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凪がいなくなってから1週間が経っていた。
あの時、救急車は来たが、凪は救急車に乗せられることもなく死亡が確認され、警察が大勢来た。
あの場にいた鷲河中の連中1人1人に事情を聞いている警察官と、凪の側から頑として動かない圭司と、凪を刺した奴を捕まえ、現場に戻って来た蛇山中の連中。
この日の河川敷は随分と長い時間、いつともは違う騒然とした環境が続いていた。
圭司はこの1週間、何も出来ずにいた。物理的に警察から自宅で謹慎しているよう言われたからではない。
自分の中の大半を占めるであろう、あまりにも大きな存在を失ってしまい、何をしたらいいのか、何をすればいいのかわからなくなってしまったのだ。
寝れば憧れの凪が夢まで会いに来てくれるかもしれない。いや、今の腑抜けた自分を叱りに来てくれるだろうか。
しかし、自分のせいで、という思いが圭司の中には重く深く存在しており、凪に合わせる顔がないと悔み、夢に見るかもしれないと考えるだけで怖気付いて、眠ることすら出来なくなっていた。
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圭司と凪の出会いは2年前で、当時凪は小6、圭司は小5の時だった。
普通に生活していたのならば、違う小学校に通っている2人が出会うことはなかったのだろう。凪は祖母との2人暮らし、圭司もごく一般的な家庭とは言えない環境にあったため、2人の出会いは今思えば必然だったのかもしれない。
圭司の家庭はいわゆる仮面家族だった。家の外では仲睦まじい家族だったが、家の中での会話は一切なく、圭司はずっと1人でレトルトやインスタントの食事が当たり前であった。
圭司自身、当時は外で遊びまわるような活発な性格はしておらず、中に引きこもりがちだったため、学校にいっても友達というものはいなかった。
学校生活において圭司の存在は、同年代の中で異質だったのは間違いなく、揶揄いやイジメの対象になってしまったのは避けようがなかったのだろう。
会話のない家庭に相談することも出来ず、誰にも助けを求める術も知らず、圭司は幼いながらも絶望という感情を自身の内に日々育てていくしかなかった。
圭司の内が絶望一色に染まりつつあったある日の放課後、圭司は家に帰る気が失せてしまい、ただ当てもなく歩き続けていた。ひたすら真っ直ぐに心と頭を無にして歩き続ける。目の前の信号が直前で赤に変わったことにも気付かずに。
突然、ランドセルが後ろに引っ張られ、圭司は尻餅をついてしまった。お尻に響く痛みと目の前をクラクションを鳴らしながら走り抜ける車と尻餅をついて座り込んでしまっている圭司を見下ろす三白眼の少年と。
圭司は今の状況を飲み込めずにポカンとあほヅラを晒していた。




