ビンタが痛かった
鍵を探し始めて早30分。
俺は窮地に立たされていた。
その理由は‥‥
鍵が見つからない!!
当然思い当たる場所はすべて探した。
階段、廊下、教室‥‥
思いつく場所はすべて探したけどない‥‥
じゃあどこにあるんだよ!!
一度玄関まで戻り、思考を巡らせる。
一応現段階で鍵がありそうな場所は二つ。
体育館か登下校の道のどちらか。
前者の場合はまだいい。
体育館の扉は鍵はかかっているかもしれないが、職員室などに行けば入手できるだろう。
問題は後者だった場合。
この場合は学校から家までの道のり、歩いておおよそ1時間ほどかかる道をゆっくり、隅々まで探していかなくてはいけない‥‥
ブルル!
考えるだけで身震いが‥‥
いや、大丈夫だ。
まだ体育館という可能性も残っているし、今絶望するのはまだ早い。
とりあえずもう一度玄関から教室まで探してみて、もしなかったら体育館に行ってみるか。
なに、まだ時間は22時30分だ。
23時に鍵が見つかったとしてもダッシュで帰れば24時前には帰れると思う。
まだまだ時間に余裕はあるし、もう一度見落としがないようにゆっくりと探そうではないか。
明けない夜はないともいうしな‥‥使い方あってるかはわからないけど。
とりあえず活を入れ直すため、そして眠気を覚ますために頬を思い切り叩いてみるか。
正月番組のあのビンタをイメージして足を肩幅に開き、軽く脱力をして‥‥そういえば去年はあの番組やらなかったな。
毎年の楽しみだっただけに少し残念だ。まあ去年は去年でめちゃくちゃ面白かったけど。
っと邪念が入ってるな。
気を取り直して‥‥いざ、ビンタ!!
ヒュオンッスッパーン!!
「いってー--!!!!」
ヤバい、めちゃくちゃ痛い!
あまりの痛さに廊下で転げまわる。
さっき頬に手のひらが当たる瞬間、かすかに耳元で『ヒュオン!!』っていう鋭い風切り音が聞こえた‥‥
今も右耳がコワンコワン聞こえるし。
あれ、なんか頬がどんどん熱くなってきた‥‥
少しずつ熱を取り戻していった俺の頬に、ひんやりと冷たい床が当たる。
あ、これ心なしか痛みが引いてく気が‥‥
今冷やせるものは近くにないし、しばらくここから動けそうにない‥‥
仕方ない、不格好だがしばらくはこの姿勢のまま頬を冷やすか。
それから約5分間、俺はひんやりとした床に頬ずりをしていた。
あぁ、めっちゃ気持ち良いなぁ‥‥