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ギルド内にある、相談室のような部屋に通された。こんな個室があることをケイシーは初めて知った。
「私に話があるとか?相談か何かですか?」
水色の髪の男は隙のない笑顔でケイシーから用件をさっさと引き出そうとする。くだらない話なら他の職員に丸投げしてやろうと思っていた。
「僕はケイシーと言います。あなたはギルドの中でも立場が上にありそうなので声をかけさせてもらいました。
単刀直入にお聞きします。『転来人』の噂はどこまで本当のことなのか、ご存知ないですか?」
水色の髪の男はピクリと眉をあげた。『転来人』と言ったか?
「私はガイディックと申します。以後、お見知りおきを。それで?転来人、ですか?その質問の意図を伺ってもよろしいですか?」
水色の髪の男、ガイディックはケイシーの知る転来人にまつわる噂話より更に詳しい話を持っている。ギルドにとって転来人は喉から手が出るほど獲得したい人材だからだ。
転来人がギルドに現れるのはかなり珍しい。なぜなら、神出鬼没な転来人はギルドに到達する前に国に保護されてしまうからだ。
転来人を知らない一般人は突然現れた謎の多い人間に対し、警戒と不信感を持って国に通報する。義務ではないが、当たり前の流れであろう。別にそのことに不満は持っていない。
国は保護した転来人を手厚く囲う。有事の際に『利用』するためだ。
近年、他国との戦争などどいう物騒な話は聞かないが、いつ何時そういった事態に陥るかわからないから、なるべく奥の手は確保しておきたいのだろう。
国が保護した転来人は極秘事項であり、今現在、何人の転来人が保護されているのか、その転来人がどういう姿形をしているのか、全くと言っていいほど情報はない。
巷で囁かれている転来人に関する噂話は、重要なところを伏せただけの本当の話であること。ギルドでも過去に数人、転来人の登録をしたことがあった。現在は1人もいないが。
ガイディックはケイシーの持ってきた話が、ひょっとするとひょっとするかもしれないとメラメラと出世への熱を燃え上がらせ始めていた。




