最低の異世界召喚
世の中には必要ない人間なんていないって、綺麗事を言う人がいるけど、あれは嘘だ。
必要ない人間はいる。
僕だ。
水下有痢、それが下痢野郎である僕の名前だ。
僕はどうしようもない人間だ。
緊張すると下痢が出るのだ。
小学生の時は、歌の発表会で下痢をし、中学生の時は、期末テストで下痢、高校の時は・・・、いや、これ以上はやめておこう。
だけど、こんなのは可愛いもんだ。
僕はやってしまった。
大学も3年になり、就職活動が始まって、面接試験の時、僕は下痢をした。
その後も、事あるごとに下痢をした。
おかげさまで、明日には大学卒業だというのに、就職先は決まっていない。
バイトですら全部落ちた。
ニートだ。糞ニートだ。
それもこれも有痢の『り』が、下痢の『り』なのが悪い。
つまり、親が悪い。冗談で書いた名前の当て字を間違えて本名として提出したらしい。
あはははは・・・、笑えない。
これからどうしよう。
「う、うぐぅ…」
そんな事を考えてたら、また腹が痛くなってきた。
というわけで、僕は今家のトイレにいる。
僕の人生の中で最も慣れ親しんだ場所だ。
ふふ、もういっそここで暮らしてやろうか。
住まいがトイレ。うん。そこらのホームレスよりひどいな。人生終わってるわ。
だけど、実際住んでる様なものかもしれない。
壁や床の傷やシミの位置を全て把握するくらいには、このトイレを知り尽くしてる。
見慣れた光景だ。この光景の中に僕の知らない物は何もない。
例えば、今唐突に現れた魔法陣も僕は知って・・・、いや、知らないな。何だこれ。
凄い光輝いてるんですけど。ピッカピカなんですけど。
唖然としていたら、僕の視界は光で塗りつぶされた。
・・・、目を開けると、僕の前にはたくさんの人がいた。おっさんから美人のお姉さんまで、いろんな人がいる。
何が何だか分からない。僕は今の今まで、トイレにいたのに。
僕は驚きつつも、周りを見回した。すると、周囲の人々も、驚いているのが分かった。
しばらく無言で見つめ合う僕たち。
意を決したのか、中から1人のおっさんが僕に声をかけてきた。
「な、ナイストゥーミーチュー?」
何故に英語?いやだが、突っ込むまい。言葉の端々からおっさんも不安なのが伝わってくる。
コミュニケーションで大切なのは、相手に安心感を持たせる事だ。
緊張するけど、ここは僕も笑顔で答えるべきだろう。
腹に力を入れ、大きな声で答える。
「ナイストゥーミーチュー!!」
僕の言葉に、返ってきたのは美人なお姉さんの悲鳴だった。電波する様に周りの人々も次々と悲鳴を上げていく。
さて、僕は今までどこにいたのか。トイレだ。何の為にいたのか。お花を積む為だ。緊張するとどうなるのか。お腹が痛くなる。大きな声で答える為に、何をしたのか。お腹に力を入れた。
人々が悲鳴を上げた理由が、お分かり頂けただろうか?
僕はここでも下痢野郎だった。
こんな汚い話ですみません。
良ければこれからも読んでくれると嬉しいです。
取り敢えず、1週間は頑張って毎日投稿しようと思います。
その後は2〜3日のペースで投稿出来ればと思ってます。
良ければ評価してもらえると嬉しいです。
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