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第21話 喜びと不安

少しの間、思考が止まった。


「アクセル、あんた…」


「アクセルさん、すごすぎます!!」


試験の手応えが少しあっただけに不合格という結果は到底受け入れ難いものだったが、主席合格という結果にはさらに信じ難いものがある。


「ねぇ、この第二席の人って…」


「ああ。この国の第四王子だ。」


アルフレッド・フォン・オルレアン


このヤムル王国の王家であるオルレアン家の四男に当たる人物だ。

成績優秀かつ眉目秀麗だが、あまり王位継承に興味はないらしく、自由奔放な性格であるとの噂を耳にしたことがある。


この学院は貴族だけでなく王族も受験することがあることは知っていたが、まさか自分が王子と同級生になるとは思ってもみなかった。


「…あんた、王子様に勝っちゃって大丈夫なの?」


ティナが呆れた顔でこちらを見てくる。


確かに一国の王子がそこらの貴族の息子でしかない俺なんかに劣ったとなると大問題になりかねない…のかもしれない。


(あれ…俺の楽しい学生生活、早くも死亡決定か…?)


「…まぁ、きっと大丈夫だろ。変に目立ってしまうのはあまり好きじゃないけど…」


「それは残念だったな。すでに学院の中はお前の噂で持ちきりだ。」


芯の通った声がいきなり背後から聞こえて、3人の体はビクッと痙攣する。


振り返るとそこにはこの学院の校長…『疾風』のシリウスが立っていた。


「こ、校長先生…!!」


「おうお前ら。とりあえずは合格おめでとう」


「…ありがとうございます…!」


突然の校長兼S級冒険者の登場で辺りはざわつき、いつのまにか俺たちを取り囲むように円ができている。


「アクセル・ベーカーだな」


「…はい」


「ジムとマリーは元気か?」


「父さんと母さんをご存じなんですか?」


「ああ、2人とも学院時代の生意気な後輩だ。そんなことよりお前には聞きたいことが山ほどある。ここじゃあれだ、ちょっとついて来い。」


そう言ってシリウスは校舎の方へと歩きはじめた。


「ごめんティナ、エリス。ちょっと行ってくるから先に帰ってて」


「うん…気をつけてね」


ティナが心配そうな顔で俺を見つめる。


「そんな心配することないって、ちょっと話してくるだけだからさ」


そう言いながらシリウスの後ろについていく。


(実技試験の時の『眼』の話か?それともやはりテスト結果に何か問題があったのか…?

まあどちらにせよ話を聞いてからだな……)


2人は多くの群衆に見守られながら大きな校舎の玄関を潜り抜けた。


7階 校長室


「入れ」


シリウスが扉を開き、中に俺を入らせる。


「…!」


校長室の中は、仕事机に山積みの書類、座り心地の良さそうな大きなソファ…と内装は少し立派などこにでもある普通の執務室といった感じだ。


しかし壁に飾られている歴代の校長をはじめ、これまでこの学院から卒業していった名だたる冒険者たちの似顔絵がこの部屋に絢爛さを与えていた。


「そこに座れ」


シリウスが指差したソファに腰掛ける。

見た目の通り、ふかふかでとても座り心地がいい。


「何を聞かれるのかはもうだいたい分かっているだろう。

まずはあの試験の日に使った能力のこと、それから話してもらおうか。」



______________________________________________



21話を読んでいただき本当にありがとうございます!


これからも毎日更新頑張ってまいりますので、面白いと思っていただけましたらブックマーク登録やいいねをよろしくお願い致します!


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