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41 たくさんニワトリ、つかまえます

 木々がうっそうと茂る、薄暗いジャングル。

 ボクたちは、屋根のように覆いかぶさる樹冠がぽっかりと空いた場所にいた。


 光が差し込むので明るく、遠目にも見やすいところに土器の罠を設置。

 仕掛けを動かすためのツルを持って、茂みの中に隠れていた。


 土器のそばに道しるべのように撒いた、木の実や昆虫。

 これを辿ってターゲットがおびき寄せられるのを、息を殺してひたすらに待った。


 ジャングルはムシムシしてて、じっとしてても汗が吹き出してくる。

 毛むくじゃらのポポは辛そうで、ぐったりしていたので、待っている間みんなで葉っぱを使って扇いであげた。


 ……しばらくすると、バサバサと羽根を鳴らして一匹のセキショクヤケイがやってきた。


 頭の上にトサカがあるから、あれはオスだ。

 家畜のニワトリに比べると、さすが野生だけあってスリムな身体をしている。


 でもコッコッと鳴きながら、地面の撒き餌をついばむ姿は、生前に動画で見たニワトリにソックリだ。


 ボクらは息をするのも忘れるほどに、セキショクヤケイに見入っていた。

 そして、土器の下に入ってくれるように願った。


 ノボルさんやクルミさんはボクの考えた祈りのポーズをとり、ひたすら祈っている。


 みんなの願いが通じたのか、セキショクヤケイは途中で逃げることもなく……ついに土器の下にあるエサをついばみ始めたんだ……!


 ……いまだっ!!


 ボクは手にしていたツタを、勢いよく引っ張る。


 つっかえ棒が外れ、パタンと倒れた土器がセキショクヤケイを閉じ込める。

 罠にかかったことに気づいたのか、中で激しく暴れはじめた。


 鍋を床に落としたみたいに、土器はガタガタと激しく踊る。

 すごい力で持ち上げてようとしているのか、フチが高く浮き上がっている。


「逃げられちゃう! 上から押さえようっ!」


 ボクは茂みを破るように飛び出す。

 後からみんなも続いた。


 ボクは汗をほとばしらせ、野球のクロスプレーのように土器めがけてヘッドスライディングをする。


 しかし……タッチの差で土器はひっくり返り、セキショクヤケイは飛び立ってしまった。

 「フミャア!」と猫になったポポが追いすがったんだけど、これまた首の皮一枚の、わずかな差で逃してしまう。


 あたり一面、羽毛布団を破いたみたいに大量の羽根を舞い散らし、セキショクヤケイはジャングルの奥へと消えていく。


 セキショクヤケイはニワトリの元になった鳥だけあって、飛ぶのは得意じゃないらしい。

 大空に舞い上がるというよりも、木々を飛び移るようにして逃げていった。


 それにしても……野生のニワトリは予想以上にパワフルだった。

 ボクでもまともに持てないほどの、大きくて重い土器を跳ねのけるだなんて……。


 でも罠が使えるというのはわかったので、ボクはちょっとだけ作戦を変えることにする。


 それから少しして……茂みの中にはボクとクルミさんだけがいた。

 それぞれツタを握っていて、その先にはふたつの土器の罠がある。


 そして……罠のそばにある木の上には、ノボルさんと猫のポポ。


 ノボルさんは木登りが上手だったから、ノボルさんという名前になったらしい。

 ボクはそんなノボルさんにお願いして、木の上に登ってもらったんだ。


 そして猫のポポは、言うまでもなく木登りが得意。


 果実みたいに木にしがみついているこのふたりは、セキショクヤケイが罠にかかったときに上から飛び降り、素早く押さえつける役割だ。


 一応、お互いの罠を邪魔しないように、ふたつの土器の位置はかなり離してある。

 これで、ダブルで捕まえようという作戦だ……!


 新たなる仕掛けをしたボクらは、それぞれの持ち場についてしばらく待ちに入る。

 すると……クルミさんの罠のほうに、セキショクヤケイがやって来た。


 コッコッとエサをついばみ、少しずつ土器に近づいていく。


 さっき取り逃がしたのもそうだったんだけど、罠に対してぜんぜん警戒する様子がない。

 たぶんこのジャングルには、彼らの外敵とかが少なく、油断してるんだと思う。


 リラックスしているセキショクヤケイとは逆に、クルミさんは気の毒なほどに震えていた。

 きっと失敗してはならないと、かなり緊張してるんだろう。


 ボクは彼女を落ち着かせるために、そーっとそばまで行って手を握ってあげた。


「大丈夫。クルミさん、落ち着いて」


「はっ……はひ……!」


 しゃっくりみたいな声で、返事をするクルミさん。


「失敗してもいいから、遊びのつもりでやろうよ」


「あ、遊びだなんて、そんな……! これは、ソラ様から頂いた、神聖なお仕事……!」


「ううん、仕事じゃないよ。ましてや神聖なんかじゃない。今朝やった水かけっこと同じだよ」


「み……水かけっこと、同じ……?」


「そう。あれも涼しくなるのが目的だったけど、楽しかったでしょ? ……ほら、ポポを見てみて、あの時と同じで楽しそうにしてる」


 ボクの指さす方向を、真剣な表情で追いかけるクルミさん。

 木の上では、エサをついばむセキショクヤケイを、らんらんとした瞳で凝視しているポポがいる。


 それがよほどワクワクしているように見えたのか……クルミさんの強張っていた身体から、余計な力が抜けた。


「ほんとだ……ポポ様、すごく楽しそう……!」


「ね? だから、一緒に楽しまないと」


「は……はいっ!」


「あ……! 土器の中に入った! いくよ、クルミさん。……せーのっ!」


 ボクは合図とともに、クルミさんと力を合わせてツルを引っ張った。


「「それっ!!」」


 カタン、と土器がセキショクヤケイを包み込む。


「えーいっ!!」


 同時に、真上にいたノボルさんが飛びかかる。

 ポポは離れた木の上にいたんだけど、我慢できなくなって一緒になって飛び降りていた。


 がばっ! と腹ばいになって、土器を押さえ込むノボルさん。

 その背中にスタッと、ポポが乗った。


 沸騰する鍋みたいに、ゴトゴトと揺れる土器。

 でも、重しがあるおかげでひっくり返されることはない。


「や……やった! 捕まえたっ! 行こっ、クルミさん!」


 ボクはクルミさんの手をとり、茂みを飛び出す。

 ふたりしてお揃いの笑顔で、ノボルさんとポポの元へと向かった。


  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


 捕まえたセキショクヤケイは土器の中で暴れていたけど、しばらくすると大人しくなった。

 逃がさないように土器を少しだけ持ち上げ、木の板を差し入れてフタをする。


 フタをしたらツルで縛って、開かないようにしたら出来上がり。

 ノボルさんとクルミさんに頼んで、天空城へと持って帰ってもらう。


 天空城にあるニワトリ小屋に放したところで、また空の土器を抱えて戻ってきてもらった。


「すでに二匹ほど、小屋の中にいましたよ」


 とノボルさんが教えてくれた。

 きっとアンジュさんチームが捕まえて、入れてくれたんだろう。


 こりゃ、こっちも負けてられないな……! とボクたちはさらに張り切る。


 それから罠の数を、さらに二つから四つに増やし……ボクとクルミさんとで、二つずつ手分けして見張ることにした。


 ボクの罠にはポポが押さえ役になって、クルミさんの罠はノボルさんが押さえ役。

 いちどに二つの罠にかかった場合は、お互いを助け合うという形にする。


 罠が四つになったおかげでかなり回転率があがった。

 多いときには四つともにセキショクヤケイが引っかかり、逃しちゃうこともあったけど、次から次へと捕まえられる。


 その度にボクらは天空城を往復したんだけど、アンジュさんたちもライバル意識を燃やしはじめたのか、見るたびに小屋にニワトリが増えていった。


 ボクらは夕方まで、ひたすらニワトリ捕獲を続け……100匹をこえたところで終了することにした。


 ボクらのチームは罠を使ったおかげでほぼ無傷だったんだけど、アンジュさんたちは暴れるセキショクヤケイのクチバシや爪で攻撃を受け、生傷が絶えなかったらしい。

 治癒ができるラヴィさんを一緒にしておいて、本当によかった。


 そしてたくさんニワトリを捕まえたおかげか、ボクはレベルアップする。

 レベルもあがったし、最初の家畜も手には入ったし……いいことずくめだったんだけど、ひとつ大きな問題に気づいた。


 エサをどうするか、ということだ。


 セキショクヤケイはたしか、一日に100グラムくらいエサを食べるらしい。

 100匹ともなると……10キログラムものエサが必要になるんだ……!


 一応、エサ用に木の実はたっぷりと持ってきてたんだけど……それもすぐに食べつくされちゃうだろう。


 ニワトリはエサをたっぷり与えられているから、毎日卵を産めるんだ。

 だから、ひもじい思いをさせるわけにはいかない。


 でも、だからといって……今からジャングルで集めるには、手間がかかりすぎる……!


 新たに発生した、エサ問題。

 ボクはコケッコーと大合唱の鳴りやまないニワトリ小屋の前で、頭を抱えてしまった。

■■■奇跡ツリー■■■(現在の神様レベル:23)


 今回は割り振ったポイントはありません。未使用ポイントが2あります。

 括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


 ●天空城の奇跡

  高度

   (1) LV1 高度アップ … 天空城をさらに高く飛ばせる

   (0) LV2 天空界   … 「天空界」まで飛ばせるようになる

   (0) LV3 ???   … ???

  速度

   (3) LV1 速度アップ … 天空城の移動速度があがる

   (1) LV2 高速移動  … 高速移動ができる

   (0) LV3 ???   … ???

  流脈

   (0) LV1 消費減少  … 奇跡力の消費を抑える

   (0) LV2 放出    … 天空城から物体を放出できる

   (0) LV3 ???   … ???

  障壁

   (0) LV1 防御障壁  … 天空城を守るバリアを張る

   (0) LV2 水中潜行  … 水中に潜れるようになる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●神通の奇跡

  神の手

   (1) LV1 ジオグラフ … 大地を切り取る

   (1) LV2 ウェポン  … 武器を出す

   (0) LV3 マジック  … 天空城の奇跡を手から出せる

  神の叡智

   (2) LV1 現界の声  … この世界の声を聞く

   (0) LV2 異界の声  … 異界からの声を聞く

   (0) LV3 天啓    … 人間に知恵を授ける


 ●創造の奇跡

  魔法生物

   (4) LV1 ゴーレム  … ゴーレムを創る

   (1) LV2 小人成長  … 小人を人間にする

   (1) LV3 使徒成長  … 人間を使徒にする

  有機生物

   (1) LV1 絶滅    … 生命を絶滅させる

   (1) LV2 成長促進  … 生命の成長を早める

   (0) LV3 生殖    … 生命を親にする

  回復

   (1) LV1 治癒    … 病気や怪我を治す

   (0) LV2 死者蘇生  … 死んだものを蘇らせる

   (0) LV3 死者転生  … 異界から死者を蘇らせる


 ●水勢の奇跡

  波浪

   (0) LV1 小波    … 小さな波を起こす

   (0) LV2 大波    … 大きな波を起こす

   (0) LV3 津波    … 津波を起こす

  水かさ

   (1) LV1 減水    … 水を減らす

   (1) LV2 増水    … 水を増やす

   (1) LV3 海割り   … 水を一時的に割る

  操水

   (0) LV1 霧散    … 霧を作り出す

   (0) LV2 噴水    … 水を噴出させる

   (0) LV3 渦     … 渦を作り出す

  水中

   (0) LV1 呼吸    … 水中で呼吸できるようになる

   (0) LV2 浮力増   … 水中の浮力を増やす

   (0) LV3 浮力減   … 水中の浮力を減らす


 ●天候の奇跡

  雲

   (1) LV1 雲     … 家の煙突から雲を出せる

   (0) LV2 虹     … 虹を出せる

   (0) LV3 ???   … ???

  風

   (0) LV1 風     … 風を起こせる

   (0) LV2 竜巻    … 竜巻を起こせる

   (0) LV3 ???   … ???

  雨

   (1) LV1 雨     … 雨を降らせる

   (0) LV2 洪水    … 洪水を起こす

   (0) LV3 ???   … ???

  雪

   (0) LV1 雪     … 雪を降らせる

   (0) LV2 大雹    … 大きな雹を降らせる

   (0) LV3 ???   … ???

  雷

   (1) LV1 雷     … 雷を落とす

   (0) LV2 導雷    … 目標に誘導する雷を落とす

   (0) LV3 ???   … ???

  火

   (0) LV1 火の粉   … 火の粉を降らせる

   (0) LV2 火の玉   … 火の玉を降らせる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●太陽の奇跡

  気温上昇

   (0) LV1 気温上昇  … 気温を上げる

   (0) LV2 猛暑    … 猛暑にする

   (0) LV3 ???   … ???

  気温下降

   (0) LV1 気温下降  … 気温を下げる

   (0) LV2 寒波    … 寒波を起こす

   (0) LV3 ???   … ???

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