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109 念願のアイテム

 深層攻略を初めて今日で2日目だ。

 昨日は45階層までいった。

 『カートリッジ』も荒稼ぎさせてもらった。

 現在、午前4時。

 今日は丸一日、ダンジョン攻略に当てる予定だ。


 オークションの締め切りまで後一週間。

 しかも、明日は王都に行かなければならない。

 その後も、色々やらなきゃいけなことがあり、どれだけダンジョン攻略に時間を割けるか分からない。


 できるだけ今日のうちに進んでおきたい。

 理想は60階層、最低でも55階層までは進んでおきたい。

 そう思いながら、俺は46階層へ降り立った。


 相変わらず洞窟タイプのフロアだ。

 1フロア1時間で行ったら夕方には60階層まで行ける計算だが……。

 ある程度の寄り道――例えば、昨日の44層のモンスターハウスみたいな――はあるだろうから、計算通りには行かないだろう。

 なにせ、未踏破領域なのだ。

 どこにお宝が眠っているか分からない。


 【魔力探知マナ・サーチ】で索敵しながら進む。

 このフロアはハイ・リザードマン(リザードマンの上位種)などの鱗型モンスターが主体のようだ。

 さすがに、ドラゴンはいないだろうが、サラマンダーくらいは出てきそうだ。

 それでもまだ余裕だ。あえて戦闘は回避しない。

 装備は『旅人の服(国宝級)』に愛用の『ミスリルナイフ』。これで十分だろう。


 前方から3体のハイ・リザードマン。

 その距離20メートル。

 こちらにはまだ気づいていない。

 だったら――。


「【火槍ファイア・ランス】――」


 3本の火槍が飛び出し、ハイ・リザードマンに直撃。

 3体とも綺麗に燃え尽きた。


 まだまだ、こうやって戦闘に時間をかけずに終わらせられるレベルだな。

 さて、ドロップ品はと――。


 魔石の他には『カートリッジ』が2つと冒険者カードが一枚。

 冒険者カードといっても、誰かのカードではない。

 未使用のカードだ。

 ギルドが発行している冒険者カードも、こうやって遺物アーティファクトとして冒険者が入手したものを買い取って使用しているのだ。


 たしか、そこそこ良い値がついたはずなのだが、冒険者ギルドに売りに行ったら、カード履歴から俺が深層に潜っているのバレちゃうしなあ。

 まあ、保留ということで【虚空庫インベントリ】に仕舞っておいた。


 その後もドロップ品や宝箱から、順調に遺物アーティファクトを入手していった。

 遺物アーティファクトは2種類に大別できる。


 1つ目はダンジョン攻略に役立つもの。

 聖剣や聖具を頂点に、武具や、魔法を発動する『魔法球マジック・ボール』。他にも、ステータスを一時的に増加させる『ドーピング・ポーション』など。

 便利なアイテムとしては、『携帯テント』などがある。

 普段は直径10センチほどの球状なのだが、魔力を込めるとテントに拡大するのだ。特に6人用は大人気で、市場でも高値で取引される。


 2つ目は生活に役立つもの。

 空調装置や冷蔵庫。ドライヤーや扇風機といったもの。

 冒険者にはあまり人気がないが、貴族や富裕層には大人気であり、儲けを狙うなら、こちらを狙っていくべきだろう。


 俺は順調に遺物アーティファクトを集めながら階層を進んでいく。

 オークションの目玉となるような大物は手に入らなかったが、店に並べる品々としては十分なものを沢山入手出来た。


 そうして、進んで行くことしばし。

 50階層最奥。

 ボス部屋前だ。


 さあ、1週間ぶりのボス戦だ。

 俺は軽い足取りでボス部屋へ入っていく。


 俺は軽い気持ちだった。

 別に舐めているわけではない。

 今までの経験から、出現モンスターの分布から大体ボスの強さの予想がつくのだ。


 しかも、今回は分かりやすかった。

 なにせ46層以降ずっと鱗型モンスターばかりだったのだ。


 30秒後、出現したのは――アイス・ヒュドラだった。


 既知の敵だ。

 5つの頭部を持つドラゴンもどき。

 その頭部から凍てつく氷のブレスを放ってくる敵だ。


 俺は即座にミスリルナイフに火属性を付与する。

 ゴウという燃え上がりとともにミスリルナイフは赤い炎で包まれた。刀身は50センチほどに伸ばしてある。


 アイス・ヒュドラは5つの頭部から、一斉にアイスブレスを放ってくる。

 俺はそれを躱し、ミスリルナイフで弾き、すべてを防ぎきる。


 ブレスが途切れた瞬間、お返しとばかりに俺は――。


「【地獄の火焔ゲヘナ・フレア】――」


 身体の前方に伸ばした左手から、凄まじい焔の奔流がアイス・ヒュドラの全身を包み込み、燃やし尽くし、その存在を消滅させた。


「うーん、相変わらずこの魔法は反則だなあ」


 大抵の敵なら、これ一発で終わってしまう。


「でも、急いでるし仕方ないな」


 俺はアイス・ヒュドラを少し可哀想に思いながら、ドロップ品を確認する。


「おおおっ! これはっ!」


 魔石の隣に落ちていたのは、大型のコンロだった。


「やっったああああああ」


 俺は浮かれて、はしゃいでしまった。

 だって、ずっと欲しかったヤツなんだもん。


 俺は調合する際や、調合鍋を加熱する際に、魔導コンロを用いていた。

 魔導コンロは魔法によってコンロを再現したものだ。

 魔導コンロも最上級のものを使っていたのだが、それでも遺物アーティファクトのコンロには及ばない。

 火力、安定性、火力調整能力。どれをとっても遺物アーティファクトのコンロには敵わないのだ。


 コンロは、特に調合師や料理人の間で大人気で、市場に出回ってもすぐに売れてしまうとニーシャが言っていた。


 お金には困らなくなったし、開店して落ち着いたら、大金にあかせて購入しようと思っていたところに、まさかの自力ゲット。


 浮かれてしまうのも仕方がない。

 ありがとう、ヒュドラくん。


 ということで「周回」決定!。


 俺は当初の予定を変更し一時間ほど周回することにした――。


   ◇◆◇◆◇◆◇


 ――1時間ほど、ヒュドラ周回をこなした結果。

 得られたのは、大型コンロ16台、小型コンロ31台、冷凍冷蔵庫1台だった。

 特筆すべきはレアドロップ品の冷凍冷蔵庫。

 【虚空庫インベントリ】がある俺たちには不要だが、需要は高いんじゃないだろうか。

 目玉商品にならないかな?


 50層を超えると遺物アーティファクトも少しずつ高級なものが増えていった。

 目玉商品には及ばずとも、店舗に置きたい商品は続々と集まっていく。


 その後も順調に進んで行き、55階層の最奥にたどり着いたのが午後4時。

 さて、どうしたものか?

 帰るには少し早いし、60層を目指すには少し遅い。


 まあ、ちょっとだけ様子見しておくか。

 ということで、56層探索へ向かうことにした。

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