第15話 実技試験
「あ、いた!アクセル!」
受験票のチェックを終えて、試験会場である魔法学院の校庭へと向かっていると、後ろから紅髪の女の子が近づいてきた。ティナだ。
「アクセルは朝のテストはどうだった?」
「んー、まあまあだと思うけど」
今日は入学試験当日。
午前中は筆記試験で、基本的な魔法理論や魔物の知識などが出題された。
とはいっても、難しい問題が出題されたというわけではなく、一般常識程度の知識を持っているかどうかを確認された、という感じだろうか。
あくまで実技あってこそなのだ。
どれだけ優れた知識を持っていたとしても、E級魔物に勝てないようなヤツは魔術師として無価値、ということだ。
だからこそ、午後のこの実技試験がこの魔法学院入学を決めるものだと言っても過言ではない。
それはティナもわかっているようで、少し緊張した表情を浮かべている。
「いつも通りやれば…きっと大丈夫よね」
「うん、ティナなら大丈夫。少なくとも組み手はね、俺が保証するよ」
実技試験では、素手での試験官との組み手と、魔法による的当てをする。
基本やり直しはなく、一発勝負だ。
ティナを勇気づけようとしているが、もちろん俺だって緊張している。
(テンパって的当て全はずししそうな気がしてきたな…)
俺がそんなことを考えている時だった。
「ドゴォォン!!」
校庭の中心に何かが落ちてきた、いや、降りてきたという方が正しいだろうか。
受験生皆が言葉を失っている中、その何か…この世界に14人しかいないというS級冒険者、『疾風』シリウス・ジャーミングは平然とこちらに歩いてくる。
俺の体づくりをサポートしてくれたデルトイドと比べても遜色ない体つきに青色の髪。
そしてギラギラと輝く目に左頬に入った縦傷。
その姿は水狼を連想させる。
「お、いい感じで目立てたっぽいか?
おーうよくきたなお前ら、ここの校長のシリウスだ。今日はお前らの組み手の相手をするためにきた。ま、よろしくな」
「おい嘘だろ、本物の『疾風』だ…」
「校長自ら登場かよ」
「私ずっとシリウス様のファンだったの、それでここに入学しようと…ああ、夢みたい」
突然のS級冒険者の登場に受験生たちがざわつく。
俺もティナも、誰もが知るそのヒーローの登場に驚き、その場で固まっていた。
「あーそれで試合形式なんだが、俺は両手使わねぇからお前らとりあえず俺に一撃入れてみろ。そしたら合格だ。魔法も使っていいが、これはあくまで組手の試験だということを分かっておけ。ま、詠唱する時間なんて与えんがな。」
「ムリだろ…」
「S級冒険者だぜ?」
生徒たちがさらにざわつく中、1人の受験生が手を挙げる。
「あ、あの、もし僕たちがシリアスさんに一撃入れることができなかった時はどうなるんでしょうか」
「ん?ああ、そりゃあそん時は合格できないかもしれねぇなあ。それと俺のことはシリウス先生と呼べ。これからお前らの教師になろうってんだから。まぁ入学できたらの話だがな」
「いや、だからS級相手に俺らが一撃入れるなんて無理に決まってるじゃねぇかよ…」
「学院は最初から俺たちを受からせる気がないんだ!」
「ごちゃごちゃ言ってるヤツは今すぐ帰っていいぞ。お前らのいう通り、俺たちは何もせずに文句だけ言う奴を受からせる気はねぇからよ」
校庭がしんと静まり返る。
「…で、誰からやる?順番なんて決まってねぇから最初にやりたい奴は前に出てこい」
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