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31 ついに使徒が、できました…!

「お願いソラちゃん……! わたし、使徒になりたい……! ……きゃうっ!?」


 トトトトトと小走りで寄ってくるアンジュさん。しかしボクの目の前ですっ転んでいた。


「あっ、大丈夫? アンジュさん?」


 ボクが助け起こそうとするより早く、アンジュさんはパッと顔をあげた。

 砂まみれの泣きべそ顔のまま、イグアナみたいに這ってくると、


「わ……わたしを使徒にして……! わたしを使徒にしてぇぇ……!」


 なりふり構わずボクの腕にすがりついてきて、肩にアゴをのせて頬ずりしてきた。


 この感覚……ボクには覚えがある。

 そう……初めてラヴィさんに会ったときのことだ……!


 天空城の庭、ジオグラフで切り取ったばかりの石の下に、隠れていた小人のラヴィさん。

 ボクの腕によじのぼり、肩に乗ってほっぺたを押しながら、「にんげんにしてー」とせがんできたんだ。


 グイグイくる、あの感じ……!

 いまのラヴィさんに、ソックリだ……!


 アンジュさんは、ボクとラヴィさんの様子を……ふぅんと他人事みたいに眺めている。


「ねぇ、ラヴィはなんでそんなに使徒になりたいの?」


「えっ、だって使徒になったらずっとソラちゃんの側にいられるんでしょ? あっ、せっかくだからアンジュちゃんも、ねっ」


 なにがせっかくなのかわからないけど……ラヴィさんはアンジュさんも抱き寄せて、一緒に頬ずりしだした。


「うふふ、こうすると両方のほっぺが気持ちよくて、とっても素敵な気持ちになれるの」


 ボクとアンジュさんの頬を同時に味わいながら、心の底から幸せそうなラヴィさん。


「あの、ラヴィさん……」「あの、ラヴィ……」


「ああん、ソラちゃん、アンジュちゃん、もうちょっとだけ……いいでしょ? ねっ」


 ボクとアンジュさんは使徒の話題に戻ろうとしたんだけど、ラヴィさんはそれよりも頬ずりのほうが大事なようだ。

 すると、アンジュさんがいたずらっぽく笑って、


「じゃあラヴィ、頬ずりと使徒、どっちかひとつって言われたらどっちを選ぶ?」


「ええ~っ、どっちかって、そんなぁ……そんなの選べないわぁ!」


 ラヴィさんにはどうやら究極の選択だったようで、困り果てた声をあげた。


 その時、ボクは何をしていたのかというと……スリスリされながらスマート天空石を操作して、『使徒成長』に1ポイントを振っていたんだ。


  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


 ひとしきりの頬ずりを終えたあと、ボクはラヴィさんを使徒にすることにした。


 オジサンに教えてもらったとおり、砂浜の上にちょこんと正座しているラヴィさんの前に立つ。

 そして彼女の額を、両手で包み込んだ。


「えーっと……汝……ラヴィさんは、ボクに生涯の信仰を誓いますか?」


 ラヴィさんも教えられたとおり、祈りを捧げるように瞳を閉じる。


「はい……わたしは、ずっとずっと……ずーっと……! ソラちゃんを信じることを誓います……!」


 すると……ボクの右手の甲にある太陽の紋章と、左手の甲にある月の紋章が輝きだした。

 ひときわ強い光を放っていたのは左手で、月の紋章と同じ青い光がラヴィさんの身体を包み込む。


 ボクの頭の中では……見覚えがあるようで、初めて見るような光景が次々と流れ込んできて、浮かんでは消えていた。


 まるで、走馬灯みたい……生まれてから今までの記憶を、早回しで見ているかのようだ。


 でもこれは、ボクの記憶じゃない……たぶん、ラヴィさんの記憶……!


 ラヴィさんの記憶は、ボクのことばかりだった。


 子供の成長記録をビデオに残す親みたいに……ボクがゴハンを食べているところや、ポポと遊んでいるところ、初めて海に触れた笑顔や、初めて魚を獲って大喜びしているところ……そして寝顔まで……!


 ボク自身、忘れられないことから、何気ない表情ひとつひとつまで、ラヴィさんは覚えていてくれたんだ……!


 光が消える頃には、ボクの頭の中はラヴィさんの記憶がごちゃ混ぜになっていた。

 服を一緒に洗濯してるみたいに、お互いの思い出がグルグルと渦を巻いている。


 混乱のあまり目眩がして、よろめき倒れそうになったところに……ふわっと羽毛が包み込むような感触があった。


「……大丈夫? ソラちゃん?」


 まるで当たり前みたいに、ボクを抱きとめてくれるラヴィさん。


 彼女の腕の中は、いつもいい匂いがして、柔らかくて、あったかいんだけど……なんだかそれがパワーアップしているような気がして……ボクはなんだか夢見心地になった。


 ……そうしてラヴィさんは、ボクの初めての使徒になったんだ。

 初めての使徒を作ったことで、ボクは1レベルアップする。


 使徒になったラヴィさんは見た目はぜんぜん変わらなかったんだけど、左手の甲にボクとおそろいの紋章と、『I』という数字が出ていた。

 さらにオジサンが教えてくれたんだけど、


「使徒になった者は、潜在能力に応じた神様の力を、一部だけ使えるようになるんじゃ。ラヴィは『慈愛の使徒』……癒やしの力と、守りの力を得たようじゃな」


「……キャアアアアッ!!」


 急に悲鳴が割り込んでくる。

 見ると……遠くの砂浜で、脚を押さえてしゃがみこんでいる子がいた。


 エイヤさんだ。

 三対一で石ヤリの組手をしている最中、太ももを刺されてしまったようだ。血がドクドク出ている。


「おっ、ちょうどいい……ってのはアレじゃが、さっそく癒やしの力を使ってみるんじゃ。ラヴィ、そのやり方はすでに、そなたは知って……って、おやおや」


 オジサンの言葉よりも早く、ラヴィさんはケガ人に向かって駆け出していた。

 彼女はケガした人を見ると、いてもたってもいられないんだ。


「だ……大丈夫!? エイヤちゃん、しっかりしてっ!」


「ラ ラヴィ……! コレクライ ナントモ……!」


「あっ、立っちゃだめ! いま治してあげるからねっ!」


 ラヴィさんは、無理して立ち上がろうとするエイヤさんを抑えると、パックリ裂けた太ももに左手を当てた。

 手が血まみれになるのも、おかまいなしに。


 そして祈るようにつぶやく。


「……ソラちゃん、ソラちゃん……どうか、エイヤちゃんの傷を、治してあげてほしいの……お願い……!」


 すると……ラヴィさんの左手がほのかに光りだす。

 ほわほわした綿みたいに柔らかそうで、春の日差しみたいにあったかそうな光……。


 でも、それはすぐに消えてしまう。

 やさしい笑みとともに、手をあげるラヴィさん。


 すると……まるで光が傷口を吸い取ってしまったかのように、エイヤさんの脚は元通りになっていたんだ。


「すっ……すごい……! ケガを治しちゃうなんて、魔法みたいだ……! すごいよラヴィさん!」


 ボクだけじゃなく、まわりで覗き込んでいたみんなも騒ぎ出す。


「オオ……! キズ ガ ウソミタイニ……!」


「イッタイ ナニヲ ヤッタンダ……!?」


「モウ ナントモナイ……! アシ ガ ウゴク……!」


 さっきまでの無理した様子は全くなく、力強く立ち上がるエイヤさん。

 ケガしたほうの脚を確かめるように、ドスドスと砂浜を踏みしめている。


 遅れてやってきたアンジュさんが、みんなに教えてくれた。


「ラヴィは守りたい気持ちが強いから、使徒になることで治癒の奇跡が使えるようになったんだよ。まぁ正確には、ソラに祈りを捧げて治癒の力を借りているだけなんだけどね。……でも、よかったね! これで心おきなく戦えるじゃない!」


 アンジュさんの言葉に、ボクは新たなる可能性に気づく。


「あっ、そっか……! いままでは天空城の庭じゃないと、ケガを治せなかったけど……今度からはモンスターと戦ってる最中でも、ラヴィさんがいれば治してもらえるってことだよね!?」


 「そういうこと」とウインクするアンジュさん。


「すごいやラヴィさん! 使徒になってくれてありがとう! よぉしみんな、すごい力を手に入れたラヴィさんを胴上げだっ!」


 ボクがラヴィさんの手を取ると、オオーッ! とみんなは集まってくれる。


「ええっ、いきなりそんな……あらあら、あらららららららっ!?」


 どこかのんびりした悲鳴とともに、空を舞うラヴィさん。


 ラヴィさんがケガを治せることによって、守りがさらに強化された……!

 これで、戦いの準備は整った……! 待ってろよっ、マーマンっ……!

■■■奇跡ツリー■■■(現在の神様レベル:19)


 今回は『使徒成長』に1ポイントを割り振りました。未使用ポイントが1あります。

 括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


 ●創造の奇跡

  魔法生物

   (4) LV1 ゴーレム  … ゴーレムを創る

   (1) LV2 小人成長  … 小人を人間にする

   (1) LV3 使徒成長  … 人間を使徒にする

  有機生物

   (1) LV1 絶滅    … 生命を絶滅させる

   (1) LV2 成長促進  … 生命の成長を早める

   (0) LV3 生殖    … 生命を親にする

  回復

   (1) LV1 治癒    … 病気や怪我を治す

   (0) LV2 死者蘇生  … 死んだものを蘇らせる

   (0) LV3 死者転生  … 異界から死者を蘇らせる


 ●神通の奇跡

  神の手

   (1) LV1 ジオグラフ … 大地を切り取る

   (1) LV2 ウェポン  … 武器を出す

   (0) LV3 マジック  … 天空城の奇跡を手から出せる

  神の叡智

   (0) LV1 現界の声  … この世界の声を聞く

   (0) LV2 異界の声  … 異界からの声を聞く

   (0) LV3 天啓    … 人間に知恵を授ける


 ●水勢の奇跡

  波浪

   (0) LV1 小波    … 小さな波を起こす

   (0) LV2 大波    … 大きな波を起こす

   (0) LV3 津波    … 津波を起こす

  水かさ

   (1) LV1 減水    … 水を減らす

   (1) LV2 増水    … 水を増やす

   (1) LV3 海割り   … 水を一時的に割る

  操水

   (0) LV1 霧散    … 霧を作り出す

   (0) LV2 噴水    … 水を噴出させる

   (0) LV3 渦     … 渦を作り出す

  水中

   (0) LV1 呼吸    … 水中で呼吸できるようになる

   (0) LV2 浮力増   … 水中の浮力を増やす

   (0) LV3 浮力減   … 水中の浮力を減らす


 ●天候の奇跡

  雲

   (1) LV1 雲     … 家の煙突から雲を出せる

   (0) LV2 虹     … 虹を出せる

   (0) LV3 ???   … ???

  風

   (0) LV1 風     … 風を起こせる

   (0) LV2 竜巻    … 竜巻を起こせる

   (0) LV3 ???   … ???

  雨

   (1) LV1 雨     … 雨を降らせる

   (0) LV2 洪水    … 洪水を起こす

   (0) LV3 ???   … ???

  雪

   (0) LV1 雪     … 雪を降らせる

   (0) LV2 大雹    … 大きな雹を降らせる

   (0) LV3 ???   … ???

  雷

   (1) LV1 雷     … 雷を落とす

   (0) LV2 導雷    … 目標に誘導する雷を落とす

   (0) LV3 ???   … ???

  火

   (0) LV1 火の粉   … 火の粉を降らせる

   (0) LV2 火の玉   … 火の玉を降らせる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●天空城の奇跡

  高度

   (0) LV1 高度アップ … 天空城をさらに高く飛ばせる

   (0) LV2 天空界   … 「天空界」まで飛ばせるようになる

   (0) LV3 ???   … ???

  速度

   (0) LV1 速度アップ … 天空城の移動速度があがる

   (0) LV2 高速移動  … 高速移動ができる

   (0) LV3 ???   … ???

  流脈

   (0) LV1 消費減少  … 奇跡力の消費を抑える

   (0) LV2 放出    … 天空城から物体を放出できる

   (0) LV3 ???   … ???

  障壁

   (0) LV1 防御障壁  … 天空城を守るバリアを張る

   (0) LV2 水中潜行  … 水中に潜れるようになる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●太陽の奇跡

  気温上昇

   (0) LV1 気温上昇  … 気温を上げる

   (0) LV2 猛暑    … 猛暑にする

   (0) LV3 ???   … ???

  気温下降

   (0) LV1 気温下降  … 気温を下げる

   (0) LV2 寒波    … 寒波を起こす

   (0) LV3 ???   … ???

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