20 ポーション容器作り
本日2話目の更新になります。
ご注意下さい。
俺は【転移】で王都北側の森――俺がファング・ウルフを狩ったり、ダイコーン草を刈ったりした場所へと飛んだ。
【転移】は明確にイメージ可能な場所だったら、ドコにでも瞬時に飛ぶことができる便利魔法だ。
一昨日来たばかりのこの森。
特に印象深かった、最初にファング・ウルフに囲まれたダイコーン草の群生地に俺は降り立った。
とはいえ、ここで錬金をするわけじゃない。
一昨日俺が刈り尽くしたとは言え、それは成長したダイコーン草のみ。
若いダイコーン草には手を付けなかった。
数週間もすれば、そいつらが摘み頃に成長するだろう。
こういう場所は採取地として確保しておきたい。
だから、あまり場を荒らしたくないのだ。
「じゃあ、どこにしようか?」
これから手頃な場所を探しても良いのだが、時間がもったいない。
こういう時はどうしたらいいのか?
「場所がないなら作ればいい!」
俺は採取地から木々の間を通り、道なき道を歩いてく。
採取地から少し離れた辺り。
「よし、ここらでいいか【身体強化】っと」
魔法で身体を強化する。
俺は生えているブーナの木の幹を抱える。
両腕でギリギリ抱えきれるくらいの太さだ。
「せーのッ」
掛け声とともに両腕に力を込め、ブーナの木を引っこ抜く。
メリメリと音を立て、ブーナの木は根っこごと抜ける。
俺はそれを丸ごと、【虚空庫】へ無造作に放り込む。
「よし、まずは1本完了」
その調子で、俺は辺りに生えている木々を次々と引っこ抜いては【虚空庫】に放り込んでいった。
ブーナの木の他にも、ウルカの木、シーナの木、エカデの木などが【虚空庫】の肥やしになる。
いずれ使う日が来ることだろう――そういって数年間放ったらかしの素材がいっぱいあるんだよなあ。
まあ、困らないからいいけど……。
ともあれ、10メートル四方くらいの更地ができた。
これを土魔法で平らに整地してやる。
平たくなった地面に【虚空庫】から錬金設備を取り出す。
といっても、ポーション容器作りなら、加熱するための炉さえあれば大丈夫だ。
【虚空庫】から炉を取り出そうとして俺は思い出す。
「あっ、そのまえに結界貼っておかないとな」
ここら辺のモンスターは雑魚だけど、物づくりの最中に邪魔をされるのは勘弁だ。
できることなら、邪魔の入らない環境で集中してやりたいからね。
更地の四隅に結界石を設置し、【聖域】を発動させる。
最上級結界なので、エンシェント・ドラゴンでもやってこない限りは平気だ。
「よし、これで結界はオッケーだ」
続いて、錬金の下準備だ。
まずは【虚空庫】から携帯炉を取り出す。
携帯炉とは言え、1メートル四方はあるので、【虚空庫】がなければ持ち運びは困難な代物だ。
その携帯炉に炎石をセットし、【着火】で火をつける。
炎の動きと魔力の流れを感知しながら、適温である1,500度になるように調節。
それと同時に、炉が温まるまでの間に素材の準備をする。
ポーション容器はガラス製だ。
ガラスの材料は珪砂、石灰石、そして、ソディア灰の3つだ。
最初の2つは自然に存在する石で、最後のソディア灰はソディアという水棲モンスターの骨を焼いてできるものだ。
どれも必需品なので、トン単位でもってきている。
今回作るポーション容器なら1万個つくっても誤差の範囲だ。
というわけで、必要な分量を【虚空庫】から取り出す。
3つの素材をミスリル大鍋に入れ混ぜ合わしていく。
よし、丁度、炉の温度も頃合いだ。
混ざった素材を炉にくべる。
やがて暖められた素材は赤く輝くアメ状になる。
俺は【虚空庫】から50センチほどの長さのミスリルパイプを取り出す。
ストローみたいに中空になっているパイプだ。
そのパイプの先端にアメ状のガラスを適量くっつける。
俺がやろうとしているのは吹きガラス製法という加工方だ。
パイプの先端に溶けたガラスをくっつけ、反対側から空気を送り込んで膨らませる技法だ。
熟練の職人は息を吹き込むやり方で寸分違わぬ形を作り出せるが、俺にそんな技量はない。
そこで代わりをしてくれるのが魔法だ。
魔法であれば、寸分違わぬように再現できる。
炉からパイプを引き上げる。
パイプの反対側から風魔法の【微風】で空気を送り込む。
送り込む量と速さは勘だ。
最近はやってなかったけど、一時期ガラス作りにハマったことがある。
そんなに外れはしないだろう。
出来上がった品は太さは丁度いいが、5ミリほど長かった。
うーん、やり直し。
俺は失敗作を炉に戻す。
ガラス作りは失敗しても素材がムダにならず、またやり直せるからね。
もう少し送り込む空気の量を減らしてみよう。
そして、再度【微風】――。
「うん、できたできた」
今度はバッチリ成功。
お手本のポーション容器と寸分たがわぬ物ができあがった。
完成品に【冷却】の魔法をかけて【虚空庫】に放り込む。
こうすれば、【虚空庫】の中で勝手に冷えて、常温になってくれる。
「よし、この調子でどんどんやっていこう」
【虚空庫】から追加で4本のミスリルパイプを取り出す。
【飛翔】で浮かしながら、同時進行で操作していく。
以前やった時は5本同時でも問題なかった。
今回もすぐに勘を取り戻すだろう。
この調子で、俺は容器作りに没頭していった――。
◇◆◇◆◇◆◇
3時間ほどかけて、千本のポーション容器が出来上がった。
まだ【警報】のセット時間まで1時間近くある。
残り時間でニーシャへのプレゼントを作っちゃおう。
ニーシャに贈ろうと思っている品は2つ。
指輪とペンダントだ。
といってもただのアクセサリーじゃない。
便利な機能を付与した魔道具だ。
早速、指輪づくりから始めよう。
まずは【虚空庫】から無垢なミスリル・リングを取り出す。
鏡面加工がなされ綺麗に輝くリングは、まだなんの効果も付与されていないプレーンな状態だ。
ここに魔針で魔力を流しながら、魔回路の術式を刻みこんでいくのだ。
刻みこむ術式は4つ。
拡大鏡を用いながら、精緻な術式を丁寧に彫り込んでいった――。
30分ほどかけて無事に術式を刻み込めた。
今終えた金属に術式を写す行為――いわゆる、魔彫りは俺の得意分野のひとつだ。
今回も納得できるクオリティーに仕上がった。
そして、最後に台座と透明な魔石をリングに嵌め込む。
これくらいなら炉を用いなくても、魔力でなんとかなる。
最後に、魔石に魔力を満タンになるまで注ぎ込んだら仕上がりだ。
「よし、完成だ!」
所要時間30分。
見事なリングが完成した。
そして、次に作るのはペンダントだ。
こっちはリングに比べて簡単だ。
チェーン自体は出来合いのミスリル・チェーンを使用。
俺が作るのはペンダントトップだけだ。
ペンダントトップは7つの魔石をあしらったものだ。
【虚空庫】から赤、青、黄、緑、白、黒、透明の7色の魔石を取り出す。
今回使用するのは魔石の中で最高ランクの極石と呼ばれるやつだ。
その極石ひとつづつに大量の魔力を込めていく。
7つ全部に満タンに魔力を込めるのに、全魔力の半分以上を消費した。
こんなに魔力を使ったのは久々だ。
魔力を込めたことによって、7つの魔石は綺麗な輝きを放っている。
その7つの魔石を魔力操作でくっつけていく。
中央に透明な魔石――無属性魔石だ――を配置し。その周囲を残り6つの魔石で取り囲む。
上側には聖属性の白魔石、下側には闇属性の黒魔石。
そして、左右には火風水土の四属性の魔石を2個ずつ。
出来上がったペンダントトップをチェーンにくっつければ完成だ。
「ふう」
やり遂げた俺は大きく息を吐いた。
こんなに物づくりに没頭できた日は久しぶりだ。
やり終えた達成感で俺は満足しきっていた。
これからは、毎日こうやって過ごせるんだよな。
いきなり「特訓するよー」って半殺しにされなくて済むんだよな。
幸せだ。
俺は心の底から幸せを噛み締めた。
本日の成果は、ポーション1万本、ポーション容器千本、そして、指輪とペンダントだ。
思い切って家を出てよかった。
こんなに楽しい日が送れるなんて。
やっぱり、物づくりは最高だ。
俺は物を作るために生まれてきたんだな。
明日からも頑張っていこう。




