第12話 実戦練習
「ッ…」
勢いよく距離を詰めてきたティナが繰り出す素早いパンチを、顔面ギリギリのところでいなす。
俺はティナの腕を持ち、その勢いを利用して投げようとするが、ティナはクルッと体を捻りながらジャンプして難なくかわす。
そしてそのまま俺の背後を取って、肘打ちを叩き込もうとしている。
俺は反射的に、足を引き摺って地面の砂を巻き上げるようにしながら、ティナから距離を取り、太陽とティナの間に回り込む。
「うっ…!!」
咄嗟に目を細めてしまうティナの隙を見逃さない。
俺は低い姿勢で素早く接近し、掌底打ちを狙う。
「かかったわね!!」
俺が距離を詰めてくる事を読んでいたのだろう。ティナは素早く体を捻り、俺の左脇腹を目掛けて膝を入れようとする。
俺は咄嗟に右方向に跳び、勢いを殺しながらティナの膝をブロックする。
「さっすがぁ」
「ティナこそ前よりだいぶ速くなってないか?」
「まだまだこんなもんじゃないわよ!」
ティナが再び距離を詰める。
軽快なステップから繰り出されるティナの攻撃を捌きつつ、カウンターの隙を狙う。
お互い一歩も譲らないまま、1、2分が経過する。
(そろそろ…使うか…)
ティナが前足で踏み込み、重心が前に移ったタイミングで俺は後方に飛び、距離を取る。
「ふーぅ」
息を整え、目を瞑る。
「なに?バカにしてるの!?」
この隙を逃すはずもなく、ティナがまっすぐに俺の方へと飛びかかってくるのがわかる。
(…『魂の眼』!)
目を開いたとき、俺の顔の10センチ前まで拳の形をしたうすい光を纏っている『ベール』が迫っていた。
時間がゆっくり進んでいるようだ。
目の前にいるティナはもちろん、離れて俺たちを見ている師匠フローレスの体の動きや鼓動、息遣いまで全てが「視える」。
(遅く感じる…)
体を反らせ、難なくパンチをかわして背後をとり、軸足が変わる瞬間を見計らってティナの足を払う。
「あっ…」
俺はそのままバランスを崩したティナを受け止める。
とても驚いた表情のティナの綺麗な瑠璃色の瞳と目が合う。
「ッ……,,,,,,,,,,,,,,,,,,,」
ティナが顔を背ける。
そんなに負けたのが悔しかったのだろうか。
「勝負あり、ですね」
そう言ってフローレスが俺たちの方に歩いてくる。
「な、何なのよその目は…あんた今、とんでもない動きしてたわよ?」
「ちょっと色々あってね、話せば長くなるんだけど」
「…とりあえず離してくれない?」
「あ、ごめん」
立ち上がってパンパンとズボンについた砂を払い落とすティナ。
頬は少しだけ赤く染まっている。
「それで、一体なにがあったのよ?」
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