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夫婦はお腹を空かせた少年を自宅に招いた。少年が発した切なく聞こえた呟きに応えて、食事を振る舞ってあげようと思ったからだ。


色んな野菜をたっぷり煮込んで塩で味を整えただけの、おもてなしと言うには質素なスープと、長く保存させるために固めに焼かれた、どこにでもあるような安価なパンを食卓に着席させた少年の前に並べた。







圭司は遠慮なくいただくことにした。凪の存在を失って以降、久しぶりに感じることができた空腹に、目の前にある柔らかく暖かそうな料理に抗う必要はなかった。


自身の顔の前で両手を叩き合わせ、パンっ!と音を鳴らす。


「いただきますッ!!」







いきなり鳴らされた1発の拍手に夫婦ともにビクッとしてしまったが、美味しそうに食べ始めてくれた少年を見て嬉しさが込み上げてきた。思わず笑みを浮かべ、じっと少年を見守る。


しかし、見れば見るほど不思議で仕方ない。髪色は違うし、クセのないサラッとした髪質だし、チャームポイントである目元のホクロもない…


なのに、顔は息子にそっくりなのだ。そっくりと言うより息子そのものだ。


でも、髪色も髪質もホクロも違う。髪色や髪質は『簡単に変えられない』し。


でも。でも。でも。


脳内が堂々巡りで収拾がつかなくなってしまった婦人は、少年が食べ終わるのを見計らって質問することにした。







「アナタ、お名前は?」


「おれは圭司っす!まじ美味かった〜!ごちそうさまっす!」


名乗りとお礼を一気に捲し立て人懐っこい笑顔を見せる少年に、婦人はキュンっと母性本能を見事に撃ち抜かれてしまうのであった。


同時にその背後でも父性本能を撃ち抜かれている夫が立っていた。














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