222 『カートリッジ』完成祝賀パーティー
間が空いてしまいました。ごめんなさい。
連載再開です。
「じゃあ、皆さん、『カートリッジ』が無事完成したことを祝いまして、乾杯!」
「「「かんぱ〜い!!」」」
「おめでと、アル」
「師匠、おめでとうですぅ〜」
「さすがアルだニャ」
「アルさん、やりましたね。大快挙ですっ!」
「ご主人様、お疲れ様です」
「なんかよく分からないけど、おめでとー」
「おめでとうです」
今日は一日大変だった。
朝からスライムを万物素に変える実験に打ち込み、なんとか成功し、そっからピュアエーテルを作るという過程を経て、午後にはなんとか『カートリッジ』を完成させることができたのだ。
『カートリッジ』作りに挑み始めて5日間。
短いようで長い5日間だった。
これほど苦労した5日間は…………思い出せば結構あるな。カーチャンの修行とか、カーチャンの修行とか、カーチャンの修行とか。
ただ、これほど充実していた5日間は、間違いなく初めてだった。
物づくりの楽しさを実感出来て、ツラかったけど、振り返ってみれば最高に楽しい5日間だった。
『カートリッジ』が完成したときは、思わず踊りたくなるほど嬉しくなり、実際にちょっと踊ってしまい、工房の3人組に不思議そうな目で見られた。
そのおかげで少し冷静になった俺は、ゼルテンのところにスライムを取りに行く約束を思い出した。そして、約束時間をすでに過ぎていることも。
それから急いでスライム牧場へ転移し、スライムを受け取り、とんぼ返りしてきた。
腕によりをかけた手料理をみんなに振る舞う約束を思い出したからだ。
早く次の仕事を始めたいところだけど、ここはグッと我慢。
『カートリッジ』を完成させたのは俺だが、それもみんなの助けがあったからこそ。
ニーシャの【鑑定眼】。
ミリアの豊富な知識と『錬金大全』の情報。
カーサの神水を作った経験。
ルーミィの『叡古の章』から単語を探し出す能力。
ビスケの淹れてくれたコーヒー。
なんか、ビスケをオチに使ったみたいだけど、コーヒーを飲みながらビスケと交わした会話はとてもリラックスでき、いい気分転換になってくれた。
ビスケはちょうど俺が疲れただろうタイミングを見計らってコーヒーを淹れてくれる。
これが意外とバカにならなかった。
何度も壁にぶつかり、投げ出しそうになったとき、そっと横から差し出される良い香りのコーヒー。
直接的な協力はなかったが、ビスケのコーヒーは間違いなく俺を助けてくれた。
俺の手料理はそんなみんなへの感謝の気持だ。
夕食まで2時間ほどしかなかったけど、全力を出してたくさんの料理を作り上げた。
6人がけでも十分にゆとりのある広いテーブル。
その上に隙間なく並べられた色とりどりの料理。
みんなへの感謝のしるしを前に、みんな揃って乾杯したところだ。
俺を含めて6人の店舗立ち上げメンバー。
ノヴァエラ商会会頭で、【鑑定眼】と類まれな商才が頼りになる相棒のニーシャ。
ガラス作りの弟子で、今では神像作りを任せられるほどに成長した、工房主任のビスケ。
読書中毒で並外れた知識を持ち、魔法陣を用いた魔道具作成のスペシャリスト。猫人族で文末が「ニャ」な、ポーション開発主任のミリア。
繊細な魔力操作に長け、今やウチのポーション生産には欠くことが出来ない存在、ポーション生産主任のカーサ。
ニーシャの右腕として修行中。恐るべき頭脳の持ち主、ノヴァエラ商会パレト店長のルーミィ。
大事な大事な仲間たちだ。そして――。
なぜかここにもう2人いる。
ふくれっ面をして「なんかよく分からないけど、おめでとー」とのたまう、ここカルーサ王国の第三王女で幼馴染のフィオーナ。俺としては妹的存在なのだが、本人は幼馴染と言ってきかない。
それと、「なんで私がここにいるの?」と不思議そうな顔をしている『紅の暁』メンバーで今は、フィオーナの案内役として雇われているライラ。
なんで2人がここにいるの?
そして、なんでフィオーナは不機嫌なの?
そんな疑問が浮かぶが、宴の楽しそうな雰囲気をぶち壊しそうなので、とりあえずスルーしとく。
「さあ、みんな、遠慮せずに飲んで、食べてくれ。どれも気合を入れて作った一品だ。とびきりに美味いことは保証するぞ」
「アルの料理はホント美味しいのよね」
「師匠の料理はサイコーですぅ」
「そうだニャ。ヨダレ出てくるニャ」
「お酒も料理も最高だわ」
「ご主人様の手料理……」
みんなご機嫌だ。
でも――ひとりだけ不機嫌なまま。
いつもなら、俺の手料理に飛びつくはずなのに……。
さーて、このワガママお姫様をどうしたものか…………。
しばらくは毎日更新でいきます。




