表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

225/268

225 フィオーナと通話

タイトルとあらすじ変更しました。

 宴が終わり、片付けを済ませて、ベッドに入ったら、予想通りフィオーナから【通話テル】がかかってきた。

 彼女は今、領主邸で休んでいるはずだ。


「おう、どうした?」

「アルの声が聞きたかっただけ〜」

「そうか。聞けてよかったな。じゃあ、おやすみ」

「ちょ、ちょっと、待ってよ〜。切ろうとしないでよ〜」


 宴会で散々責められたから、ちょっと意地悪したくなる。


「アルは今、なにしてた〜?」

「ベッドに入って、寝るところ」

「私もベッドだよ。おそろいだね〜」


 なにが嬉しいのか、フィオーナは上機嫌だ。

 聞いてもいないのに、3泊4日のダンジョン攻略がどうだったか、詳しく説明してくる。


「――へえ、10層までクリアしたのか。順調だね」

「うん。思っていたより簡単だったよ〜」

「まあ、レベル25もあれば苦戦する方が難しいもんな」

「そだねー」

「だからといって、あんま油断すんなよ」

「うん。ライラちゃんからも何度も言われたよ」

「ダンジョンは気を抜いたらいつでも死ねる場所だからな」

「うん、分かってるよ〜」


 本当に分かってるのか疑問に思える軽さだ。

 まあ、ライラや護衛騎士がついてるから大丈夫だろう。


「それにしても、ライラちゃんスゴいね〜。敵の察知方法とか罠の見分け方とか教えてもらったけど、学校で教わったのとは全然レベルが違ったよ〜」

「そりゃそうだろ。ライラは未踏破層に挑むトップクラス冒険者だぞ。初心者の子ども向け授業と一緒にしたら失礼だ」

「普段は可愛い女の子なのに、ダンジョンに入ると別人みたいに雰囲気が変わるんだもん」

「冒険者ってのはそんなもんだ」

「アルもそうなの〜? この前、助けてくれたときはいつも通りだったけど〜?」

「まあ、俺の場合はあの階層くらいじゃ危険はないからな」

「そっか。アルは強いもんね〜」

「俺だって危険な場所ではちゃんと切り替えるぞ」


 カーチャンの場合はむしろ危険になると楽しそうになるけど、あれは人外だから別問題。


「フィオーナもちゃんと危険に敏感になるんだぞ。まだ10層くらいなら安全だけど、潜るほど危険になるんだからな」

「うん。分かった、気をつけるよ〜」

「ちなみにジェネラル・オークはどうだった?」

「余裕だったよ。前に見たときより動きも遅かったから、向こうの攻撃も全部見えたよ〜」


 ジェネラル・オークは10層のフロアボスだ。

 フィオーナはこの前俺が助けた時に30層フロアボスであるミノタウロスと一度戦った。

 その経験が生きているんだろう。

 ミノタウロスの速さと強さを体感していれば、ジェネラル・オークなんてザコみたいなもんだ。


「いつかアルと一緒に冒険できたら良いなぁ」

「おう。エンシェントドラゴンと戦えるようになったら、一緒に狩りに行こうぜ」

「……むぅ。そんなの普通の人には無理だよう」

「俺だって普通の人だぞ。普通じゃないってのは、カーチャンみたいなのを言うんだぞ」

「……むぅ。私と一緒に冒険する気ないでしょ?」

「ああ。俺は冒険者じゃなくて、職人だからな」

「……むぅ。もうイイもん」

「ははは」


 フィオーナは同年代の中ではトップクラスに強いし、才能も根性も抜群だ。

 もし俺が勇者を継ぐ道を選んでいたら、フィオーナと一緒に冒険することもあったかもしれない……。

 でも、俺が選んだのはニーシャとともに商会を大きくするという道だ。

 残念だけど、フィオーナの願いは敵わないだろう。

 まあ、遊びでフィオーナの冒険に付き合うくらいなら構わないが。


「つーか、そろそろ寝なくていいのか?」

「うん。明日もお休みだもん。ライラちゃんと食べ歩きするんだよ〜」

「そっか、友達が出来て良かったな」

「うん。あっ、そだ、良かったらアルも来る?」

「俺は明日も仕事だ」

「……むぅ。私と仕事、どっちが大事なの?」

「もちろん、仕事だ」

「……むぅ。即答した〜。ちょっとは真剣に考えてよ〜」

「お前だって、真面目に訊いてるわけじゃないだろ」

「ははは。バレた〜。大丈夫だよ、重い女になるつもりはないからね〜」

「ここまで軽い王女ってのも問題あるけどな」

「へへぇ〜。アルの前だけだよ〜」

「そこら辺は使い分け上手いもんなあ」

「やった〜、褒められた〜」

「褒めてねえよ」

「えへへへ」


 よしっ、完成だ!

 俺はフィオーナと通話しながら、【虚空庫インベントリ】の中で『カートリッジ』を作成していたのだ。

 それが今、30分ほどかけてようやく完成したのだ。

 まだまだ時間と魔力はかかるけど、フィオーナとの雑談をしながら作るくらいは余裕だ。

 付き合いが長いから、なにも考えなくても会話できるし、気を使う必要がないからね。


「こうやってると、アルと一緒に寝てる気がする〜」

「ああ、そうだな」

「もう! もっと嬉しそうにしてよ〜。『俺もフィオーナと一緒に寝てる気がして嬉しいよ』とか、『今度は本当に一緒に寝よう』とか、そういう気が聞いたセリフが聞きたいんだよ〜」

「そういうのがお望みなら、貴族の坊っちゃんを当たってくれ」

「……むぅ」


 そんな他愛もない会話をしているうちに、だんだんとフィオーナの返答が途切れがちになり――。


「…………」

「おーい」

「…………」

「寝ちゃったか」


 どうやら、会話しながら寝落ちしたようだ。

 いつもの就寝時間を大分オーバーしている。

 俺もそろそろ寝るとしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ