FPSは抜け出せなくなるゲームだと思う
30分ほどたっただろうか。
クロさんとコスプレ少女の壮絶な戦いは、とうとう終結を迎えそうになっていた。
「はぁ、はぁ、あんたなかなかやるな、、、」
「ユキさんこそ、以前よりも矢を射る速度が上がってましたね……」
お互いが疲弊したタイミングで、俺は声をかける。
「なぁ、ひと段落ついたところで悪いんだけど、お前らこの惨状をどうするつもりだ?」
そう言いながら周りを見渡す。
そこにはメチャクチャになったグラウンド、ほぼ全壊したであろう校舎、とうとう切り株すらなくなった桜の木……
この惨状を見て、ここはもともと学校があったんだなと気が付く人はいるのだろうか。
「こんなにメチャクチャにしやがって、俺の華々しい高校生活をどうしてくれるんだ!」
「はぁ?あんた友達いないんだからどうでもいいでしょ?」
「友達くらいいるわ!!」
……オンライン上だけど!嘘ではないからな!
「てかなんであんたまだいんの?」
「なんでも何も、学校こんなにして帰れるわけないだろ?」
俺のせいにされて、ポリスメンのお世話になるのはまっぴらごめんだ。
明日から、いやもう俺の明日はないかもしれないけどせめて無実ということを証明しなくては。
「あ、あの光輝さん…」
近くにいたクロさん(超絶尊い天使様)がおずおずと声をかけてくる。
「はい、なんでしょうか天s……クロさん」
危うくこの天使もどきの前で天使様と言ってしまうところだった。
流石に天使様も人前でこの呼ばれ方は恥ずかしいだろう。
「こ、校舎のことは、私たちが直すので気にしなくていいんですけど……」
いや、流石に直すのは無理だろ……と思ったが、口に出したら間違いなくあのコスプレ少女が便乗してクロさんを馬鹿にするに違いないので、何も言わないでおく。
「あ、あのヤギの形をしたこ、魂魔ってどこに行ったか、知ってますか?」
「あぁ、あのヤギならここに……あれ?」
隣を見てみるが、そこにはさっきまで俺に撫でられていたヤギがいなくなっていた。
「おかしいな、さっきまで隣で俺に撫でられてたんだけどな?」
「は?あんた嘘ついてるだろ?早く本当のこと言え!」
そう言いながら俺の襟を掴み、グワングワンと動かす。
「ちょ、まt、しゃべr!」
こいつ力つよ!
やばい、ガチめに首回りが痛い!
「突然いなくなった…も、もしかしたら!」
いや、クロさん考察してないで助けて!
「早く吐けよ、オラオラオラァ!」
お前、だんだん楽しそうにやってないか!?
あ、やばい、本当に意識が飛ぶ……
「ユ、ユキさん!急いで離れてください!」
「はーやーくーはーけー!」
みんなの声が遠くに聞こえる。
あぁ、最後に俺の唯一の友達である『猫ちゃん大好き♪』さんに一緒にやるFPS、人生で一番楽しかったですって伝えたかったな。
そんなことを思いながら、俺の意識は遠のいていった。