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茶髪の副リーダーだと言う男は混乱の中にいた。この謎の男はケイシーの名を呼んでいなかったか?と自分の記憶を辿る。
「え?いや、アンタさっきケイシーの名を呼んでいただろう?知り合いなんだろう?」
「コイツは圭司だ。」
「………は?」
「僕はケイシーです。さっきは聞き間違いかと思いましたが、僕はケイジではありません。人違いです。」
ようやく我を取り戻したふわふわパーマの金髪の男、改めケイシーは副リーダーと凪の会話に割り込んだ。
ケイシーは困っていた。
自分のリーダーが、傲慢だが確かな強さを持っていた大男が、一撃でぶっ飛ばされてしまった。しかもぶっ飛ばした相手は自分をケイジとやらと勘違いしているのである。
ケイシーは迷っていた。
リーダーがぶっ飛ばされることになってしまった一因は、自分にあるだろう。今までの自分の扱われかたからいって、全てを自分のせいにされる可能性もある。そうなってしまえば、パーティーに戻ることは命の危機となるかもしれない。
ケイシーは賭けに出た。
謎の男が求めているのはケイジとやらで、自分ではない。同行することを断られるかもしれない。それでも、パーティーに戻るという選択肢を自分の中から消した。
副リーダーに向き直るケイシーの目には、闘志のようなギラリとしたものが宿っていた。
「僕はケイジではありませんが、ここで会ったのも何かの縁だと思います。僕は…パーティーを抜け、彼と共に行くことにします!」
ケイシーの宣言を黙って聞いていた副リーダーとナギは、眉間にシワを寄せていた。
副リーダーの反応はわかる。今までずっと見下していた、パーティーのお荷物で荷物持ちのケイシーが初めて見せる強気な態度にイラついているのだ。
イラついているが、声は発さない。きっとケイシーの隣にいる謎の男を警戒しているからだろう。
ケイシーは副リーダーから目を逸らさず、パーティーを抜けるという確固たる意思をその視線に乗せていた。
「お前、圭司だろう。髪が違う気がするけど。」
睨み合うように視線を絡ませていた副リーダーとケイシーは、空気を読んでいないナギの言葉に力が抜けてしまい膝から崩れ落ちた。