48 すごいウマ、見つけました
白猫ポポに導かれ、天空城の牧場に入ったターパンの群れ。
ウマたちはもう暴れることもなく、常歩でポポを楽しそうに追い回している。
しかし途中でポポが犬に変わったので、すぐに興味を失ってくつろぎ始めた。
ボクはそんなウマたちを眺めながら、心地よい達成感に浸る。
「や……やったぁ……! ついにウマを手にいれたぞ……! これもフルールとポポのおかげだよ! ありがとう!」
ボクは寄ってきたポポの身体をつかまえて、労るようによしよしと撫でまわす。
ウマの唾液でベタベタだけど、気にしない気にしない。
すると、隣りにいたフルールがなぜかしゃがみこんで、ボクに目線を合わせていた。
フルールは障害物でもない限り姿勢を変えたりしないので、何もないところでしゃがむなんて珍しい。
「……どうしたの、フルール?」
「その、ポポの体表を手で摩擦しているのは、褒揚の一種だと判断しました。正しいですか?」
「褒揚っていうか……いつもみたいに撫でてるだけだよ。活躍してもしなくても、ポポはかわいいし」
「そうですか」
素っ気ない返事のフルール。
それっきり黙り込んだまま、ボクをじーっと見つめている。
もしかして、撫でてほしいのかな?
そう思ったボクは、ポポを撫でていたように……フルールの頭に手を置いて、わしゃわしゃしてみた。
髪を模した黒い花を乱されても、フルールは嫌がる様子も喜ぶ様子もなく、されるがままになっている。
「どう? フルール?」
「何の感慨もありません」
「そう……でもやってるうちに慣れるかも」
「承諾しました」
ボクは菊人形みたいなフルールをしばらく撫でたあと、他にすることもなかったので、みんなの様子を確かめに森に行ってみることにした。
森は普段、多くのウマたちが行き来しているのか、かなり広い獣道ができていた。
歩きやすい道をボク、フルール、ポポの三人で進んでいく。
すると……道端にあるリンゴの木のそばで、佇んでいるウマを見つけた。
ウマは首にツタを巻かれていて、そばにはノボルさんとクルミさんがいる。
きっと、ふたりが捕まえたんだろう。
ノボルさんとクルミさんは同時にボクたちに気づくと、嬉しそうに駆け寄ってきた。
「ソラ様! 見てください! ソラ様にお教えいただいたやり方で、ウマをつかまえました!」
「いま、リンゴをあげて仲良くなっているところなんです!」
ツタで木に繋がれているウマは大人しく、すでに飼い犬みたいになっていた。
もうだいぶ仲良しみたいで、クルミさんの手から直接リンゴをムシャムシャ食べている。
それはボクにとって憧れのひとつでもあったので、すごく羨ましくなった。
動物に手で食べ物をあげるのって、すごく信頼されてる感じがして、ずっとやってみたかったんだ……!
「わあっ! すごいすごい! ボクにもやらせて!」
ボクはノボルさんからリンゴを受け取り、背伸びをしながらウマの口にそっと運んでみた。
すると、シャリシャリとおいしそうにかじってくれたんだ……!
「か……かわいいっ……! すっごくかわいい……! よくここまで仲良くなれたね! ノボルさんとクルミさん、すごいよ……!」
ノボルさんとクルミさんは、お互いに身体を寄せ合って照れていた。
「あの……ノボルくんが木に登って、カッコよく捕まえてくれたから……」
「いや……そんなの、たいしたことないよ。それよりも、クルミがやさしかったから、ウマがこんなに懐いてくれたんだ……」
なぜか、ふたりしてモジモジしている。
「ノボルさんが捕まえて、クルミさんが懐かせて……ふたりがいたからできたんだね! やっぱりふたりは……本当にすごいや!」
するとふたりは嬉しそうに見つめあったあと、ボクのほうを向いて「はいっ!」と元気に返事をしてくれた。
ふと、ボクの後ろにいたフルールが口を挟んでくる。
「……ノボルとクルミに対しては、褒揚はないのですか?」
「褒揚って?」
「しゃがみこませて、頭を撫でてあげることです」
「いや、あれは別に褒揚ってわけじゃ……」
ボクは否定したんだけど、目の前にいたノボルさんとクルミさんは期待に満ちた目でしゃがみこみ、祈りのポーズをとった。
どうやら撫でてほしそうだったので、ボクは右手をノボルさんの頭に、左手をクルミさんの頭に置く。
するとふたりは教会で誓いをたてるかのように……幸せそうに瞼を閉じた。
無言で撫でるのも何だったので、ボクは「えらいえらい」と言いながら髪の毛を触る。
ノボルさんの髪はツンツンで、クルミさんの髪はサラサラだった。
「「……ありがとうございます……ソラ様……!」」
感激した様子で、ボクの手に身を任せるふたり。
ボクに撫でられるのが、そんなにいいのかなぁ……? と不思議だったけど、そういえばボクもラヴィさんに撫でられるのが大好きだったんだ。
ラヴィさんの手でやさしくナデナデされると、身体がとろけるくらいに気持ちいい。
ふたりもうっとりした顔をしているので、たぶんボクと同じことを感じているのかもしれない。
ボクは褒揚を終えたあと、いったんノボルさんとクルミさんに別れを告げた。
アンジュさんとラヴィさんコンビを探しに、さらに森の奥へと進むことにしたんだ。
ボクらは森林浴でもするみたいに、のびのびと森の中を歩いていく。
すると……急に視界が開け、思わずボクは目を見張った。
草原の真ん中に大きな樹があって、その根元にはラヴィさんが座っている。
太陽の光を受けて、緑色の木漏れ日にキラキラと輝くその姿は、一枚の絵画みたいにキレイだった。
でも……ラヴィさんの膝元にはもっとすごいモノがいたので、もはや想像を絶するほどの幻想的な光景になっていたんだ……!
そのすごいモノとは何かというと、白いウマ……!
それも普通の白さのウマじゃない。まるで石膏像みたいな、まばゆい白さ……!
ボクはあまりの美しさに見とれてしまい、純白の全身を舐め回すように眺めた。
絹のようなしっぽ、黒曜石のような蹄、引き締まった脚……芸術品みたいに完璧なフォルム……!
顔もりりしい。でも瞳はクリクリしてて、あどけない感じで……。
たてがみは銀色で、そして額には……なんだろう、アレ……?
白いウマの額には、なにかが生えていた。
確かめるために近づいていく途中、それはドリルのような角であることがわかる。
「ゆっ……一角獣……!?」
ボクは驚きのあまり、つい叫んでしまった。
同時にハッと顔をあげる、ラヴィさんとユニコーン。
ユニコーンはラヴィさんの膝を枕にしてたんだけど、ボクの姿に警戒して起き上がろうとしている。
「あっ……大丈夫よ、あの子は神様のソラちゃん。とってもいい子だから、怖がらなくて大丈夫よ」
ラヴィさんから顔をやさしく撫でつけられ、再び寝そべるユニコーン。
ユニコーンがパカッと口を開けたので、微笑みながらリンゴを食べさせてあげるラヴィさん。
女の子の膝上で寝ながら、リンゴを食べさせてもらうなんて……まるで王様みたいだ……!
ボクは王様と、そのお妃様みたいなふたりに……おそるおそる近づきながら尋ねた。
「ら……ラヴィさん……その子、どうしたの……?」
「リンゴ探しをしていたんだけど、ちょっと疲れちゃって……この木の下でひと休みしていたら、この子が来たの。この子、ユニコーンちゃんていうんですって。アンジュちゃんが教えてくれたわ」
やっぱり……! 本当にユニコーンなんだ……!
ユニコーンって、空想上の生き物はずなんだけど……この世界じゃ本当にいるんだ……!
モンスターやリヴァイアサンがいるような世界じゃ、当たり前なのかもしれない……!
いや、それでも珍しい生き物には変わりがないはず。
ボクは幻のユニコーンに触ってみたくてしょうがなかったんだんだけど、ふとあることを思い出し、足を止めた。
そういえば……ユニコーンって『清らかな乙女』以外には心を許さないんじゃなかったっけ……?
たしか男の子や、清らかじゃない女の子が近づくと、怒り狂ってその角で突き殺すって本で読んだことがある……!
本でその説明を読んだボクは、女の子の清らかさの区別がよくわからなくて、首をかしげた覚えがある。
たぶん……お風呂に入って清潔にしてるとか、してないとか……そんなのだとは思うけど……。
その基準だと、ボクは毎日ラヴィさんと水浴びをしてるから、合格のはずなんだけど……でも、ボクは男の子だからなぁ……。
「近づかないのですか?」
と背後から不意にフルールが尋ねてきた。
ポポはすでにユニコーンの元におり、ふんふんとニオイを嗅いでいる。
ボクはどうしようか、少し悩んだんだけど……思いきって近づいてみることにした。
だって、触ってみたくてたまらなかったし……もし怒っても、一生懸命謝れば許してくれるんじゃないかと思ったから……。
ボクは泥棒みたいにそーっと忍び足でユニコーンに近づくと、しゃがみこんでそっと頬に触れてみた。
「わぁ……! ツヤツヤだ……!」
見た目の美しさにたがわぬ触り心地に、ボクが感激していると……ふと、ユニコーンと目が合った。
銀色の長いまつ毛に覆われた、地球みたいに青くて、おおきな瞳。
ボクは思わず、吸い込まれそうになっちゃったけど……確信した。
こんなキレイな瞳のウマが、お風呂に入ってないくらいで怒るわけがない、と……!
「えへへ……こんにちは!」
ボクがニコッと笑いかけると、ユニコーンは穏やかな表情で、再び瞼を閉じた。
■■■奇跡ツリー■■■(現在の神様レベル:26)
今回は割り振ったポイントはありません。未使用ポイントが3あります。
括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。
●大地の奇跡
操地
(0) LV1 隆起 … 地面を隆起させる
(0) LV2 陥没 … 地面を陥没させる
(0) LV3 ??? … ???
噴出
(0) LV1 噴水 … 水を噴出させる
(0) LV2 噴火 … 火を噴出させる
(0) LV3 ??? … ???
地動
(0) LV1 地震 … 地震を起こす
(0) LV2 地割れ … 地割れを起こす
(0) LV3 ??? … ???
●神通の奇跡
神の手
(1) LV1 ジオグラフ … 大地を切り取る
(1) LV2 ウェポン … 武器を出す
(0) LV3 マジック … 天空城の奇跡を手から出せる
神の叡智
(2) LV1 現界の声 … この世界の声を聞く
(1) LV2 異界の声 … 異界からの声を聞く
(1) LV3 天啓 … 人間に知恵を授ける
●天空城の奇跡
高度
(1) LV1 高度アップ … 天空城をさらに高く飛ばせる
(0) LV2 天空界 … 「天空界」まで飛ばせるようになる
(0) LV3 ??? … ???
速度
(3) LV1 速度アップ … 天空城の移動速度があがる
(1) LV2 高速移動 … 高速移動ができる
(0) LV3 ??? … ???
流脈
(0) LV1 消費減少 … 奇跡力の消費を抑える
(0) LV2 放出 … 天空城から物体を放出できる
(0) LV3 ??? … ???
障壁
(0) LV1 防御障壁 … 天空城を守るバリアを張る
(0) LV2 水中潜行 … 水中に潜れるようになる
(0) LV3 ??? … ???
●創造の奇跡
魔法生物
(4) LV1 ゴーレム … ゴーレムを創る
(1) LV2 小人成長 … 小人を人間にする
(1) LV3 使徒成長 … 人間を使徒にする
有機生物
(1) LV1 絶滅 … 生命を絶滅させる
(1) LV2 成長促進 … 生命の成長を早める
(0) LV3 生殖 … 生命を親にする
回復
(1) LV1 治癒 … 病気や怪我を治す
(0) LV2 死者蘇生 … 死んだものを蘇らせる
(0) LV3 死者転生 … 異界から死者を蘇らせる
●水勢の奇跡
波浪
(0) LV1 小波 … 小さな波を起こす
(0) LV2 大波 … 大きな波を起こす
(0) LV3 津波 … 津波を起こす
水かさ
(1) LV1 減水 … 水を減らす
(1) LV2 増水 … 水を増やす
(1) LV3 海割り … 水を一時的に割る
操水
(0) LV1 霧散 … 霧を作り出す
(0) LV2 噴水 … 水を噴出させる
(0) LV3 渦 … 渦を作り出す
水中
(0) LV1 呼吸 … 水中で呼吸できるようになる
(0) LV2 浮力増 … 水中の浮力を増やす
(0) LV3 浮力減 … 水中の浮力を減らす
●天候の奇跡
雲
(1) LV1 雲 … 家の煙突から雲を出せる
(0) LV2 虹 … 虹を出せる
(0) LV3 ??? … ???
風
(0) LV1 風 … 風を起こせる
(0) LV2 竜巻 … 竜巻を起こせる
(0) LV3 ??? … ???
雨
(1) LV1 雨 … 雨を降らせる
(0) LV2 洪水 … 洪水を起こす
(0) LV3 ??? … ???
雪
(0) LV1 雪 … 雪を降らせる
(0) LV2 大雹 … 大きな雹を降らせる
(0) LV3 ??? … ???
雷
(1) LV1 雷 … 雷を落とす
(0) LV2 導雷 … 目標に誘導する雷を落とす
(0) LV3 ??? … ???
火
(0) LV1 火の粉 … 火の粉を降らせる
(0) LV2 火の玉 … 火の玉を降らせる
(0) LV3 ??? … ???
●太陽の奇跡
気温上昇
(0) LV1 気温上昇 … 気温を上げる
(0) LV2 猛暑 … 猛暑にする
(0) LV3 ??? … ???
気温下降
(0) LV1 気温下降 … 気温を下げる
(0) LV2 寒波 … 寒波を起こす
(0) LV3 ??? … ???




