50m走は7.5秒です。
「あ、頭を上げてください!」
いきなり頭を下げた俺に驚いた天使様は、慌てて頭を上げるよう許可をしてくださる。
そのご尊顔を拝見しても良いなんて、なんと心の広いお方なのだろうか。
俺は感謝の念を抱きながら、顔を上げる。
そこにはうっすらと涙を浮かべながらオロオロとしている尊き天使様のお姿が!!
いや、もう可愛すぎません!?
もっとこの尊さを世界に伝えていたいが、流石にこれ以上は俺が変な人だと天使様に思われかねないのでやめておく。
天使様に「気持ち悪いです…」とか言われたらもう二度と立ち直れなくなると思うし。
少しずつ落ち着いてきた俺を見て、少女が恐る恐る声をかけてくる。
「も、もう大丈夫ですか…?」
「はい、天使様のおかげで私は救われました。」
「やっぱりまだ治ってない!?」
あれ、まだ抜けてなかったのか。
流石にこれ以上は話が進まなくなりそうなので、普段の喋り方に戻す。
「えっと、心配して声をかけてくれたんですよね、ありがとうございます!」
「い、いえ、遠くで泣いてるのが見えたので……もう、落ち着きましたか?」
え、俺また知らずのうちに涙を流してたの?
「はい、あなたのおかげで落ち着くことができました。えっと、あなたの名前は…?」
「あ、えっと、私の名前は…ク、クロです」
「クロさんか。俺は光輝と言います。」
「こ、光輝さんですね…。よろしくお願いします」
そう言いながらペコリと小さくお辞儀をしてくる。
ほんと礼儀のなったいい子だな…
そういえば、なんでこの時間に学校にいるのだろうか?
後ろで持っている大きな鎌も気になるし、やっぱり校庭にいるコスプレ少女と関係があるのだろうか。
「そういえば、クロさんはなんでこの時間に学校にいるんですか?校庭にいるあのコスプレ少女と何か関係が…」
「こ、校庭にいるんですか!?ありがとうございます!」
俺の質問を途中まで聞いていたクロさんは、急にお礼を言って猛スピードで校庭に走っていってしまった。
コスプレ少女の話を出した瞬間に走り出したし、やっぱ何か関係があるのか?
個人的にはあんまりあのコスプレ少女とは関わりたくなかったが、クロさんはいい人そうだったしまだ話も聞けてないし……
しょうがない、追いかけるか。
あの黒いヤギも危険な見た目してたし、いざとなったら俺が守ってあげないと!
俺はクロさんの後を続くようにして、校庭へと走っていった。
にしても、最近の小学生はみんな足が速いな……