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ケイシーたちはギルドで用事を済ませ、ガイディックにお土産を渡すとまたあっという間に家へと帰ってきた。玄関にはまだナンシーがしょんぼりと佇んでいた。
「あれ?ナンシー。こんなところで何してるの?」
ケイシーが声をかけると驚いた顔をしていたナンシーが一瞬で顔を真っ赤にするとキッとケイジとナギを睨みつけた。
「べ、別に何もしてないわよ!!」
そう言い残すとどこかへ走り去っていった。
「今おれ睨まれた気がするっす…。」
「うん。俺も睨まれたな。」
「すみません…。」
「いや、ケイシーが謝ることじゃないだろ。でもなんなんだろうな?」
「おれたち何もしてないっすよね?」
「何を考えてるのか僕にもさっぱりですよ。ナンシーのことは気にしないで畑に行きましょう!」
3人は久しぶりの畑仕事にウキウキしながらケイロンとシーティルの元へと向かっていった。その様子をまた隠れて見ていたナンシーもこっそりと後を追う。
ナンシーのなかではナギとケイジはケイシーを悪の道に引きずりこんだ悪いヤツということになっており、ケイシーが悪い子になってしまったと証明することでケイシーに冒険者など辞めるよう言うつもりでいたのだ。
ところが、朝少し出かけたと思ったらすぐ帰ってくるし、その後の3人を見張っていても畑の手伝いをしているだけで、ナギとケイジどころかケイシーもただの良い子にしか見えなかった。
ナンシーはますます意地を張ってしまい、どんどん態度は頑ななものになっていった。
その日の夕飯にもナンシーはリビングに現れなかった。
「ごめんなさいねぇ。嫌な気分にさせてしまって。人見知りかしら?でも、ギンジさんたちには普通に挨拶くらい出来たのに…。反抗期かしら?」
「僕たちは大丈夫ですよ。引っ越したりして環境の変化で不安定になってるんじゃないですか?」
「そんな繊細な子ではないと思うのだけど…。」
みんながナンシーの心配をして夕飯時のリビングは暗い雰囲気に包まれていた。