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第17話 裏切り者の一族



 「次は誰がやるんだ?」


試験官である『疾風』のシリウスが手に持ったペンをくるくる回しながらこちらを見渡す。

さっきのティナとの勝負を見て、受験生たちは萎縮してしまっているようだ。


(みんなの前で眼を使うのはちょっと怖いけど…行くか)


俺が手を上げて返事をしようとする。


「俺がやる!!!俺にやらせてくれ!!!!!」


とてつもなく大きな声が校庭中に広がる。

驚いて振り向いたが、誰が声を出したのか分からなかった。


「どけ!俺が出る!!!!」


受験生たちをかき分けて出てきたのは、成人男性の身長の半分くらいしかない大きさのとてもがっしりとした体つきの男だった。

肩幅が広く、特に腕の筋肉が発達しているのがよくわかる。


「ドワーフか?」


「なんでこんなところに…」


その小さい男を見て、嘲笑まじりの小言を言う受験生達。


「うるせぇ!黙ってねえと全員不合格にすんぞ!!!!」


シリウスの一喝に場が静まりかえる。


「受験番号と名前を言え。」


「75番、ジャン・アルゴールだ!」


(アルゴールって…)


前世の手がかりを掴むためによく下町に行っていた俺には、「アルゴール」という苗字に聞き覚えがあった。


『ミリアスの裏切り者アルゴール一族』 


とても優秀な鍛冶師一族であり、長年ミリアス王国の王族お抱え鍛冶師として活躍していたというアルゴール一族。


だがある事件を境目に彼らは『裏切り者』のレッテルを貼られ、国賊としてミリアス王国を追われることになったという。


このヤムル王国に亡命していたとは知らなかったが。



「よし、いつでもいいぞ」


シリウスがペンを回しながらジャンと名乗ったその小男に向き合う。


「舐めやがってぇぇえ!」


シリウスに向かって突っ込んでいくジャン。

それを難なく交わしてシリウスはジャンの足をはらう。


「ぐうっ…」


なす術なく地面に転がるジャン。


すぐに立ちあがろうとした時にはすでに、名簿帳に何かを書き込んでいるシリウスがジャンの背中の上に座っていた。


「おめぇはまだまだだ。腕力はあっても体の使い方が全然ダメだ。スピードも足りてない。もっと弾力のある柔らかい筋肉に作り替える必要があるな。」


「くそっ」


ジャンは立ち上がり、ずかずかと校舎へと歩いていく。


「あともっと余裕を持って生きろよ〜

お前の人生なんだから(・・・・・・・・・・)


(…?)


シリウスの言った意味がまだその時の俺には分からなかった。


「さあ次だ。どんどん来い!」


(よし…行くか)


俺は手を上げ、試験官の前へとを歩を進めた。


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