではありませんか?」

ばあちゃんが、びっくりして尋ねる。

「ほう、よく知っておるの。その通りじゃ。」

「静子先輩は、私の薙刀道場の先輩だったのですよ。強い人で、私は一本も取れませんでした。」

ばあちゃんも、そんなつながりがあったんだ。



 お読みいただき、ありがとうございます。

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