破天竜馬と異世界パラド
「あー、初めまして。クラッシュカンパニーの社長を勤めている破天竜馬だ。・・・まあ、元気出せ」
黒板の前に置かれたイスに僕は座っていた。
前にいるのはさっきナイストゥーミーチューしたおっさんだ。破天さんって言うのか。
ハゲてはいないが、白髪が混じり始めてるから、そこそこの年だろう。4、50代かな?
だけど、年齢とは対照的に、体は筋肉ムキムキだった。
スーツを着ている。が、かなり似合っていない。筋肉のせいでピチピチだ。
どうやらこれから、僕が置かれている状況を説明してくれるらしい。
だが、筋肉おじさんと2人きりの状況を誰が楽しめるというのだろうか?
さっきまで美人のお姉さんがいたはずだ。是非とも交代してもらいたい。
まあ、こんな筋肉おじさんにそんな事言えるはずないんだけどね。怖いから。
「・・・さっきから凄え失礼な事を思われてる気がするんだが、気のせいか?」
「気のせいです」
間髪入れず僕は答えた。
何このおじさん、勘が良すぎじゃない?
やっぱ怖いわ。
僕の返答に納得した訳ではなさそうだが、破天さんは僕が置かれている状況の説明を始めてくれた。
まずここは地球じゃない。パラドって名前の異世界らしい。
んで、この世界には魔法があって、魔人とか魔物がいる。
人類は昔は栄えてたらしいけど、魔人や魔物によってその数を減らして、今は世界に13個の都市を点在させるだけになってるらしい。
「なるほど。分かりました。在り来たりな設定ですけど、僕は異世界から召喚された救世主という訳ですね?」
何というテンプレ展開。
これから僕は世界を救い、綺麗なお姉さん達とのハーレム生活を送る他ないのだ。
いや、そんな生活送りたくはないんだけどね?
でもこういう状況だ。甘んじてハーレム生活を受け入れる他ないだろう。あー、救世主は大変だ。
「おい有痢、その気持ち悪い笑いを今すぐ止めろ。勘違いしてるから。話は最後まで聞け。救世主は俺だから」
「・・・はい?」
〜話の続き〜
話は20年前にさかのぼる。
人類は王様が率いて、頑張って魔物と戦ったらしいが、滅亡は間近だった。
そこに突如、破天竜馬。つまり目の前にいるおじさんが現れた。
破天さんも僕と同じ日本から転移してきた人らしい。
破天さんのもたらした知識によって状況は一変した。
そして何より破天さん自身が多くの魔物を倒した。
そのおかげで破天さんは英雄になり、王族以上の権力者になり、破天さんを慕う人たちで魔物討伐の会社が立ち上がった。
それがクラッシュカンパニー。
「え、ちょっと待って下さい」
「何だよ。話の腰を折るなよ」
「破天さん、王族以上の権力者なんですか?」
「おう。言っちゃなんだが、この世界で一番偉いのは俺だ」
「うわぁ〜〜・・・」
こんな筋肉ムキムキ、スーツピチピチおじさんが一番偉いのか・・・。
・・・やだなぁ。
もっとこう、荘厳な雰囲気を醸し出している王様とかが良かった。
「なあ、取り敢えず殴っていいか?」
「やめて下さいーーーあっ!」
殴られた。
理不尽だ。
〜話の続き〜
破天さんが来て多くの魔物が倒された訳だけど、どうしても倒せない化け物がいた。
それが13と呼ばれる13体の魔物と魔人。
破天さんはその全てに戦いを挑み、負けている。
「このままじゃ拉致があかないと判断した俺は、異世界召喚をする事に決めたんだ。20年前、俺がこのパラドに呼ばれたようにな」
「はあ、でも何で呼んだのが僕なんです?」
「しょうがなかったんだ。俺だってお前みたいなヒョロいもやし野郎を呼びたくなんてなかったさ」
「酷い事言ってる自覚、あります?」
この世界にはただ空気中を漂うだけで誰にも使えない残留魔力ってのがあるらしい。
でも、使えないのはこの世界に限った話だ。世界の外で発動する魔法はその限りではない。
異世界召喚にはこの残留魔力を使用する。
ただこの残留魔力、貯まるのがものすごく遅い。
今回はギリギリ異世界召喚出来る分が溜まっていただけらしい。
で、異世界召喚は条件を増やしたり、厳しくするほど消費する魔力が多くなる。
今回はケチりまくった必要最低限の魔力による召喚だった。
召喚条件は『世の中に必要とされていない健康な人間』。
それで召喚されたのが僕だと。必要とされてないのは納得だけど、下痢ばっかしてるから健康かすら怪しいね。
「ていうか、そこまでショボい条件で僕を召喚する意味あります?言っちゃなんですけど、何の役にも立たないと思いますよ?」
「ああ、地球の人間は総じて魔法適正が高いはずなんだよ。だから、地球ではクズでも、パラドでならある程度の戦力になるんじゃないかと」
「さっきからメチャクチャ失礼ですね。というか、もうそろそろいいんじゃないですか?」
「あ?いいんじゃないですかって、どういう事だ?」
「いや、ドッキリか何かなんですよね?この世界が異世界って嘘ですよね?黒板とか普通にあるし」
ここまで長々と破天さんの話を聞いてきた僕だが、実は全くこの話を信じていなかった。
だって、色々と雑なのだ。
話の内容がではなく、この街が。
僕が召喚された場所は、外に出て気付いたが、普通のビルだった。
今いる場所は学校だ。
ここに来るまでに通った道だってコンクリートで舗装されてたし、信号もあった。
てか、車で来たしね。学校まで。
どこにファンタジー要素があるのか。
きっとこれはTVの企画なんだと思う。素人にドッキリを仕掛けて騙されるかどうかをカメラで撮影しているのだ。
だが、予算ケチり過ぎじゃないだろうか?
せめてファンタジーっぽいセットくらい作っておくべきだと思う。
せっかく異世界召喚のところはそれっぽく出来てたのに。
てか、素人だと、いつまで騙されたフリをしていればいいのかもよく分からない。
でも、もういいだろう。
TVの尺としては十分じゃないだろうか。
「いや、ここが異世界じゃないって否定したら、俺の今までの話何だったんだよ」
「よく出来た作り話」
「ぶっ飛とばすぞ!」
「ひいっ!?」
マジギレするおじさん。怖い。
「はあ・・・、黒板やこの建物もだが、俺が持っていた日本の知識を再現したものだ。魔法と合わせる事で大概の物は再現出来たからな。異世界での知識チートはもう俺がやり尽くして出来ないから覚えとけ。それと、ここが異世界ってのはこれを見て納得しろ。『燃えろ』」
破天さんが掌を上に向け意味深に呟くと、そこから炎が灯った。
「どうだ?これが魔法だ。ここが異世界だって納得したか?」
「なるほど。よく出来た手品ですね」
「はっ倒すぞ!」
「ひいっ!?」
それからしばらく、破天さんの説明は続いた。長かったから細かい所は忘れちゃったけど、あんまりにもここは異世界だと熱弁するから、それは信じる事にした。
正直、地球で居場所のない僕からすれば、ここが異世界だろうがなかろうが、特に困らないし。
・・・、どう見てもただの黒板と教室なんだけどなぁ。
最後に、破天さんは聞いてきた。
「で、ここまでの説明で理解したと思うが、申し訳ない事にお前が日本に帰る方法はないし、帰すつもりもない。その事に不満はあるか?」
「いえ、まったく。日本にいてもニート生活になるだけでしたしね。なら異世界で暮らしてみるのもいいってもんですよ」
「そうか。そう言ってくれると此方としても気が楽だよ。何、俺も日本出身だが、パラドでの生活のが好きでな。魔物との争いばかりだが、いい世界だぞ」
「そういえば、この世界に残るとして僕は戦闘をするんですか?それは絶対に嫌なんですけど」
大事な事なのに忘れるところだった。
僕は友達と喧嘩してもいつも負けていたのだ。
戦いなんて出来るはずがない。
「今更か。そこは真っ先に心配する事だろうに・・・。安心しろ。いきなり戦わせるほど俺も鬼じゃない。どうせ役に立たないだろうしな。まずは訓練を受けてもらう。ここは王族が子供達に勉強や戦闘技術を教えている学校なんだ。まずはここで学ぶといい」
「大学も卒業する年なのに今更学校ですか」
「こっちの常識だって何も知らねえだろ。それに、そんなに戦うのが嫌なら悪い話はじゃないと思うぞ。戦闘以外で有痢が役に立ちそうなら、そっちで働いてもらうのも有りかと思ってんだ。戦闘は・・・、実は有痢に頼らなくてもなんとかなりそうな目処が立ち始めてるからな」
「はあ・・・、分かりました」
こうして僕は異世界の学校に行く事になった。
ラノベで読んだことあるけど、こういうのって美少女とのキャッキャうふふなイベントが待ってるものだよね。
ちょっと楽しみだ。
何故でしょう。
スペースを打っても反映されません。
スマホで書いてるのが悪いんでしょうか?
また、近々直します。
今は読み辛いかもしれません。
すみません。