先生は苦労する
ジモンゼル・パラド・アルメトラーナは王族にして、剣士。
そして今は、未来都市アルメトラーナで次代の子供たちに勉学を教える先生だ。
歳は70を超えているが、その体つきは引き締まり、まだ十分に戦えるだけの実力を備えていた。
歳と若者の育成という理由から、現役を引退してはいるが、過去に魔物と戦ってきた実力を知る人々からは今も厚い信頼を寄せられている。
そんな彼に昨日、破天竜馬から依頼があった。
何でも、異世界召喚された男が余りに使えないので子供たちと一緒に鍛えてやって欲しいとのこと。
「任せてくれ。ワシで良ければ、喜んで引き受けよう」
英雄と同じ故郷の人間だ。
ジモンゼルにも興味が湧いた。今は使えなくとも、将来は破天の様に、素晴らしい活躍をしてくれるかもしれないのだ。
ジモンゼルは男を鍛えることを承諾した。
期待に胸膨らませ、教室に向かう道すがら、ジモンゼルは嫌な感覚を覚えた。それは体をトレースされる感覚。しかも教室のクソガキと同じ4人分だ。
ジモンゼルは走った。そして勢いよく教室の扉を開ける。
「げっ、せんせいだ。おもったよりはやかったな」
そこにはボコボコにされて倒れている男がいた。黒髪黒目で、体つきこそ破天竜馬とは似ても似つかないが、その顔は人種が同じだからだろう。共通する部分も多い。
この男が破天と同郷の新しく来た男、水下有痢だろう。
「お前たち何をやっている!」
「わあああ!」
ジモンゼルの一括でジャインを筆頭とするクソガキたちは蜘蛛の子を散らす様に逃げていった。
「大丈夫か!?」
ジモンゼルが有痢を助け起こすと、
「うう、お家帰りたい。子供怖い・・・」
子供にボコボコにされ、恐怖を刻み付けられた大人がそこにいた。
こいつもうダメかもしれない。
ジモンゼルはそう思った。
今日は短いです。
すみません。