おにぃじゃねえよ!鬼だよ!
二年半の時を経て、再開。
ガタゴト・・・ガタゴト・・・ガタッ!
「いでっ」
ひときわ大きな振動に体が跳ねあがり、その衝撃で目を覚ます。
「はっ!ここは・・・知らない天井だ・・・」
内心言ってやった!ふぅー!とか思っている。
実際には天井じゃなくてもだ・・・。
言いたかったセリフランキングTOP10には入るかもしれない名セリフである。
「起きたか、坊主」
重く低いその声に振り向いた先にいたのは、
「鬼ぃいいいいいいいいいいい!?」
「おいおい、いくら恩人だからってお兄だなんてそんなになつかれても困るぜ」
「おにぃじゃねえよ!鬼だよ!」
すっとぼけたことを言う鬼?についツッコミを入れてしまう。
鬼というのは第一印象というか、ぱっとみそんな印象を受けた為である。
がっしりとした体格に、太い首、その上に乗った頭はこれまたいかつい風貌で、ぼさぼさのざんばらの赤髪がこれまた野性味あふれる印象をさらに倍率どん!といわんばかりに強化している。
「はっ!?・・・僕は美味しくないですよー?」
「がははははは!面白いこと言う坊主だな!・・・焼けば大抵のもんは食えるんだぜ?」
にかっと、おそらく微笑んだのだろう、僕にはその顔が獲物を前にした野獣にしか見えなかったが。
「ひっ」
思わずひきつるような呼気がもれる。
一難去ってまた一難かと、薄人はガクブルする。
「おい、あんまり下らんことしてるなよ」
新たな声に振り向けばそっちは御者台のようで一人の男がいた。
「くくっ、悪いな、つい反応が面白いもんでよ」
状況的に考えればこの人があの時助けてくれた人なのだろうと薄人は思い立つ。
「ごめんなさい、助けてくれた人に対して失礼なことを・・・」
「気にすんな、・・・あんなのに追われてりゃ錯乱するってもんだ」
かかと笑う鬼風の恩人に薄人は名前を名乗る。
「僕は薄人と言います、助けてくれてありがとうございました。」
「おう、おれはライアスだ。ま、気にすんな、お前みたいな坊主が魔物に襲われてりゃ普通は助けるさ」
良い人だー!見た目めっちゃいかついけど!
「ところで・・・さっきあんなのって言ってましたけど僕みたいな一般人からすればそりゃ恐ろしいですけど、ライアスさんみたいな歴戦の戦士!ってひとならゴブリン?なんてひとひねりじゃないんですか?」
「いや、ありゃホモゴブリンていってな。見た目が普通のゴブリンなもんだからよく間違われるんだが・・・ノーマルゴブリンよりワンランク上のゴブリンだ。
歴戦の戦士、もといライアスさんが教えてくれた言葉が耳に入るが、なんとなく違和感があった。
「え、あれってホブゴブリンってやつなんですか?」
「ちげえよ、ホ「ブ」、じゃなくてホ「モ」ゴブリンだ」
・・・聞き間違いじゃなかった―!!何それ、知らない!初めて聞いたよホモゴブリンとか!
そのまま呆然としているとさらに詳しく説明してくれる。
「ゴブリンってのは繁殖力強いのは知ってるか?ゴブリンのメスってのは全体数からすれば非常に少なくてな、それもあってよく他種族のメスをさらってそれを母体にしたりするんだが・・・そうそううまく事が運ぶもんでもねぇ。そしてそれでも数が増えたゴブリンどもは持てあますわけだ。性欲を」
いやだ、聞きたくない・・・僕の心が警鐘を鳴らす。
「そして奴らは進化したのさ!オス同士でもいいやと!」
「いやあああああああああああああ!!!?」
「がははははははははははは!!!!」
ほもぉ