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「お前、死ぬ気だったの。」


圭司は不意にかけられた言葉を理解し飲み込むまで、そこそこの時間を有した。


「あ、や、ち…ちがう、よ。

 …あの、ちょ、ちょっと、

 その、ボーっと、してて…。」


しどろもどろに答えて、死ぬ気はなかったと言ったつもりだったが、じっと圭司を見下ろしている三白眼の少年はどう捉えたのだろうか。


そのまま三白眼の少年は圭司の心を見透かそうとしているかのように、圭司から目を逸らさず見つめている。




「命、大事にしろよ。」


そう言われた瞬間、圭司は自分が囲われていた黒い何かが割れるような、弾けるような感覚に陥った。意図せず涙が溢れてくるのも感じたが、なぜだかそれがとても心地良かった。


いきなり泣き出した圭司に一瞬戸惑いを見せた三白眼の少年は、自分のポケットを探ったかと思えば、やれやれといった風のため息を1つつくと、圭司の前にしゃがみ込み少年の服の袖で優しく圭司の涙を拭った。



「ハンカチ、持ってなかったわ。」


少年がはにかむように笑ったように見えたが、気のせいだったのか、圭司を見据えていた時と少年の表情に変化はなかった。


近くにあまり人気のない公園があるから、そこに行こうと少年に提案され、2人で向かう。道中、交わす言葉はとても少なかったが、圭司はすごく居心地が良い『場所』を見つけたと1歩1歩、心が軽くなっていくのを感じていた。





凪と名乗る三白眼の少年と圭司は、公園に着くとお互いの事情には踏み込まず、たくさんたくさん遊んだ。少年2人が年相応な遊びを心ゆくまで楽しんだ。


凪とまたこの公園で会うことを約束し、圭司は帰路についた。あれだけ帰るのを躊躇っていた家への道のりを今まで経験したことないほどの軽い心で歩いている自分に驚きつつも、楽しかった凪とのヒトトキを思い出してついつい口元が緩んでしまう自分を止めることはしなかった。




圭司は、凪の言葉で自分は生きていてもいいんだと思った。今まで自分の存在意義を見出すことが出来ずに、生きているのか死んでいるのかさえわからない瞬間があったほど、圭司の心は病んでいた。


たった1言。

『命を大事に』

ただこれだけの言葉に圭司の心は救われたのだった。










凪との出会いからこれまで凪と過ごした時間を思い出しては、いまだ枯れてはくれない涙を流し続ける圭司は、凪によって生きていく指針のようなものを得られたのに、それを見失ってしまい日に日に無気力になっていっていた。










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