12
ナギとケイシーは並んで街道を歩いている。
2人の間に会話はない。
なぜなら今ナギは、ケイシーにもらった携帯食の干し肉を夢中で噛みしだいているからだ。
ナギが干し肉に夢中になっている隙に、ケイシーはこっそりとナギのことを観察していた。
背はケイシーより高い。身体はバランス良く筋肉がついているように見える。顔付きは……こわい。
目付きが悪く見える三白眼に無表情なのだから、怖い印象を抱くのは仕方のないことだろう。
顔付きに関してはこの際良いとして、気にするべきことはナギの身体能力のこと。程良く筋肉がついているとは言え、元パーティーリーダーの銀髪の大男をあんなにぶっ飛ばせるほどの力があるとは思えない。
そうなると特別なスキルでも持っているのかも知れない。ナギが特別なスキルを持っていたとして、知り合って間もないケイシーに教えてくれるだろうか。
同行することは許可してもらえた。少なくとも嫌がられてはいないようだ。あれほどの力の持ち主なのだから、パーティーを組んでもらえたら…
よし!仲良くなろう!
ざっくりとした目標を掲げ、ケイシーは前向きな気持ちで足取りも軽くなっていた。
現在2人はケイシーとナギが出会った場所から、ナギが歩いて来た方向に戻る形で進んでいる。その方向に進むことにした理由は2つあった。
1つはケイシーが所属していた元パーティーが、今2人が向かっている方と逆に進むことを知っていたからである。あの場所から少し進むと街があるのだが、元パーティーはそこへ行くのが目的で、ナギと出会ったのはその道中での出来事だったのだ。
今は抜けたパーティーとすぐに遭遇するのは、とても気不味いので避けたかったから。
もう1つの理由は、旅をリセットしようと思ったからである。向かう先にはケイシーの実家があり、ナギと一旦腰を落ち着けて今後の話をするのもいいかもしれないと考えていた。
「なぁ、さっきのジャーキーもう1個くれ。」
干し肉をナギに手渡し、よっぽどお腹が空いていたんだなぁとケイシーは微笑ましく思いながら、じゃあきいって何だろう?と疑問が浮かんでいた。