会議、つのる怒り
そそり立つ摩天楼。
それは破天竜馬がもたらした知識を、魔法を駆使して作り上げた未来都市アルメトラーナの象徴だ。
太陽の光はビルによって乱反射し、自然では再現出来ない美しさを生み出していた。
ソフィア・パラド・アルメトラーナ・エドバトラはこの光景が好きだ。
これほどの物を作り上げる人間が、魔物や魔人なんかに滅ぼされるわけがないと、自信が持てるから。
彼女はビルの間を歩きながらその光景を眺め、口元を綻ばせた。
ソフィアが歩くたびに、白を基調としたドレスがふわりと揺れる。
その姿は誰もが想像する綺麗で儚く、しかしどこか覚悟を持った理想のお姫様そのものだった。
ソフィアは顔の輪郭がはっきりした地球で言うと、西洋風の美しい顔立ちだ。
ビルから反射した光はソフィアの銀色の髪をキラキラと輝かせている。
そんな彼女の周りには、四方を取り囲む様に護衛が同じ歩調で歩きながら、周囲を警戒していた。
名前からも分かるように、ソフィアは王族だ。しかもエドバトラとは王族の中でも直系にしか名乗ることを許されていない。
彼女は現在世界の王として君臨するガルディオ・パラド・アルメトラーナ・エドバトラの1人娘なのだ。
「あ、ソフィア様よ!」
「本日もソフィア様はなんと美しい・・・」
「ソフィア様ー!」
道行く人々からソフィアへ歓声が上がる。
ソフィアはそれに手を上げ、笑顔で答えた。
破天とはまた少し違うが、間違いなくソフィアも人々の希望なのだ。
そして彼女は、人々に見送られながら、目的の場所へ歩いて行った。
ソフィアは目的地であるビルの一室へと入った。
そこは会議室だった。機密性を重視してか、窓は設けられていない。陽の光こそ差し込まないが、部屋には照明が設けられ、適度な明るさを保っている。
中々大きな部屋だ。だがそこには、わずか2人しか人がいなかった。ソフィアで3人目だ。
「遅かったじゃねえか。まーた、わざわざ歩いてきたな?しかも必要のない護衛までつけて」
そう言ってソフィアに対して目を細めるのは、破天竜馬。今や王よりも発言力を持つ異世界から来た男。
破天は異世界の知識で作ったポテチというお菓子を机の上に広げ、パリパリと食べている。
「仕方ないでしょう?私は希望の象徴なんですから。こうして人々の前で笑顔を振りまくのも仕事の一つです」
「マスコットも大変だな」
「うるさいですよ。それより、私にもポテチ分けなさいよ」
ソフィアは確認を取ることもなく、ポテチを一つ取り口に運ぶ。ソフィアはポテチが好きなのだ。
「あんま食うと太るぞ」
「失礼ね。女性に言っていいセリフじゃないわよ」
「なんだよ」
「なによ」
威嚇し合う2人。そこに呆れた声が向けられた。
「人が揃ったから、そろそろ会議を始めたいのだが?」
「あ、おじ様、ごめんなさい」
この場に集まったもう1人、ジモンゼルの言葉にソフィアは謝る。ソフィアから見たジモンゼルは父の弟。つまりは叔父に当たるのだ。
忙しかった父よりも、ジモンゼルに面倒を見てもらう事の方が多かった事もあり、今ではもう1人の父の様に思っている。
破天はポテチをさっさと片付けた。
ソフィアも気持ちを切り替え席に着く。
「さて、知っていると思うがガルディオは今日この場には来れない。あいつは今、黄金都市に行ってるからな。よってこの会議は俺たち3人で行う。意義のある者は?」
「意義なし」
「同じく意義なしです」
それを聞いて破天は満足そうに頷いた。
「よし、ではこれより俺と同じ異世界、地球から来た水下有痢についての会議を執り行う」
そう。この会議は有痢についての情報、意見交換会だ。
異世界からの召喚者とは、やはりそれだけ注目されるものなのだ。
「ではまずワシから」
ジモンゼルから有痢の学校での状況が説明される。
破天とソフィアは、ジモンゼルの話に聞き入った。
「・・・、以上から、有痢は想像以上に魔力が乏しく、使いものにならない事が判明した」
ソフィアは、はしたなくも開いた口が塞がらなかった。
「話が違うじゃないですか!地球はパラドよりも上に位置する世界だから、どんな人間でも魔力が多いんじゃなかったんですか!」
ソフィアに睨まれた破天は、困ったように首をかしげる。
「いや、俺も最初に有痢に会った時に魔力をあんま感じなかったから、不思議には思ってたんだけどな?でも、普通多いはずなんだけどな〜。おっかしいよな〜。・・・まあ、個体差なんだろうな」
「と、言うと?」
「有痢だけが極端に魔力量の少ないカスって事だな」
「本当に使えないゴミね、あの男!」
3人は頭を抱えた。
残留魔力で呼び出せる使えない人間という条件は、あくまで地球で使えないという事だ。
そこに魔力量は関係しない。
なので破天たちは掛けていたのだ。魔力量が膨大な人間が現れるのを。
だが、結果として現れた有痢は、魔力量が乏しかった。
「誤算だったな。残留魔力の無駄遣いだ。戦闘で有痢を頼るのは、完全に不可能になった。まあ、戦闘以外で役に立ってもらうか」
「あんな汚いお漏らし男に何かが出来るはずないじゃないですか。それとも、当初の予定通り、クラッシュカンパニーで面倒見てくれるの?」
「止してくれよ。戦闘で使えない奴を入れたって役に立たねえだろうが。ここは引き続き学校の先生に指導してもらうのがいいんじゃねえか?」
「結局ワシなのか!」
「頼むよジモンゼル。あんなお荷物預かってる余裕ねえんだよ」
「ワシには余裕があると思ってるのか?あいつ、特別クラスとはいえ、5歳児にも負けるし、それでも何か長所があるだろうと思って色々な事をやらせれば、ことごとく全部失敗するんだぞ?」
「マジか。地球で使いものにならなかったってのは伊達じゃねえな!はっはっは!」
「笑い事じゃない!!」
「ん〜、でもな〜。こっちの都合で呼んどいて、使いものにならないからぽいってのは、流石に気がひけるんだよな。ま、もう少し頑張って見てやってくれよ。まだなんかの役に立つかもしれないだろ?」
「いや、もうホントに何やらせてもダメだし、無理だと思うぞ?」
「そっかー」
「そっかじゃないでしょう!!」
諦めた様に笑う破天に対し、ソフィアが苛立たしげに声を上げた。
「何なのよあの男。これじゃあホントにただのクソ野郎じゃないですか!」
実はソフィアは、有痢が異世界召喚された現場に立ち会っていた。
有痢がきれいなお姉さんと認識していたのが、ソフィアだったのだ。
そして、有痢の召喚された時といえば、下痢を撒き散らしたあの時である。
ただでさえ最底辺だったソフィアの有痢に対する好感度は、今回の会議で最底辺のそのまたはるか下に落ちた。
破天はソフィアの肩をポンと叩き落ち着かせつつ、ジモンゼルに言った。
「それでも、お前に頼るしかないんだ、ジモンゼル。すまないが、有痢の面倒頼むな」
「・・・はあ、仕方あるまい」
頼まれたジモンゼルは嫌ではあったが、承諾した。
しかし、それよりもソフィアの方が納得できない様に、唇を噛み締めていた。
明日からは仕事も始まったので2、3日に1回の投稿になります。
これからもよろしくお願いします。




