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29 天使のために、弓矢を作ります

 集落を出発したボクとポポは、海岸沿いにひたすら走った。

 砂浜をザッザッと散らして、潮風のなかを駆けぬけるポポ。


 ボクが背中に乗ってるのに、全然重そうじゃない。

 まるでチーターの速さと、象のパワフルさをあわせたような走り……さすが聖獣と呼ばれているだけはある。


 大排気量のバイクって、身体が置いてかれるような加速って本で読んだけど……こんな感じなのかな?

 風をびゅうびゅうと切って走る気持ちよさに、ボクは山でもないのに「ヤッホー!」と叫んでいた。


 ……なんてことをやっているうちに、集落から少し離れたところで松林を見つけた。

 細い松の木が、防風林のように立ち並んでいる。


 あたりにモンスターがいないか、念のため周囲をひとまわりしてから降り、手近な松の木に近づく。


 ボクは腰に携えた石剣を引き抜くと、剣の練習もかねて、木の幹をガツガツと斬りつけた。

 樹皮に傷がつく。同じ場所にさらに剣を当てていると、削れて肌色の中身がでてくる。


 それから大きめの葉っぱを探してきて、折り紙みたいに折って器を作った。

 その葉っぱの器を、松の傷跡の下に置いておく。


 こうしておくと、傷跡から垂れてきた松脂が取れるんだ。あとはしばらく待つだけでいいはず。

 でも、そのあいだはヒマなので……松脂だけじゃなくて、他の素材も集めてみることにした。


 まずは松の葉っぱ。針みたいな葉っぱは、お湯にひたしておくとお茶になるんだって。

 お茶って飲んだことないから、お土産に持って帰ってみんなで飲んでみよう。


 つぎに松ぼっくり。これは火がつきやすいので火おこしに使えるし、中の実は食べられるんだ。

 あとは松の枝。これも松脂を含んでいるので、火がつきやすいんだ。


 ボクはオーバーオールのポケットに入るだけ、松の葉っぱと松ぼっくりを取った。

 集めた松の枝は、植物のツタで束ねて持って帰ることにする。


 そして、これは偶然だったんだけど……松林のなかで、抜け落ちた鳥の羽根をいくつか見つけたんだ。

 矢を作るのにちょうど使えると思って、拾っておく。


 ひととおり作業を終えてから、葉っぱの器を覗いてみると……溶けたゴムみたいなのが溜まっていた。

 まだ少量だけど、今回は試しなのでこれでいいかと思い、器を持って帰ることにする。


 お土産をいっぱい携えたボクは、またポポに跨って元きた道を戻った。

 荷物が落ちちゃうといけないから、きた時よりはゆっくりと。


 その道すがら、丘の上にフルールがいたので、


「おおーい、フルール! 蜜蝋ちょうだい!」


「承諾しました」


 身体の中で蜂をたくさん飼っているフルールから、蜜蝋を分けてもらった。


 よぉし、これで弓づくりの材料は揃った……!


 集落に戻ってさっそく、土器のなかに松脂と蜜蝋を入れて煮詰める。

 これが、ニカワ……いわゆる接着剤になるんだ。


 その間に、焚き木としてストックしてある木のなかから、しなりの良さそうな長い木と、まっすぐな短い枝を何本か取ってくる。


 松脂と蜜蝋が煮詰まるのを待つ隣で、長い木を石器のナイフで削る。


 すると、こよった髪の毛を手に、アンジュさんが近づいてきた。


「おおーい! ソラ、できたよー!」


「あっ、ありがとうアンジュさん! ちょうどいいところに!」


 アンジュさんから髪の毛を受け取ったボクは、長い木の端に結びつける。

 長い木が弓の胴体で、こよった髪が弦になるんだ。


 これでよし……! まずは弓本体ができあがった……!


 ボクは試しに引いてみて、しなり具合を確認していると、


「……ねぇソラ」


 隣で膝を抱えて座っていたアンジュさんが、話しかけてきた。


「ソラってさ、なんでそんなにいろんなこと知ってるの?」


 藪から棒の質問に、ボクは少し面食らう。


「……それ、オジサンにも言われたんだけど……ボクって、いろんなことを知ってるほうなの?」


 ボクは弓の弦を、弦楽器みたいにビンビン弾きながら聞き返した。

 アンジュさんは長いツインテールを、地面に垂らすほどに首を傾げている。


「知ってるほう、って……なにそれ」


「ボクって、前世はずっと病院で寝たきりだったから、他の子とくらべてどうなのかわからないんだ」


「そうなんだ……知ってるほう、どころじゃないと思うよ。6歳のアタシどころか、今のアタシよりもずっといろんなこと知ってるもん」


「ふぅん……いっぱい本を読んでたからかな」


「ソラって、本が好きなの?」


「うん。といってもタブレット端末で見てたんだけどね。全身が動かなかったから、脳波で操作できるやつを使わせてもらってたんだ。それで本だけじゃなくて、動画とかいっぱい見たなぁ」


 ボクは思い返しながら、弓を置く。

 それから短い枝を手に取り、まっすぐな形になるよう削りはじめる。これが矢になるんだ。


 アンジュさんはボクが置いた弓を持ち上げ、矢をつがえず引き絞っていた。


「……いい弓ね。ところで本とか動画って、どんなのを見てたの?」


「本当に、いろいろだよ。絵本から、文学から、実用書から……時間はいっぱいあったから、洋書とかも読んだなぁ……最初は絵本以外、意味がわかんなかったんだけど……不思議なことに何度も読み返してると、書いてあることがなんとなくわかるようになっていったんだ。あと、動画のほうはアニメからはじまって、映画とか、ドキュメンタリーとか……。あ、それでね、想像するのが好きだったんだ」


「……想像?」


「うん。小説や映画のシチュエーションにあわせて、もしボクがその中にいたらどうするだろうなぁ、って想像するんだ。たとえば無人島にひとりでいたら、どうやって生き抜くか……とか。そのための知識を調べたりするのも、楽しかったなぁ」


 ボクは作業の手を止めず、削った矢の先に、石器で作った矢じりをつけた。

 そのあと、拾った鳥の羽根で矢羽をつくる。


 どちらも煮詰めたニカワで接着して、補強しておく。

 そのあいだアンジュさんはというと、どこか遠い目をしながら、弓を構えていた。


「ずっとひとりっきりで、空想してたんだね……それで、こんな弓も作れるようになったんだ……」


「うん。でも、どれもこれも知識だけで、実践は初めてなんだけどね……よし、矢ができた! 射ってみて、アンジュさん!」


 ボクはできあがった矢を、アンジュさんに手渡す。

 矢じりと矢羽はニカワでくっつけてるから、本当はもうちょっと乾かさないといけないんだけど……それよりも早く射ってみてもらいたかったんだ。


 アンジュさんは立ち上がると、さっそく矢を弓につがえる。

 海の方にある、投石の的となっている人形を狙っていた。


 その表情はキリリとしていて、姿勢もなんだかちゃんとしてる。

 もしかして……弓を使うのは初めてじゃないのかな?


 でも、人形まではだいぶ遠い。20……いや、30メートルはありそうだ。

 この距離で当たるのかな? 投石器の練習をしてる子たちとはだいぶ離れてるから、間違ってそっちに当たっちゃう、なんてことはないと思うけど……。


 なんて少し心配していたら、ビシュッ! という音とともに、引き絞った弦が離された。


 ……シュンッ!


 小気味いい風切音とともに、レーザーのようにまっすぐに飛んだ矢は……瞬きほどの一瞬で、人形の頭に突き立った。


「……ああっ!? すごいすごいアンジュさん! 大当たりだよっ!?」


 鮮やかな一射……ボクは奇跡を見た気がした。

 興奮を抑えきれなくなって、身体が勝手に跳ねてしまう。


 ピョンピョンしているボクを前に、アンジュさんはフフフンと笑った。


「実をいうとね、神様学校でも弓矢だけは得意だったんだ」


 得意気な様子でツインテールをかきあげ、金色の髪をサラサラと風に流すアンジュさん。


 その姿は、まさに天使みたいに優美だったんだけど……どこからともなく飛んできた石が、耳に命中した。

 寝耳に水ならぬ、寝耳に石……アンジュさんは「ひゃんっ!?」と、雲から落ちた天使みたいな悲鳴とともに、倒れこんでしまった。

■■■奇跡ツリー■■■(現在の神様レベル:18)


 今回は割り振ったポイントはありません。未使用ポイントが1あります。

 括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


 ●神通の奇跡

  神の手

   (1) LV1 ジオグラフ … 大地を切り取る

   (1) LV2 ウェポン  … 武器を出す

   (0) LV3 マジック  … 天空城の奇跡を手から出せる

  神の叡智

   (0) LV1 現界の声  … この世界の声を聞く

   (0) LV2 異界の声  … 異界からの声を聞く

   (0) LV3 天啓    … 人間に知恵を授ける


 ●創造の奇跡

  魔法生物

   (4) LV1 ゴーレム  … ゴーレムを創る

   (1) LV2 小人成長  … 小人を人間にする

   (0) LV3 使徒成長  … 人間を使徒にする

  有機生物

   (1) LV1 絶滅    … 生命を絶滅させる

   (1) LV2 成長促進  … 生命の成長を早める

   (0) LV3 生殖    … 生命を親にする

  回復

   (1) LV1 治癒    … 病気や怪我を治す

   (0) LV2 死者蘇生  … 死んだものを蘇らせる

   (0) LV3 死者転生  … 異界から死者を蘇らせる


 ●水勢の奇跡

  波浪

   (0) LV1 小波    … 小さな波を起こす

   (0) LV2 大波    … 大きな波を起こす

   (0) LV3 津波    … 津波を起こす

  水かさ

   (1) LV1 減水    … 水を減らす

   (1) LV2 増水    … 水を増やす

   (1) LV3 海割り   … 水を一時的に割る

  操水

   (0) LV1 霧散    … 霧を作り出す

   (0) LV2 噴水    … 水を噴出させる

   (0) LV3 渦     … 渦を作り出す

  水中

   (0) LV1 呼吸    … 水中で呼吸できるようになる

   (0) LV2 浮力増   … 水中の浮力を増やす

   (0) LV3 浮力減   … 水中の浮力を減らす


 ●天候の奇跡

  雲

   (1) LV1 雲     … 家の煙突から雲を出せる

   (0) LV2 虹     … 虹を出せる

   (0) LV3 ???   … ???

  風

   (0) LV1 風     … 風を起こせる

   (0) LV2 竜巻    … 竜巻を起こせる

   (0) LV3 ???   … ???

  雨

   (1) LV1 雨     … 雨を降らせる

   (0) LV2 洪水    … 洪水を起こす

   (0) LV3 ???   … ???

  雪

   (0) LV1 雪     … 雪を降らせる

   (0) LV2 大雹    … 大きな雹を降らせる

   (0) LV3 ???   … ???

  雷

   (1) LV1 雷     … 雷を落とす

   (0) LV2 導雷    … 目標に誘導する雷を落とす

   (0) LV3 ???   … ???

  火

   (0) LV1 火の粉   … 火の粉を降らせる

   (0) LV2 火の玉   … 火の玉を降らせる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●天空城の奇跡

  高度

   (0) LV1 高度アップ … 天空城をさらに高く飛ばせる

   (0) LV2 天空界   … 「天空界」まで飛ばせるようになる

   (0) LV3 ???   … ???

  速度

   (0) LV1 速度アップ … 天空城の移動速度があがる

   (0) LV2 高速移動  … 高速移動ができる

   (0) LV3 ???   … ???

  流脈

   (0) LV1 消費減少  … 奇跡力の消費を抑える

   (0) LV2 放出    … 天空城から物体を放出できる

   (0) LV3 ???   … ???

  障壁

   (0) LV1 防御障壁  … 天空城を守るバリアを張る

   (0) LV2 水中潜行  … 水中に潜れるようになる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●太陽の奇跡

  気温上昇

   (0) LV1 気温上昇  … 気温を上げる

   (0) LV2 猛暑    … 猛暑にする

   (0) LV3 ???   … ???

  気温下降

   (0) LV1 気温下降  … 気温を下げる

   (0) LV2 寒波    … 寒波を起こす

   (0) LV3 ???   … ???

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