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「ティルさん!おはようございまーす!」
「あら、ケイジくん。今日も早起きね!おはよう!」
朝から機嫌良くニコニコと挨拶を交わす圭司とシーティル。ケイロンは意外と朝が弱く、まだ起きてこない。
「おれ、ミルク並べますねー!」
自主的に朝ごはんの準備を手伝うケイジに母性本能を撃ち抜かれまくっているシーティルは、もうこの子ウチの子でいいのでは?と密かな願望を抱いていた。
「ロンはまだ起きてこないだろうし、先に食べちゃいましょ!」
「はーい!いただきまっす!」
ケイジが食事の前に必ず顔の前で1拍することにも慣れてきた今日この頃。シーティルには1つだけ気になっていることがあった。
昼間のケイジはすごく良く畑も手伝ってくれて、いつもニコニコと楽しそうにしているのだが、夜になるとケイジに使わせている部屋から押し殺したような泣き声が聞こえるのだ。それも毎晩。
ケイジの生い立ち、家族に恵まれなかった過去、ナギさんという人との別れ、そういうものも全て受け止めてあげるから、これからの人生を笑って生きてもらいたいと心の底から願っているシーティル。
1人で泣いているケイジをいじらしく思いつつ、本当の意味で信頼されるまではまだ時間がかかるだろうことも頭では理解している。
ケイジの抱える心の穴は、時間が解決してくれるようなものとは思えない。せめて、少しでもその穴が小さくなって穏やかな時間を過ごしてくれればいいなと思う。
何かいい方法はないかしら?とケイジとにこやかに朝ご飯を食べながら、考えていた。
「ふわぁ〜、おはよう、ティル、ケイジ。」
やっとケイロンが起きてきた。
圭司はこの夫婦を好きになっていた。家族というものに縁のなかった自分には勿体ないくらいの優しく温かい人たちだと。
それでも、心に空いた穴は少しも埋まってはいない。やっぱり凪に会いたいと強く強く願ってしまう。
「ただいま〜。ダディ、マミィ、起きてる?」




