なんのひねりもなくラブコメ!
暖かな空気にそっと包まれている。
握られた手から伝わる温度はどこまでも優しく、僕はその手をそっと握り返す。そして、その感触にはどこか懐かしさを感じる。
しかし顔を確認しようとすると、その子の顔のあたりにはもやのようなものがかかってしまっており、どんな顔をしているのかわからない。
そうこうしているうちに、僕はさっきまで繋がれていたはず自分の手からあの子の手が離れていることに気づいた。
あの子の姿どこにもなかった。
周りにはただ漠然とした空虚な空間が広がっていた。
でも確かなあの子との繋がりは感じた。か細く、いまにも消えてしまいそうなほどに微かな繋がりであったが、確かに感じた。そこにある、と。あの空気が、あの温度が何よりの証拠だ。
僕は必死に叫んだ。なぜかはわからないが、そうしなければいけないように感じた。
僕は叫んだ。忘れてはいけないあの子、忘れられないあの子の名前を。
「*****!」
返された言葉はなく、ただただ僕の声がいつまでも響き渡っていた。
叫び疲れてしまった。ぜえぜえ、と吐息は荒い。もう一言も声は出せないだろう。
あれ?さっきまで何をあんな必死に叫んでいたんだっけ?
少し考えてみたものの、結局わからなかった。
すると、僕の頬をツーッと何かがつたう感触がした。
これは、涙?悲しいことなんかなかったのに?
その時、視界が暗転し、けたたましいい音が強引に現実へと僕を引き戻した。
でも現実へと引き戻されるその瞬間に聞いたんだ。はっきりと。
「私を見つけてね」