人生で一番の厄日だと思う
校舎内までダッシュで戻った俺は、現状について改めて考えてみることにした。
まず、俺は鍵をなくしました。
そして鍵について何か知っていないかとコスプレ少女に聞きました。
そのとき、体育館の方から何かの声が聞こえ、急いで駆けつけてみるとヤギがいて、そのヤギが体育館の壁ぶち破ってグラウンドでコスプレ少女とバチバチに戦ってて‥‥
ヤバい、頭おかしくなりそう。
‥‥うん、過去のこと振り返っても意味ないし、さっきの光景について考えるとしよう。
そもそもあの黒いヤギはなんだったんだろうか。
見た目からしてなんかヤバそうなオーラ出していたし‥‥そもそもヤギって二足歩行で動けるのか?
それにあのコスプレ少女。
あのコスプレ少女は当たり前のように宙に浮いてたし。
どうやら現代の科学技術は人を宙に浮かせることができるらしい。
これはドラ〇もんももうすぐ誕生するのでは?
それに矢を射る速度が速すぎて手元に残像が見えてたような‥‥
確か、速すぎて逆にゆっくりに見える現象をストロボ効果っていうんだっけ?
でもあれって車のタイヤとかでしか見たことないのに、手元が速すぎてそれが見えるって‥‥
てかそもそも深夜の校庭で矢を飛ばしてること自体おかしいんだけど。
そこまで考えつつ、いまだ玄関で立ち尽くしていた俺はどこかに座ることはできないかとあたりを見渡す。
が、特に座れる場所がなかったので玄関のちょっとした段差に座り、グラウンドで行われている激戦を観戦しつつ、この後どうするかを考える。
唯一この校内に残っていたコスプレ少女は外でヤギと戦ってるし、階段や教室にも鍵は落ちてないし‥‥
マジで泣きそう。てかもうすでに泣いてたわ。
おそらく今日は人生で一番の厄日なんだろうな。今度厄払いに行こ。
てか真剣にこの後どうするかを考えよう。
さっさと学校から逃げ出せば一時的には何とかなるかもしれないが、体育館の壁が壊れたままなので明後日あたりにはポリスメンのお世話になっていることだろう。それに家に帰ろうにも家の鍵がないので必然的に野宿をすることになる。あれ、マジで積んでね?
神様、できればそろそろ俺に救済をくれませんか……
「あの、大丈夫ですか?」
「うぉお!」
突如、後ろから声をかけられ、びくっとする。
外ではいまだドンパチしてる音が聞こえるし、あのコスプレ少女ではないだろう。
そもそもあのコスプレ少女みたいな喧嘩腰の口調ではない。
なら誰だろうか?
疑問に思い、おそるおそる後ろを振り返ると、
黒と青のゴシックドレスを着た、見た目小学生の女の子がこちらを心配そうに見ていた。
──右手にメチャメチャでかい鎌を持ちながら。
あぁ、そうですか。また厄介ごとですか。
軽くめまいがする頭を押さえ、心から願う。
神様、本当にいい加減、私にもそろそろ救済をください……