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42 ヒツジを探して、山に向かいます

 ニワトリのエサについて、ひたすら悩んでいると……アンジュさんがアドバイスをくれた。


「『天啓』の奇跡があれば、離れていても人間に声を届けられるから、お供え物にエサをリクエストすればいいんじゃない?」


 その言葉こそが、ボクにとってはまさに『天啓』だった。


「えっ、そんなことできるの?」


「うん。でも会話ができるわけじゃなくて、ソラの声を一方的に届けるだけだけどね」


 それでも、じゅうぶんだ……! と思ったボクは、 残っていた奇跡ポイントをすべて費やし、『神通の奇跡』から『異界の声』と『天啓』を取得する。


 『天啓』はアンジュさんの教えてくれたとおり、距離を無視して人間の頭の中に直接語りかけることができる奇跡だ。

 本来は人間に知恵を授けるために使うものらしいんだけど……今はこっちが授けてほしいものがあるんだよね。


 覚えたばかりの『天啓』を、さっそく使ってみることにした。


 スマート天空石の奇跡一覧から、『天啓』を選ぶ。

 すると連絡先の一覧みたいに、ラヴィさんやアンジュさん、そして集落のみんなの顔と名前がずらずらと出てきた。


 まずためしに『クルミ』という名前をタッチしてみる。


 クルミさんはボクから離れた所にいて、天空城の庭でちょこんと正座をしていた。

 ヒザの上で猫のポポが丸くなっている。


 ヒザをポポのお昼寝スペースとして占領されているようだ。

 神獣のおやすみを邪魔しては失礼にあたると、緊張した面持ちで身を固くしている。


 スマート天空石は通話の画面みたいなのに切り替わっていたので、これで呼びかければいいのかな? と思い、声を出してみた。


「あー、あー、クルミさん、聞えますか?」


 すると視界の隅にいたクルミさんが、「ひゃんっ!?」と耳に息を吹きかけられたみたいな悲鳴とともにひっくり返っていた。

 その勢いで、ポポはシーソーで射ち出されたみたいに宙を舞っている。


「あっあっあっあっ!? す、すみません、ポポ様っ! 急に頭の中に、ソラ様のお声が響いて……!?」


 掃除中に高級なツボを落としてしまったメイドさんみたいに、命がけでポポを受けとめるクルミさん。

 ぐずる赤ちゃんをなだめるみたいに、よしよしと胸に抱いている。


 しかしポポはこんな事では怒らない。気持ちよさそうに目を細めながら、ゴロゴロと喉を鳴らしていた。


 でもクルミさんはポポの機嫌をとるのに必死で、でもでも脳内のボクの声に戸惑っているようで、今までに見たこともないような顔でおろおろしている。


 ボクはいたたまれなくなり、クルミさんの元に駆け寄って謝った。


「……ごめんクルミさん! 驚かせるつもりはなかったんだ。ちょっと『天啓』をためしてみたくって……!」


「あっ……ソラ様のお力だったんですね……! 頭の中に直接お言葉をかけることができるだなんて……さすがです……! そして最初のお言葉をくださるだなんて……身に余る光栄です……!」


 クルミさんはボクのしたことを不快に思うどころか、感動に打ち震える始末だった。

 うやうやしく膝の上にポポを戻すと、深々と頭を下げ、祈りのポーズをとる。


 ボクは、そんなにかしこまらなくても……と思ったけど、『天啓』の効果はわかったからいいか、と気をとりなおす。


 それからボクは改めて、ふたつの集落のリーダーたちに『天啓』を送ってみた。

 『ニワトリのエサにするので、木の実とかサツマイモの葉っぱとかをお供えして!』と語りかける。


 それからしばらくして……リーダーたちの驚きの声とともに、ありったけの木の実やサツマイモの葉っぱが天空城に現れた。


 ……やった! ボクの思いはちゃんと通じたんだ……!

 よく食卓にも並ぶけど、サツマイモの葉っぱがこんなに嬉しかったのは初めてだ。


 ボクはノボルさんとクルミさんに、ニワトリに定期的にエサやりをするようにお願いした。

 そしてニワトリのエサ問題が解決したので、次の家畜を集めることにする。


 次のターゲットはヒツジだ。

 ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジとで迷ったんだけど……この中ではいちばん気性のおとなしそうなヒツジを捕まえることにした。


 それにヒツジからとれる毛は、動物の毛皮とあわせて役に立つはずなんだ。


 ボクはホコラの天空石に移動して、ヒツジがいそうな場所を地図で調べてみた。


 野生のヒツジといえば……アルガリとかムフロンだよね。動物図鑑で読んだんだ。


 アルガリは身体が大きくて捕まえるのも大変そうなので、小さいムフロンを探してみよう。

 たしかムフロンは、外敵から身を守るために高い山の上に住んでるんだ。


 ボクは地図から高い山をしぼりこみ、ひとつひとつアップにして探してみる。

 すると……このジャングルに来る途中にあった、高い山にいることがわかった。


 なんだ、来る途中にいたんだ……なら、ヒツジが先でもよかったかなぁ。

 なんて思いながら、ボクは天空城を北に飛ばす。


 そして庭の端に立ち、うっそうと茂るジャングルを空から見送った。

 息が詰まるような湿気が消え、身体にからみつくような空気が少しずつ乾いていく。


 それはそれで、なんとなく寂しい気がした。


  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


 それから数日後、ボクらは横たわる山脈の頂上を見下ろしていた。


 雪は積もっていないものの、寒々とした岩山。

 中腹のあたりからコケが張り付くようにわずかな緑がはじまり、草原からふもとの森へと繋がっている。


 通り過ぎるときは家の中にこもってやり過ごしたんだけど……やっぱりちょっと寒い。

 ここで過ごすなら、少し着るものがあったほうがいいかもしれない。


 ボクはオーバーオールだからいいんだけど、葉っぱだけのノボルさんやクルミさんは辛いだろう。


 ボクはアンジュさんに頼んで、だいぶ前に獲ったクマの毛皮を使って服を作ってもらうことにした。


 オシャレにはうるさいアンジュさんは大喜びで毛皮にハサミを入れ、テキパキと服を作ってくれる。

 まだ針と糸はないので、ニカワでくっつけ合わせただけだけど……思ったより立派な毛皮の上着ができあがった。


 ノボルさんとクルミさんは自分たちにはもったいない、と遠慮してたんだけど「風邪をひいちゃうといけないから、ねっ」とラヴィさんが着せてあげていた。


 それでもクマの毛皮はまだあったので、ボクとアンジュさんとラヴィさんの分まで服を作ってもらい、みんなで着る。


 みんなでお揃いの服……!

 それに寒さもへっちゃら……!


 ボクはなんだか嬉しくなって、「なんだかみんな、ポポになったみたい!」とフカフカのみんなに抱きついてまわった。


 「うふふ、ソラちゃんもふかふか~!」と抱きしめ返してくれるラヴィさん。

 ノボルさんとクルミさんはボクに抱きつかれると、顔を赤くしてさらにカッカしていた。


「……で、ヒツジはどうやって捕まえるつもりなの?」


 ボクに抱きつかれながら、アンジュさんは言う。

 その方法はすでに考えてあったので、ボクは得意顔であるものを取り出した。


「それはね……コレを使うんだ!」


「それは……ホラ貝!?」


 ヒツジとホラ貝……まるでポポと小判みたいな、全く結びつかない組み合わせに目を白黒させるアンジュさん。


 ボクはホラ貝を説明するついでだからと、みんなを呼び集めて作戦会議をした。


 まず、ターゲットであるムフロンの群れを探し、群れから離れたところに天空城を着地させる。


 そして、犬のポポをメインとして作戦開始。

 ポポはムフロンの群れを、天空城の反対側から挟み込むようにして、追い立てる。


 追い立てられ、天空城の方角に逃げるムフロン。

 天空城の牧場の中に誘い込んだら、扉を閉めて一網打尽……! というわけだ。


 みんなはボクの作戦を、「ほほーぅ」といった感じで聞いていた。

 でもアンジュさんだけはひとり、浮かない顔だ。


「そんなにうまいこと逃げてくれるかなぁ? よそに逃げちゃったらどうするの?」


「その時のために、海の集落に頼んでホラ貝を送ってもらったんだ」


「うーん、それがよくわからないんだけど……そのホラ貝をなにに使うの?」


「それはね……こうやって使うんだ……!」


 ボクはすぅーっと息を吸い込んでから、ホラ貝の端っこを口に含む。


 ……ブオォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーンッ!!!


 船の汽笛のような轟音が、あたりの空気をビリビリと振動させた。


「どう? すごい音でしょ? ポポが後ろから追い立てるんだけど、ルートをそれないように、横からこれで脅かすんだ……!」


 それがボクの『ヒツジ捕獲作戦』の一部始終……!


 でもそれよりも、みんなはホラ貝の音のほうが衝撃的だったのか……毛皮を逆立てるくらいにビックリしていた。

■■■奇跡ツリー■■■(現在の神様レベル:23)


 今回は『異界の声』と『天啓』に1ポイントずつ割り振りました。

 括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


 ●神通の奇跡

  神の手

   (1) LV1 ジオグラフ … 大地を切り取る

   (1) LV2 ウェポン  … 武器を出す

   (0) LV3 マジック  … 天空城の奇跡を手から出せる

  神の叡智

   (2) LV1 現界の声  … この世界の声を聞く

   (1) LV2 異界の声  … 異界からの声を聞く

   (1) LV3 天啓    … 人間に知恵を授ける


 ●天空城の奇跡

  高度

   (1) LV1 高度アップ … 天空城をさらに高く飛ばせる

   (0) LV2 天空界   … 「天空界」まで飛ばせるようになる

   (0) LV3 ???   … ???

  速度

   (3) LV1 速度アップ … 天空城の移動速度があがる

   (1) LV2 高速移動  … 高速移動ができる

   (0) LV3 ???   … ???

  流脈

   (0) LV1 消費減少  … 奇跡力の消費を抑える

   (0) LV2 放出    … 天空城から物体を放出できる

   (0) LV3 ???   … ???

  障壁

   (0) LV1 防御障壁  … 天空城を守るバリアを張る

   (0) LV2 水中潜行  … 水中に潜れるようになる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●創造の奇跡

  魔法生物

   (4) LV1 ゴーレム  … ゴーレムを創る

   (1) LV2 小人成長  … 小人を人間にする

   (1) LV3 使徒成長  … 人間を使徒にする

  有機生物

   (1) LV1 絶滅    … 生命を絶滅させる

   (1) LV2 成長促進  … 生命の成長を早める

   (0) LV3 生殖    … 生命を親にする

  回復

   (1) LV1 治癒    … 病気や怪我を治す

   (0) LV2 死者蘇生  … 死んだものを蘇らせる

   (0) LV3 死者転生  … 異界から死者を蘇らせる


 ●水勢の奇跡

  波浪

   (0) LV1 小波    … 小さな波を起こす

   (0) LV2 大波    … 大きな波を起こす

   (0) LV3 津波    … 津波を起こす

  水かさ

   (1) LV1 減水    … 水を減らす

   (1) LV2 増水    … 水を増やす

   (1) LV3 海割り   … 水を一時的に割る

  操水

   (0) LV1 霧散    … 霧を作り出す

   (0) LV2 噴水    … 水を噴出させる

   (0) LV3 渦     … 渦を作り出す

  水中

   (0) LV1 呼吸    … 水中で呼吸できるようになる

   (0) LV2 浮力増   … 水中の浮力を増やす

   (0) LV3 浮力減   … 水中の浮力を減らす


 ●天候の奇跡

  雲

   (1) LV1 雲     … 家の煙突から雲を出せる

   (0) LV2 虹     … 虹を出せる

   (0) LV3 ???   … ???

  風

   (0) LV1 風     … 風を起こせる

   (0) LV2 竜巻    … 竜巻を起こせる

   (0) LV3 ???   … ???

  雨

   (1) LV1 雨     … 雨を降らせる

   (0) LV2 洪水    … 洪水を起こす

   (0) LV3 ???   … ???

  雪

   (0) LV1 雪     … 雪を降らせる

   (0) LV2 大雹    … 大きな雹を降らせる

   (0) LV3 ???   … ???

  雷

   (1) LV1 雷     … 雷を落とす

   (0) LV2 導雷    … 目標に誘導する雷を落とす

   (0) LV3 ???   … ???

  火

   (0) LV1 火の粉   … 火の粉を降らせる

   (0) LV2 火の玉   … 火の玉を降らせる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●太陽の奇跡

  気温上昇

   (0) LV1 気温上昇  … 気温を上げる

   (0) LV2 猛暑    … 猛暑にする

   (0) LV3 ???   … ???

  気温下降

   (0) LV1 気温下降  … 気温を下げる

   (0) LV2 寒波    … 寒波を起こす

   (0) LV3 ???   … ???

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