221 解析結果
俺はピュアエーテルの詰まったミスリルケースを魔法障壁で覆っていく。
魔法障壁は何パターンか知っているけど、ここは最初に解析した『カートリッジ』を覆っていた魔法障壁を再現することにした。
最初は作り出すのに苦労した魔法障壁だけど、実験を繰り返すうちに慣れてきて、今では1分もかからずに張ることが出来るようになった。
「よしっ!」
魔法障壁が完成した。
綺麗にケースを覆い尽くしている。
後は解析で確認するだけだ。
今までで一番緊張しながら、【遺物解析】を発動した――。
解析が完了するまでの時間がじれったい。
今まで長い道のりだった。
遺物作成を決心して、一番シンプルな遺物である『カートリッジ』から始めることにした。
最初はどこから手を付けて良いか分からず、『カートリッジ』を壊しまくった。
取っ掛かりが見つかったのは【遺物解析】のスキルを覚えたからだ。
このスキルのおかげで、遺物作りに光明が見えたのだ。
でも、それからが大変だった。
まず魔法障壁が立ちふさがった。
それを解除しても、現れたのはピュアエーテルという謎の物体。
ピュアエーテルが万物素を神水に溶かしたものであると分かったが、万物素と神水が何か分かるのにも一苦労。
ルーミィの力を借りて、『錬金大全』の叡古の章を解読。
万物素の作り方を知り、カーサに神水の作り方を教わったが、どちらも自分で作り出す際には苦労をした。
特にスライムから万物素を作り出すのは大変だった。
そして、いざピュアエーテルを作ろうとして単純ミス。
それを乗り越え、ようやく最後のプロセス
――魔法障壁を張り終えた。
俺は今までの苦労を振り返りながら、解析が終わるのを待つ。
とても長い時間に思えたが、実際にはたったの数分。
解析が完了した――。
――――――――――――――――――
名前:カートリッジ
効果・使用法: 他の遺物の動力源。
構成: ピュアエーテル、濃度20%、10cc。
ミスリル。
――――――――――――――――――
「おおおおおおおっ!!!!!!」
喜びのあまり、大声で叫んでしまった。
苦労が大きかった分、感動もひとしおだった。
「やった、ついに出来たんだ!!!!!」
大量に魔力を消費したせいもあり、脱力した俺は椅子に座り込んでしまった。
手に握った『カートリッジ』を見つめながら、俺は大きく息を吐いた。
まずは、ニーシャに連絡だ。
俺は【通話】で『「カートリッジ」が完成したよ』と連絡する。
やっぱり、最初はニーシャに伝えたいからな。
「師匠、出来たんですかぁ?」
ビスケが声をかけてきた。
ビスケだけじゃない。ミリアとカーサも側までやって来ている。
俺の大声で察したのだろう。
俺は三人に声をかける。
「ああ、完成だ。これが自作した『カートリッジ』だ」
完成したばかりの『カートリッジ』を掲げて見せる。
「おおおおおっ。凄いですぅ」
「遂にやったのね」
「さすがアルニャ」
3人は俺を取り囲んで祝ってくれる。
「ありがとう。これもみんなの助けがあったからだよ。今夜はお祝いだ。ごちそうを用意するから楽しみにしててよ」
折角のめでたい日だ。みんなへの感謝の気持ちを俺の手料理でお返ししたい。
最近、時間をかけて料理する時間もなかったけど、今日は腕によりをかけてみんなに料理を振る舞うぞ。
「わあ、師匠の手料理楽しみですぅ」
「アルの料理は本当に美味しいからね」
「想像しただけでヨダレが出て来るニャ」
「ははは。じゃあ、楽しみは後にとっておいて、もうひと仕事頑張ってくれよ」
俺がそう締めくくると、3人は自分たちの持ち場へ戻っていった。
一緒に喜んでくれるのは嬉しいんだけど、3人の仕事の邪魔をしちゃいけないしな。
さて、後はなにをしようかな。
料理には2時間くらいかけるとして、それでももう少し時間があまるな。
まずは、確認のために何個か『カートリッジ』を作ってみるだろ。
それと、今回の実験結果をレポートにまとめておくか。
とりあえず『カートリッジ』は作れたとはいえ、その方法は時間もかかり、大量生産には向かない方法だ。
なんとか、大量生産を可能にするためには、みんなのアドバイスが必要だろう。
そのためにもレポートにまとめておくのは必須だ。
それと……後、なにかやらなきゃいけないことがあった気がするけど…………。
「あっ、そうだ」
俺はスライム養殖家のゼルテンとの約束を思い出した。
他の色のスライム全色を用意してもらってるんだった。
ちょうど約束の時間だ。
結局、『カートリッジ』作りには不要になってしまったけど、今後なにかしら使い途はあるだろうから、まるっきり無駄というわけでもない。
俺は【転移】でゼルテンの牧場へ向かった――。
まさキチです。
お読み頂きありがとうございました。
今回で第12章は終わりです。
長かった『カートリッジ』作りでしたが、ようやく完成しました。
ブクマ・評価いただきありがとうございました。
誤字報告もありがとうございました。
非常に励みにさせていただいております。
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