恐ろしいガキ共
断言する。これはラノベではない。
美少女なんていなかった。
いたのは美幼女だった。
破天さんの所有する馬鹿でかいビルに一晩泊めてもらった僕は、学校に向かった。
昨日、破天さんから長々と説明を受けていたあの学校だ。
ちなみに、昨日学校には僕と破天さん以外いなかった訳だが、それは時間が遅くてみんな下校した後だったからだ。
今日は、登校すれば生徒や先生がちゃんといるそうだ。
「にしても、まさか一晩泊めてくれるなんてなぁ」
昨日は半信半疑だったけど、ここが異世界である可能性が少し高くなったと言わざるを得ない。
だって、TVのドッキリなら予算かけ過ぎだと思うんだ。
まあ、まだTVの線も捨てきれないけど。
今時のTVは1月くらい余裕で隠しカメラで盗撮し続けるし。
そんな事を考えてたら、すぐに教室の前まで来た。
まず間違いなく美少女と御対面のはずだ。
自然と胸が高鳴る。
そして教室に入って目を疑った。
「はじめまちて。るーなです」
小さい。
僕の腰ほどまでしかない身長。
僕を出迎えたのは5歳くらいの子供たちだった。
教室を間違えたと思ったが、子供たちは僕が今日からこのクラスに入る事を知っていた。
クラスを間違えたわけではないらしい。
ここに先生がいれば、何でこのクラスに僕が入るのかと問い質したが、残念ながら先生はまだ来ていなかった。
目の前にいるのは子供だけだ。
全部で5人。
自己紹介されたが、人の名前を覚えるのは得意じゃないので、ルーナちゃん以外忘れた。
ルーナちゃんは可愛かった。
目はくりりと大きくて、特徴的な緑色の髪をショートヘアにしていた。
緑色の髪って凄いな。地毛なのだろうか?
他のガキ共も、赤やら青といったペンキ頭から被りましたみたいな髪色をしていたが、興味ない。
僕を馬鹿にしたような態度をとるクソガキばっかだったので仕方ない。
「おとななのに、なんでおれたちとべんきょうするんだよ。どんだけばかなの、おまえ」
その中の1人、赤髪のジャイアンみたいなガキが言ってきた。
言われてちょっと納得する。
僕も彼らの立場なら、めちゃくちゃ僕を馬鹿にしただろう。
が、ジャイアンをこのままのさばらせる気は無い。
僕はのび太ではなく、できすぎ君だという事を分からせてやる。
「調子に乗るなよクソガキが。大人を馬鹿にするとどうなるのか分からせてやる」
僕はジャイアンの胸ぐらを掴み持ち上げた。
・・・あれ?これじゃ僕がジャイアンか?まあいいや。
「あ?やるのか?さきにてをだしたのは、そっちだからな。おれのはせーとーぼーえーだからな!トレース!」
「難しい言葉知ってるじゃないかクソガキ。だが、お前みたいなガキが自分の身を守れると思ったら大間違ボッッヘェエエ!!」
ガッシャアアアン!!!
な、何だ!?顔面が歪んだ様に痛い!
子供たちが遠い!
「ちょ、ちょっと!やりすぎだよ、じゃいんくん。ゆーりさん、しんちゃいそうちゃない!」
「ルーナちゃんはやさしすぎるよ。こんなやつにやさしくしてもいいことなんてないよ。おい、おまえらこいつすげえよわいぞ。ちかくにジモンゼルせんせいいるみたいだし、トレースしてぼこぼこにしようぜ」
ジャイアンのよく分からない掛け声で、クソガキたちが馬鹿にした様な笑顔を浮かべながら僕に近づいて来た。
「ちょ、やめ、ギャァアアア!!!」
異世界のガキは怖い。
僕はその事をよく学んだ。