18
小さな村の入り口に到着したナギとケイシー。
今日はここで宿を取ろうとケイシーが提案する。するとナギがハッとした顔をして、気まずそうにケイシーを見た。
「悪い。俺、金持ってない。」
その言葉にケイシーもハッとした。ゴソゴソと自分の荷物を漁る。巾着のような小袋を取り出し中を確認し、落胆する。
「すいません。僕も2人で宿に泊まるほどのお金を持っていませんでした。」
ケイシーはあまり裕福ではない農家の1人息子である。両親は農業を苦とは思っていなかったが、ケイシーは裕福な暮らしをしてみたいし、両親にも楽をさせたいと夢見ていた。
ケイシーのそんな漠然とした夢を両親は手放しで応援してくれて、旅という名の出稼ぎに行くことに背中を押してくれた。
一流の冒険者になるという、幼な子なら誰でも一度は夢見る物語を追いかけてみようと両親の元を離れた。
冒険者になるにはギルドという組織に登録するのだが、適性チェックが行われ、まずはそれを突破しないことには何も始まらないのである。
ドキドキしながら祈るように適性チェックを受け、一応は登録することが出来たのだが…
ケイシーはオールラウンダーだった。全ての攻撃魔法、支援魔法、回復魔法が使えるというもの。これだけ聞くとスゴイ能力だと思うだろう。
確かに全て使えはする。しかし、そのどれもが弱いものしか出せないのだ。つまりはあまり役に立つものではないということ。
悔しかったし、悲しかったが、応援してくれている両親のためにもここで諦めたくはなかった。冒険を始める前に少しでも役に立てるよう、知識を蓄えようと決めた。連日、ギルド併設の図書館に通い、獣の知識や戦術の勉強を徹底的に叩き込んだ。
実家から持ってきた手持ちのお金が連日の宿代でなくなりそうになった頃、ケイシーの知識は人並み以上のものとなっていた。
これなら役に立つことが出来るかもしれない!と意気込み新たに夢へと向かって歩き出した。