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黒い子犬らしきモノは怪我でもしているのか、凪にグルルと威嚇しつつも動かなかった。額に十字架のような形にそこだけ白い毛が生えてる。
「お前、ジャーキー食うか。」
凪が気に入った干し肉をケイシーはいくつか凪に渡していて、凪はそれを目の前で弱っているらしい黒い子犬らしきモノに差し出した。
まだグルルと威嚇しながらも、いい匂いがするそれに鼻を向ける。それを見て凪はフッと鼻で笑うと差し出していた干し肉を黒い子犬らしきモノの前に投げた。
「やるよ。それ。美味いぞ。」
黒い子犬らしきモノは威嚇の声をひそめ、恐る恐る干し肉に齧り付いた。黒い子犬らしきモノはこれで体力が回復し、生き長らえられると思った。そして、この男に借りが出来てしまったと内心苦々しくも思っていた。
「わりーな、俺じゃ飼ってやれねーわ。良い人に拾われるといいな。それ食って元気出せよ。」
ケイシーはナギがいないことにやっと気付いた。どこに行ったのかと慌てて探すと、街道から外れた森の前にナギを見つける。あんなところで何を?と思いながら近付いていく。
ナギはズボンの両ポケットにそれぞれ両手を入れ、慈愛に満ちた目で何かを見下ろしている。視線の先には黒い子犬らしきモノがいて、干し肉を齧っているらしい。
「え?なんで?」
その姿が一瞬、スポットライトを浴びているように見えたケイシーは目を擦り、再度見た時には普通の風景に戻っていた。
ケイシーに気付いた凪は黒い子犬らしきモノに、じゃーな、と挨拶し、ケイシーの元へと戻ってきた。ケイシーがもっと近付いていたら、凪が子犬だと思っている黒い子犬らしきモノの正体にも気付けていたのかもしれない。
今日か明日にでもケイシーの実家に着く予定で2人は再び歩き出した。




