プロローグ
はじめましての人は初めまして。
そうでない人はごめんなさい。前作っぽいものは今後更新は不明です。
キーンコーンカーンコーン。
学校の鐘がなっている中、下校する少年少女。
その中の一人である少年がひとり、にやにやしながら歩いていた。
「ああ、早く帰って続き読まないとな!」
少年は学校の休み時間に読んでいたライトノベルの続きが気になり、顔がにやけていた。
少年の周囲は少々空間があるが・・・
「やっぱりファンタジーものはいいよなー、夢があるよ、うん」
最近のお気に入りである作品はありがちではあるが異世界に転生、または転移するものである、その世界で現代の知識を使い、様々な世界を生き抜いていくものはいわゆるオタク趣味な少年にとっては憧れであった。
複数の作品を読み漁っているが、最近特にお気に入りの新刊が本日発売したのである。
本来であれば学校の帰りに買っていくはずであるが、なじみの商店街の本屋に無理を言って朝早くに駆け込み、売ってもらったのである。
授業中に読んだりはしない、何故なら没収なんてされた日には絶望しかないからである。
もう一冊買うなどということはできない。
ただでさえ、こういった作品を読むようになってから書籍代がかさみ、親にねだっておこづかいを増やしてもらっているのだ。
もちろんただでおこづかいを増やしてくれるわけではないが。
家事の手伝いをそこそこすることで、多少のわがままを許してもらっている。
家はもうすぐ、というところで信号に足止めをされる少年は、多少のいら立ちを覚えながらも足踏みをして信号が青になるのを待つ。
「はやく、はやく・・・!」
あまり車の通りがないところではあるが、生来の気の弱さか信号を無視してわたることはない少年。
しかし普段ならばいざ知らず、今はお気に入りのライトノベルの続きが気になって仕方がない。
「今日くらいいいよね・・・」
いつもなら、そんなことはしない。
でも、と、こういう時に普段しないことをすると罰が当たるというのか車にはねられ、というのがよくある転生ものの作品のテンプレである。
ちょっとだけなら、と軽度ではあるがある種の興奮状態にある少年は普段しないことをしてしまう。
しかし小心者たる所以か右を見て左を見て、また右を見て左を見て・・・しっかりと車が来ないことを確認してから一歩を踏み出した。
その時である。
信号が青に変わったのだ!
「あ、左右気にして信号見てなかった。ま、テンプレなんてそう起きないよな」
言いようのない恥ずかしさを感じながら一人誰ともなくつぶやく。
そのままいつも通りに横断歩道を渡り、帰路に着く。
我が家である一戸建ての見慣れたものが見えてくる。
ここまでくると自然と足は早まり、早歩き、そして小走りになり家の前まで進む。
「玄関ついたら速攻靴脱いで、自分の部屋まで駆け上がるんだ!」
割とどうでもいいことに力を入れる少年。
わずか数分の誤差の範囲の時間を惜しみ、靴を反脱ぎの状態で玄関に駆け込んだ。
足元を確認しつつもはやる気持ちを隠せず靴を脱ぎ家に上がろうと顔を上げる。
「は・・・?」
玄関をくぐり、見慣れた我が家に入った、はずだった。
足元を確認した時も視界の隅に備え付けの下駄箱も視野の中にあった。
しかし、だ。
顔を上げた瞬間、言い知れぬふわっとした感覚そして視界には何もかもが見慣れぬ景色。
草原である。
さらに言えば一面の、である。
右を見ても左をを見ても草原である。
「どこよここぉ・・・」
なぜかちょっとオネェ言葉になりつつも少年は茫然と、ただつぶやいた。