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お腹を壊した。→異世界に召喚された。→何故か社長になった。  作者: ゴミ虫
1章 未来都市アルメトラーナ
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トイレを目指して

デッドリースライム。

そいつはそれはもうやばい奴だという話を、行きの車の中で僕は聞いた。

まあ、世界最強の怪獣と怪人である13に数えられてるくらいだから、けっこーやばいんだろうなぁとは最初から僕も思っていたさ。

だけどさ?聞いた話は僕の想像を軽く凌駕するものだった。詐欺である。車から降ろしてほしい。


デッドリースライムは山サイズの緑色をしたスライムらしい。

まず、その体は酸性なので、触れたものは溶ける。そんで、分身体を無尽蔵に作る。

この分身体はデッドリースライムが取り込んだ生き物の情報を元に体が構成される。

さっきのはオオカミの情報を元にした分身体だったわけだ。

で、この分身体も当然酸性。あと、デッドリースライムも分身体も体のサイズが一定以下になるまでバラバラにしてやらないと死なない。

そんで、バラバラにする以外の攻撃は全部無駄。

考えてもみよう。

さっきのオオカミはまあ、精々2メートルだった。でも、デッドリースライムそのものは山サイズなんだよね?それ体積オオカミの何倍だろうね?

つまり、いくら攻撃してもこちらの攻撃は無意味で、相手は触れるだけでこちらを溶かすというのが、デッドリースライムなわけだ。

あとたちが悪いのが、このスライム、生き物を探して食べる為に常に世界のどこかを彷徨っていて不眠不休。

つまり、世界のどこかでは、常にデッドリースライムがお食事をしているわけだ。

で、人間は美味しいご飯だと。

そこに今から行くと。

ほーう。


「僕お家に帰る!!!」

「残念だったな。お前のお家はこの世界にはねえよ。邪魔だから隅っこでしゃがんでな」


言いながら、破天さんは鳥のスライムを細切れにした。

隣ではぴっちりしたスーツを着たお姉さんが人間サイズのカマキリを撲殺していた。お姉さんが殴ると何故かカマキリは爆散していく。

行きの車は地獄絵図だった。

まだデッドリースライムに辿り着いても居ないのに、すでにスライムの残骸でグチャグチャで、車は所々溶けている。

破天さんとお姉さんが無傷なのが謎だ。


「・・・お腹痛い」

「いや何でだよ!」


破天さんは知らないのだろうか?

人間は極度の緊張状態に陥ると、腹痛になるのだ。


「降ろして下さい」

「無茶言うな。我慢してろ。絶対に車内で漏らすなよ」


そんな事言ったって、僕が腹痛を意識した時には、腹の中の物体Xは外に出る寸前まで来ている。

これを食い止めるのは至難の技だ。

ある意味、破天さんやお姉さんよりも過酷な戦いをしているといえる。

敵はいつも自分の中にいるのだ。

・・・あ、やばいやばいやばい。マジでやばい。

お外に飛び出しちゃう!中の敵じゃなくなっちゃう!

耐えろ僕!

流石にここで解放するのはマズイ。

・・・やっべ。変な汗出てきた。

周りは戦闘を継続中っぽいけど、そっちにまで意識を割く余裕がない。

というよりか、意識どころか、指一本動かしたらダムが決壊してしまいそうだ。

必死にうずくまって耐える。

腹に力を入れすぎてもダメだし、緩めすぎてもダメ。

絶妙な力加減を意識するのだ・・・。








ーーーどれほどに時が経ったのだろうか。

腹に意識を向け過ぎていてよく分からない。

何とか僕の中で暴れ狂う奴は、一時的にだが落ち着いたようだ。

とはいえ、予断を許さない状況は続いているわけだが。

それでも何とか顔を上げる事が出来た。

そして、僕は見つけてしまった。

WCと書かれた最高の個室を。


「・・・ふひっ」


嬉しくて笑いたかったんだけど、あんまり笑うと腹が辛い。

僕は脂汗を流しながら変な声で小さく笑った。

トイレ。

それは腹痛という地獄から僕を救い出してくれる蜘蛛の糸。

僕は、何とかトイレにたどり着こうとゆっくりと立ち上がろうとして・・・。


「くそ!こんなのどうすりゃいいんだ!勝てるわけねえ!」


ドンッ!


突如、車が揺れた。

誰かが何かを騒いでいる。

そして、最悪の事態が起きた。うるさい雑音と共に、車がトイレから遠ざかっていくのだ。

この機会を逃せば、僕のお腹のダムが決壊するのは確実。


迷っている時間は無かった。


「トレース!」


僕は叫びながら車から飛び降りた。

幸い、トレーススーツは来ている。

何をトレースするのかはこの際気にしない。


ボグッシャアアァアン!


すぐ近くで爆ぜる様な音が響き渡った。

それと他にも何か色々と騒がしい。


「げふっ!」


地面に転がる僕。

何故かトレースの効果が感じられない。

めっちゃ痛いもん。

でも、今はそんな事気にしてる場合じゃない。

無茶な動きをしてしまった。

大幅にダムの決壊が近づいてしまった。

急がなければ。


「お、おい有痢!」


背後から聞こえる声に、構う余裕がある訳がない。

僕は無視して、さっき見たトイレに向かって走っていった。

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