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竹刀の剣士、異世界で無双する ハルミ編 その20

「竹刀の剣士、異世界で無双する」の第2部です。ヨウスケの娘のハルミとその周りの人たちの活躍をお楽しみください。

 この小説は、毎週木曜日に更新する予定です。

20 稲荷の剣 その壱


 ダイスケグループとの対決が無事に?終わって、みんなで道場に帰ってきた。いや、もう大変でした。戦いが?それも大変だったけど、それはいいの、あたしが二人を倒しただけで終わったから。大変だったのは、主にクミさんたち。

「はるさまあああ~!美しかったですううう~!尊かったですううう~!かっこよかったですううう~!」

「ハル様の素晴らしい技あああ~!堪能しましたあああ~!これは、ぜひ編集して~!保存せねばあああああ~!」

「ハル様には~、ぜひ~、あのセリフを~おねがいします~~!」

「良子さん、あのセリフって、何?」

良子さんのすがる目を、あたしは冷ややかに見返す。

「多分、あれじゃな。」

「ええ、あれですね。」

じいちゃんと母さんが、後ろでうなずいている。

「じいちゃん、母さん?何のこと?」

あたしは、良子さんは放っておくことにして、じいちゃんと母さんに向き直る。

「いや・・、結構、恥ずかしいセリフじゃが・・」

「でも、かっこいいですよ。一度は言ってみたいセリフですね。恥ずかしくて、言えませんけど。」

「だからっ!何なの?」

2人は目で合図した後、同時に口を開いた。

「「また、つまらぬものを斬ってしまった。」」

「ブホッ!・・それは、・・確かに恥ずかしいセリフじゃ!」

横で剣持先生が、吹き出した。腹を抱えて笑っている。じいちゃんも母さんも赤い顔をして、口を押えている。

「かっこいいセリフですが、自分で言ってみると、破壊力がすごいですね・・。ブフッ!」

母さんもついに、吹き出した。

「それです~!動画を編集するので、そのセリフを入れてもいいですか~?」

「あの場面に、ぜひ入れましょう~。」

良子さんと美穂さんが回り込んであたしに縋り付く。そのセリフは、あれだよね。アニメのル〇ン〇世に出て来る、石〇五右〇門さんのセリフだよね。アニメで見ている分にはかっこいいけど、実際に言うのは・・・・・。

「絶対にダメ!恥ずかしすぎる!」

まあ、動画を広めようとしてないところはよかったんだけどね。こんな調子で、3人できゃあきゃあ、うるさいこと、うるさいこと。


 立ち直った剣持先生が、変なことを言い出した。

「ところで、春海があの中学生を斬った時、一瞬竹刀が光らんかったか?わしには、光ったように見えたのじゃが?」

そんなわけないでしょう。

「先生、実は、わしにも光ったように見えたんです。日光の反射かと思ったですが。」

じいちゃんまで・・・?。そんなこと言ったら、クミさんたちがまた興奮するよ?

「本当ですかあああ~!先生方にも~!ハル様の光り輝く~!お姿が見えたのですねえええ!」

「ハル様は、天使ですううう~!いや、神ですううう~!みなさん~!ハル様をあがめるのですううう~!」

「・・・・・(涙、涙)。」

ほら、ひどいことになった。なんか新興宗教になってる。


「光ったなんて、そんなはずないよねえ?」

「いいえ。私にも、見えましたよ。」

母さん?何さらっと、とんでもないこと言ってんの?

「優香里さんたちはどうでしたか?」

「わたしもそう言われれば、見えたような?」

ユカ?都合よく合わせてないよねえ?

「わたしには分からなかったのです。」

ミオ。いいのよ。正直に、そんなわけないって言って。

「・・・・見えなかった。・・・・・」

サキ。そうよねえ。そんなはずないもんね。

「わたしも~、分かりません~でした~。」

ナナ、それでいいの。おとなたちがおかしいんだから。

「久美子さん。動画を、今見ることはできるかの?」

先生、もうやめようよ。

「はい、できます。少しお待ちください。」

クミさんがカメラとタブレットをつないで、操作している。

「はい、出ます。タブレット画面をご覧ください。」

みんな小さなタブレットの周りに集まる。

「これは、ハル様を真横から撮った映像です。では、再生します。」

あたしが、カズキと対峙した時の映像だ。じりじりと間合いを詰めていく姿が映っている、カズキが右ひじを引いた。ここだ。あたしが逆袈裟を放ったところだ。でも残念、映像では竹刀がぶれて映っていた。あたしの居合が速すぎたんだ。

「これほどの速さとは。恐れ入ったのう。」

じいちゃんが感心している。クミさんは、映像をいったん止めた。

「久美子さん、スローモーションは、できるかの?」

先生の注文に、久美子さんはうなだれて、首を振る。

「申し訳ありません、超望遠で撮影したので、スローモーションはできないのです。もっといいカメラがあればできたのですが・・・・。」

「そうか、無理を言ってすまんかったのう。再生を続けてくれ。」

「はい。」

そして、次にあたしがジャンプして、袈裟切りを放った場面が映し出された。「えいー!」という、あたしの気合声も聞こえてきた。今度は竹刀はぶれなかったが、光ってもいなかった。

「光っとらんのう。」

残念そうに先生が言う。

「この時も光っていましたよ。カメラに映らないだけです。」

母さん?それどういうこと?

「美和子さん。何か知っておるんかの?」

じいちゃんの問いかけに、母さんが微笑みながら話す。

「本当にねえ。ここまで育ってくれたなんて、私は嬉しいわ。春海は、私の誇りです。」

そう言って、母さんはあたしをギュッと抱きしめた。クミさんたちがアワアワしてる。美穂さんが、目をキラキラさせて「ふつくしい。」なんてつぶやいてる。それ、日本語なの?


 母さんはあたしを離すと、みんなに向かって深く礼をした。

「ここまで、育ててくださって、本当にありがとうございます。春海の成長は、皆さんのおかげです。」

母さんがウルウルしてる。みんなは、訳が分からず、ぽかんとしている。あたしもわかんない。

「そうですね、説明が必要ですね。」

みんなコクコクとうなずいた。


「長い話になります。

 私が、今の図書館に勤め始めたのは、春海が生まれて1歳になったころでした。最初に与えられた仕事が、ある古文書の修繕と、翻訳でした。」

「こもんじょって、何なのです?」

ミオが質問した。

「とても古い本のことよ。今とは字の書き方が違うから、なかなか読めないの。」

「母さんは、読めるの?」

「ええ、大学で勉強したのよ。

 その古文書は「龍之介たつのすけ日記」と言います。」

「ちょっと待て、龍之介たつのすけという名前はきいたことがあるぞ。」

じいちゃんが思い出す。

「そうじゃ。うちのご先祖の初代が、龍之介たつのすけじゃった。今の場所に住み始めた人じゃ。」

「その通りです。その龍之介たつのすけの日記が残っていたんです。」

「それは、何というか。奇跡じゃな?確か、江戸時代の初めのころの人じゃ、今から400年は前の人じゃ。」

「矢賀家の3代前の方が、蔵から出てきたので図書館に寄付した、と記録にありました。」

「3代前じゃと、わしの曽じいさんじゃな、ざっと150年は前の人じゃ。」

「はい、寄付は、明治7年とありましたので、そのくらいですね。」

「そんな昔から、あの図書館があったこともびっくりです。」

良子さんがため息をつく。

「安和市の図書館は、明治5年に作られたそうです。場所は色々と移動したそうですけど。今でもその頃の貸し出し記録が少し残っていますよ?」

「へえ~?」

良子さんが目を丸くした。

「その、龍之介たつのすけ日記ですが、ほとんどは日常の、こまごまとしたことが書かれていました。年貢をどのくらい集めたとか。村人の争いを解決したとか。殿さまに会いに行ったとか。大したことではありません。」

「いや、大したことはあるぞ。そういう記録があるということは、矢賀家はこの辺りの名主だったんじゃろう?」

先生が突っ込む。

「はい。苗字があることからもわかるように、矢賀家は安和市北部地域の名主だったようです。

 でも、大切なのは、お稲荷さんです。」

「お稲荷さんって、あたし達が毎日お参りしている、あのお稲荷さんのこと?」

「その通りよ、春海。龍之介たつのすけは、家のあの場所に祠を建てた人なのよ。

 日記には、お稲荷さんにまつわる、不思議な話が書いてあったのです。

 その話は、龍之介たつのすけも聞いた話として書かれていました。三男の四郎左衛門によく語って聞かせたそうです。」

「ちょっと待て?四郎左衛門じゃと?聞いたことがあるぞ。」

先生が待ったをかけた。

「そうですね。先生ならご存じでしょう。のちの、剣持四郎左衛門。剣持家に養子に入って、この道場を始めた、剣持先生のご先祖様ですよ。」

「ええっ?剣持先生のご先祖様が、矢賀家の人だったの?」

あたしはびっくりした。

「そんなところで、繋がっていたのですか。」

美穂さんが感心している。先生もポカンとしている。先生のポカンはレアだなあ。

「四郎左衛門は、小さいころから剣術が好きで、とてもたくさん稽古して、このあたり一番の剣豪になった人なのよ。」

「そうじゃ、わしも聞いたことがある。しかし、四郎左衛門が矢賀家の三男じゃったとは知らんかった。」

「先生にも、知らないことがあるのです?」

「・・・ホッとした・・・。」

「美央さん、沙紀さん、先生にも知らないことがあるのは、当たり前ですよ。」

「「ごめんなさ~い。」」

「その、四郎左衛門さんが好きだった話と言うのが・・・。」


 母さんの話は、こうだった。


 



 お読みいただき、ありがとうございます。

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