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113 採用面接

 今日は王都に行く日だ。

 約束の時間は午前10時。

 午前4時に起きた俺は、まだ6時間も余裕がある。


 ということで日課となっているダンジョン巡りだ。

 まずはオイル集めの低層周回コース。


 ――だったのだが、1周目に変化が起きた。

 13階層27階層ともにドロップアイテムが変わったのだ。

 今までは大瓶に入ったドロリとした3種のオイルだったのが、小瓶に入ったサラリとした液体に変わったのだ。

 これは見覚えのある遺物アーティファクトだった。


 ニーシャに鑑定してもらうまでは正確なところは分からないが、多分ドーピング・ポーションのどれかだろう。

 ドーピング・ポーションは一時的にステータスを高める効果があり、ボス戦などで活躍する遺物アーティファクトだ。

 ただ、今の俺達からするとわざわざ1時間という時間をかけて周回してまで欲しい遺物アーティファクトじゃあない。

 もう低層周回は潮時かもな……。


 そう思い、俺は深層攻略に切り替えることにした。

 ここで役に立つのが昨日ゲットした例の遺物アーティファクト――『転移カード』だ。

 これを使えば27階層のここからでも55階層まで飛ぶことが出来る。


 俺は早速、『転移カード』の表面を指で触れ、起動させる。

 転移先として55階層を選び、決定を押す。

 特徴的な転移揺れとともに、俺は55階層の転移ゲートに降り立った。

 いやあ、便利だコレ。


 このフロアに用はない、さっさと行けるところまで行こう。

 現在午前5時前。

 あと5時間でどこまで行けるか……。


 56階層、57階層、そして、58階層。

 朝イチの探索でここまで来れた。


 50階層代前半は生活系遺物アーティファクトが多かったけど、後半に入ってからはダンジョン探索系遺物アーティファクトが多く手に入った。

 『魔法球マジックボール』やら、『魔銃』やら。

 『ドーピングポーション』、剣や槍といった武器タイプの遺物アーティファクトも沢山出た。


 残りの数日、この辺りで稼げば、冒険者たちが喜ぶ品揃えを用意できるだろう。


 ともあれ、時間切れとなったので、俺は58階層半ばから『転移カード』で1階層まで戻る。

 その足で家に戻り、ニーシャと合流。

 修行に励むというビスケにひと言告げ、二人で王都へ――。


   ◇◆◇◆◇◆◇


「まずはファンドーラ商会だね」

「ええ、そうね」


 ファンドーラ商会を訪れ、スティラさんの紹介状を見せると、スムーズに応接室へ通された。

 すぐにスティラさんがやってくる。

 今日はメイド服をワ国風にアレンジした衣装に純白のハイソックス。絶対領域は今日も見事だ。

 つい、視線を奪われてしまう。


「どうですか、今日のは?」


 絶対領域をガン見している俺にスティラさんが声をかけてくる。

 彼女の顔に視線を移し、俺は答える。


「ええ、今日も最高ですね。絶妙の組み合わせです。広すぎず狭すぎず、絶好の絶対領域ですね」


「良かったわ、そう言って頂いて」


 頬を朱に染め、嬉しそうなスティラさん。


「それにしても、良かったですわ、ギリギリ間に合って」

「どうかしたんですか?」

「ええ、魔術学院のあるブキャナンの街から、例の人たちを呼び寄せたんですけど、今朝到着したばかりなんですよ」

「えええ、それはナイスタイミングでしたね」

「ええ、ホントよ。さっき急いで鑑定書をまとめたところですわ」


 そう言って手に持った書類を渡してくれる。

 そこには志願者たちのステータスが記載されていた。


「全部で46名ですわ。書類で絞り込んでから面接しますか?」

「いえ、人柄とかも見たいので、全員と対面したいと思います」


 本当に見たいのは、各人の適性だ。

 普通の鑑定士では適性までは見れないが、ニーシャにはそれが出来る。

 そのためにも、全員と会ってみる必要があるのだ。


「分かりました。それでは、5人ずつ順番に呼んで来ますね」


 しばらくして5人の男女が部屋に入ってくる。

 胸に1から5の番号札を付けている。

 皆、長旅で疲れきったのか、自分に自信がないのか、暗い表情で俯いていた。


 ニーシャが紙にバツと書いたものを見せてくる。

 「この中には期待する該当者がなし」の合図だ。


「とりあえず、次の人たちをお願いします」


 ということを繰り返し、5巡目のときだった。

 ひとり気になる子がいた。

 番号は22番。猫人族の子だ。

 自信がないのか、特に深く俯いていて、こちらを見ようともしない。

 だけど、俺はニーシャの鑑定結果を見て、目を見開いた。


 この子はひとつ問題を抱えている。

 だが、俺は多分それを解消できる。

 そうならば、是非ともこの子は雇いたいところだ。

 ニーシャと目を合わせ、頷き合う。

 とりあえず、この子は第一候補としてキープだ。


「次の人たちをお願いします」


 これを繰り替えし、いよいよ最後の巡目だ。


 6人の男女が部屋に入ってくる。

 ニーシャが紙を見せてくる。

 46番。最後の番号の普人種の女性だ。

 ステータスを見ると、文句なし。

 この子も採用候補だ。


「分かりました。退出して下さい」


 以上、ひと通り全員見終わった。


「どうですか、めぼしい人材はおりましたか?」


 スティラさんが尋ねてくる。


「そうですね。最終検討をしたいので、少し俺たち2人だけにしてもらえますか」

「はい、分かりました。私たちは隣の部屋に控えておりますので、終わりましたら外にいるうちの者にお声掛け下さい」

「ありがとうございます。そうさせてもらいます」


 スティラさんたち商会関係者は全員部屋から出て行った。

 盗聴の心配はないと思うけど、念の為に遮音結界を張り、音が漏れないようにする。


「これで、音漏れは大丈夫だよ。気にせず喋っていい」

「そうね。まずは22番の子なんだけど――」


――――――――――――――――――


 名前:ミリア

 種族:猫人族


 レベル:12

 MP :35(105)


 魔力:E(S)

  魔回復:E(A)

  魔出力:E(A)

  魔操作:E(S)


 状態異常:【魔素障害】


――――――――――――――――――


 俺は彼女、ミリアの鑑定結果を眺める。

 魔法に関する適性は素晴らしいのだが、現在のステータスはすべてEと最低だ。


 これには原因がある。状態異常の【魔素障害】だ。

 この状態異常のおかげで、彼女はほとんど魔力をコントロール出来ないはずだ。

 本来は105あるはずのMPも35しかない。


 普通だったら、【魔素障害】と分かるはずなのに、下手に潜在魔力が高く、魔法適性も高いので、逆に発見されずにいたのだろう。


「アルなら、なんとか出来る?」

「ちょっと待ってくれ、調べる」


 俺は『錬金大全』を取り出し、【魔素障害】に関して調べる。


「うん、大丈夫。『エリクサー』で治るよ」

「って気軽に言うけど、持ってるの?」

「うん、百本くらい」

「はあ……」


 呆れられた。


「まあ、いいわ。あの子が治るなら、雇うの一択ね」

「ああ、ちょっと会話して人柄を見たいけどね」

「そうね」


「それで、もう一人の46番の子なんだけど――」


――――――――――――――――――


 名前:カーサ

 種族:普人種


 レベル:7

 MP :35


 魔力:E(B)

  魔回復:D(C)

  魔出力:E(E)

  魔操作:A(S)


――――――――――――――――――


「魔操作に関しては文句なしね。ただ、魔出力がネックになってるのね」

「いや、それ以上に問題なのはMPだ。このレベルでこのMPは低すぎる」

「そうなの?」

「ああ、この子はきっと学院でなにも教わっていない。魔力を増やすことは基礎中の基礎だ。ちゃんとした指導を受けてたら、こんなに低い値になるはずがない。彼女はろくな指導も受けず、自分で出来る魔操作を必死で伸ばしたんだろう」


 せっかく才能があるのに、魔出力偏重教育のせいで、彼女はないがしろにされてきた。

 いや、彼女だけでなく、多くの才能が埋もれているんだろう。

 今回の件でその悪い流れを断ち切ればいいんだけど。


「じゃあ、それぞれと面談してみましょう」

「ああ」

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