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51 ウシの親子、つかまえました

 『吸収』の奇跡があれば、牧場の動物が楽に捕まえられるかも……!?


 思い立ったボクは、さっそく次のターゲットを決めることにした。

 ウマはもうじゅうぶんにいるから、あとはウシとブタだ。


 ウシは野生だとかなり凶暴そうだし、ブタも要はイノシシだから捕まえるのは大変そう。

 想像でしかないけど、ウシのほうが大変そうだから……ウシを狙ってみようか。


 大きいほうのウシが『吸収』で捕まえられるなら、それより小さいブタはもっと楽に捕まえられるだろうって考えたんだ。


 よし……ウシにしよう!


 ボクはさっそくホコラに戻って、ウシのいる場所を探してみることにした。

 えーっと、ウシの祖先ってたしか……『オーロックス』っていうんだよね。


 ウマみたいにでっかいんだけど、さらにでっかいのになるとクマくらいあるんだ。

 それにものすごい力と立派なツノがあって、怒らせると怖いらしい。


 普通に捕まえようとすると、かなり厄介な相手なのは間違いない。

 でも『吸収』で吸い上げられるなら、無傷で捕まえることができそうな気がする。


 たしかウシって、ウマとおなじで暑いのが苦手だから……このあたりにいるんじゃないかな?


 天空石の地図で探してみると、すぐに見つけられた。

 それもかなり近くだ。ここから南に行くとヒツジを捕まえた山があるんだけど、その手前の高原にいるようだ。


 よし……さっそく行ってみよう……!


 ちょうど『放出』と『吸収』の奇跡を試すために天空城は空に浮いていたので、そのまま南に向かって移動させた。


  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


 山に向かってゆるやかな傾斜になっている草原。

 ぽつぽつと針葉樹の生えた緑色の坂を、ボクは見下ろしていた。


 あの木はカラマツか何かかな?

 それにこのあたりは冬になると、雪が積もるのかなぁ?

 だったらスキーとかできたりしないかなぁ?


 なんてことを考えながら、天空城の手すりから下のほうを覗き込んでいると……さっそくオーロックスを見つけた。

 しかもちょうどいいことに、群れを作ってない一匹だけのオーロックス。


 試してみるにはちょうどいい相手だ……!

 ボクはしめしめと思いながら、オーバーオールのポケットからスマート天空石を取り出す。


 奇跡ツリーから『吸収』を選び、すぐ真下で草を食べているオーロックスを選択した。


 ……パッ! と光に照らされたオーロックスは、何事かと上を見上げている。

 わずかに身体浮いたのでビックリして、ブモーブモー! といななきながら暴れだした。


 よし、このまま天空城まで引き上げられれば……!

 と思ったんだけど、いつまで待ってもあがってくる様子がない。


 とうとう吸収の光は消えてしまい、オーロックスは着地、そのまま脇目もふらずに走り去ってしまった。


 ……ああ……ダメだったかぁ……。


 ボクは釣り糸が切れてしまった釣り人のように、逃げていく獲物の背中を見送る。

 どうやら吸い上げる力が足りなかったようだ。


 たしかオーロックスって小さいのでも500キロ、大きいのになると1トンはあるって本で読んだ。

 さすがに神様の奇跡でも、そんなに重いのは持ち上げられないのかなぁ……。


 うーん、どうしようか……。と考え込んでいると、


「どうしたのソラ? ウンウン唸ったりして」


 背後からアンジュさんの声がした。


「あ……アンジュさん、オーロックス……ウシを『吸収』の奇跡で捕まえようとしたんだけど、重くて持ち上がらなかったんだ」


 アンジュさんは神様学校を出ているらしいから、何か知ってるかなと思って相談してみる。

 するとアンジュさんはフフンと鼻を鳴らして、


「なんだぁ、そんなこと? ……どうすればいいか、教えてあげよっか?」


 思わせぶりにウインクしてきた。

 ボクは一も二もなくアンジュさんにすがりつく。


「やっぱり知ってるんだ! 教えて教えて!」


「どーしよっかなー、教えてあげよっかなー?」


「ああん、もう! 教えてよぉ!」


 ボクはもどかしくなってピョンピョン跳ねたんだけど、アンジュさんはそれが嬉しいようで、ニコニコしながらボクの頭を撫でてきた。


「ああっ……こうしてるとソラも、ちっちゃい子供みたい……! かわいいかわいい……!」


「ええっ、ボクは子供だよ!? それよりも教えてよぉ! どうすればウシを捕まえられるの!?」


 アンジュさんはめったにボクの頭を撫でてくれないんだけど、なぜかこの時ばかりはラヴィさんみたいにたくさん撫でてくれた。

 それはそれで嬉しかったんだけど……それよりもボクはウシの捕まえ方が知りたくてしょうがなかった。


 しばらくせがんでようやく、アンジュさんは教えてくれる。


「『吸収』の奇跡のポイントが多ければ多いほど、重い物も持ち上げられるようになるよ。その気になれば生えている木だって引っこ抜くことができるんだから」


「そうなんだ! ありがとうアンジュさん!」


 ボクはアンジュさんの身体からサッと離れて、スマート天空石を操作する。

 奇跡ツリーを開き、『吸収』に1ポイントを振った。


 よし……! これでもう一度試してみよう……!


「あ、ソラ、あそこにウシがいるよ!」


 アンジュさんが指さす方向に向かって天空城を移動させる。

 次に見つけたのは、オーロックスの親子だった。


 お父さんらしき大きなオーロックスと、お母さんらしき普通のオーロックス。

 そのまわりには小さなオーロックスたちがいて、お父さんに舐めてもらっていたり、お母さんのお乳を飲んだりしている。


 ボクはこのまま『吸収』を使っていいものか、悩んでしまった。


「どうしたのソラ? 吸い上げないの?」


「……うーん、2ポイントで親子を吸い上げられるかなぁ?」


「別にみんな吸い上げなくても、大きいのだけ吸い上げればいいじゃない」


「それはちょっと……子供が逃げ出しちゃったりしたら、お父さんお母さんと離れ離れになっちゃうかもしれないし……できれは親子みんなで牧場に来てほしいんだ」


「なら、もう1ポイント振ってみたら? 3ポイントあればあのウシたちぜんぶ吸い上げられると思うよ。でも、奇跡ポイントがもったいない気もするけど……」


「そうなんだ……。よし……わかった!」


 ボクは迷わずスマート天空石を操作し、『吸収』にもう1ポイント振った。


 オーロックスのお父さんお母さん、または子供だけを吸収するのはボクには考えられなかった。

 親子揃って牧場に来てもらえば、みんな寂しくないし……それに牧場に子供がいれば、世話のしかたも覚えられるかもしれないと思ったからだ。


「『吸収』の奇跡って、ポイントあたりで持ち上げられる重さが決まってるんだって。3ポイントあれば、あのウシたちぜんぶ吸い上げられるんじゃないかな」


 アンジュさんのアドバイスに従い、ボクは『吸収』の奇跡画面でオーロックスの親子をみんなタッチしてみた。


 大量のホタルが地上に落ちていくみたいにゆっくりと、あたたかな光が地上に降り注ぐ。

 『吸収』が1ポイントのときは目に痛いような光だったんだけど……ポイントを多く振ったせいなのか、やさしい光になっていた。


 それに、光を浴びるオーロックスの親子も驚いていない。

 お父さんお母さんは春の日差しを浴びているかのような穏やかな表情、子供たちは光に気づく様子もなく、お乳に夢中。


 やがて……牧場の一角に、オーロックスの親子が転送されてきた。

 天空城の庭の効果なのか……空の上に連れてこられたというのに、まるで我が家に帰ってきたみたいに馴染んでいる。


「わあーっ! ウシだぁーっ! ウシウシ! ウッシッシ!」


 さっそくオーロックス親子に挨拶に向かうアンジュさん。

 ボクも我慢できなくなって、アンジュさんの後を追う。


 子供がいるときに近づいたら危ないんじゃないか……と思ったんだけど、近づいてもオーロックスたちは警戒すらしなかった。


 ボクは初めて見るウシたちを触りまくる。

 お父さんウシの立派なツノ、子供たちの小さな身体……そしてお母さんウシの……!


 お母さんウシのお腹から飛び出した、いくつもの小さな突起を見て……ボクは大事なことに気づく。


 ……そう、お乳だ!

 お母さんウシがいるということは、お乳……牛乳が飲めるんだ……!


 今すぐに飲みたいっ……! 我慢できなくなったボクは、ジャラシを振られたポポみたいに駆け出した。

 柵を乗り越え、家の台所に飛び込み……洗い物をしていたラヴィさんに向かって叫んだ。


「ラヴィさんっ! コップをちょうだい!」

■■■奇跡ツリー■■■(現在の神様レベル:29)


 今回は『吸収』に3ポイントを割り振りました。

 括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


 ●天空城の奇跡

  高度

   (1) LV1 高度アップ … 天空城をさらに高く飛ばせる

   (0) LV2 天空界   … 「天空界」まで飛ばせるようになる

   (0) LV3 神聖界   … 「神聖界」まで飛ばせるようになる

  速度

   (3) LV1 速度アップ … 天空城の移動速度があがる

   (1) LV2 高速移動  … 高速移動ができる

   (0) LV3 瞬間移動  … 瞬間移動ができる

  流脈

   (1) LV1 消費減少  … 奇跡力の消費を抑える

   (1) LV2 放出    … 天空城から物体を放出できる

   (3) LV3 吸収    … 天空城から物体を吸収できる

  障壁

   (0) LV1 防御障壁  … 天空城を守るバリアを張る

   (0) LV2 水中潜行  … 水中に潜れるようになる

   (0) LV3 地中潜行  … 地中に潜れるようになる


 ●大地の奇跡

  操地

   (0) LV1 隆起    … 地面を隆起させる

   (0) LV2 陥没    … 地面を陥没させる

   (0) LV3 ???   … ???

  噴出

   (0) LV1 噴水    … 水を噴出させる

   (0) LV2 噴火    … 火を噴出させる

   (0) LV3 ???   … ???

  地動

   (0) LV1 地震    … 地震を起こす

   (0) LV2 地割れ   … 地割れを起こす

   (0) LV3 ???   … ???


 ●神通の奇跡

  神の手

   (1) LV1 ジオグラフ … 大地を切り取る

   (1) LV2 ウェポン  … 武器を出す

   (0) LV3 マジック  … 天空城の奇跡を手から出せる

  神の叡智

   (2) LV1 現界の声  … この世界の声を聞く

   (1) LV2 異界の声  … 異界からの声を聞く

   (1) LV3 天啓    … 人間に知恵を授ける


 ●創造の奇跡

  魔法生物

   (4) LV1 ゴーレム  … ゴーレムを創る

   (1) LV2 小人成長  … 小人を人間にする

   (1) LV3 使徒成長  … 人間を使徒にする

  有機生物

   (1) LV1 絶滅    … 生命を絶滅させる

   (1) LV2 成長促進  … 生命の成長を早める

   (0) LV3 生殖    … 生命を親にする

  回復

   (1) LV1 治癒    … 病気や怪我を治す

   (0) LV2 死者蘇生  … 死んだものを蘇らせる

   (0) LV3 死者転生  … 異界から死者を蘇らせる


 ●水勢の奇跡

  波浪

   (0) LV1 小波    … 小さな波を起こす

   (0) LV2 大波    … 大きな波を起こす

   (0) LV3 津波    … 津波を起こす

  水かさ

   (1) LV1 減水    … 水を減らす

   (1) LV2 増水    … 水を増やす

   (1) LV3 海割り   … 水を一時的に割る

  操水

   (0) LV1 霧散    … 霧を作り出す

   (0) LV2 噴水    … 水を噴出させる

   (0) LV3 渦     … 渦を作り出す

  水中

   (0) LV1 呼吸    … 水中で呼吸できるようになる

   (0) LV2 浮力増   … 水中の浮力を増やす

   (0) LV3 浮力減   … 水中の浮力を減らす


 ●天候の奇跡

  雲

   (1) LV1 雲     … 家の煙突から雲を出せる

   (0) LV2 虹     … 虹を出せる

   (0) LV3 ???   … ???

  風

   (0) LV1 風     … 風を起こせる

   (0) LV2 竜巻    … 竜巻を起こせる

   (0) LV3 ???   … ???

  雨

   (1) LV1 雨     … 雨を降らせる

   (0) LV2 洪水    … 洪水を起こす

   (0) LV3 ???   … ???

  雪

   (0) LV1 雪     … 雪を降らせる

   (0) LV2 大雹    … 大きな雹を降らせる

   (0) LV3 ???   … ???

  雷

   (1) LV1 雷     … 雷を落とす

   (0) LV2 導雷    … 目標に誘導する雷を落とす

   (0) LV3 ???   … ???

  火

   (0) LV1 火の粉   … 火の粉を降らせる

   (0) LV2 火の玉   … 火の玉を降らせる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●太陽の奇跡

  気温上昇

   (0) LV1 気温上昇  … 気温を上げる

   (0) LV2 猛暑    … 猛暑にする

   (0) LV3 ???   … ???

  気温下降

   (0) LV1 気温下降  … 気温を下げる

   (0) LV2 寒波    … 寒波を起こす

   (0) LV3 ???   … ???

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