21 天空城から、落ちちゃいました
「あ……アンジュさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」
ボクは、反射的に動いていた。
ホコラからダイブするように飛び出し、庭の草の上を滑り……視界から消え去りゆくアンジュさんの手首を、ガッ! と掴む。
間に合った……! と思ったのも束の間。
「……わあっ!?」
そのまま淵に引きずり込まれてしまう。
体重差があるんだ……!
なんて気づいたときにはもう遅く、ボクの身体はすでに宙に放り出されていた。
けど、あきらめてたまるかっ……!
ボクは空いている片手を伸ばし、庭の端っこからはみ出ている草に手を伸ばす。
グッ、とした手応えとともに、落下が一瞬止まる。
よ……よし、なんとか掴めたぞ……!
蜘蛛の糸のように、か細い手がかり……!
だけど……今は、これにすがるしか……!
祈るような気持ちで庭のほうを見ると、ラヴィさんを先頭として、みんなが必死の形相で助け寄ろうとしている。
あと少し……! あと少しだ……!
どうか、持ってくれ……! 誰かが手を、さしのべてくれるまで……!
しかし無情にも……草はプツンと、頼りない音とともにちぎれてしまった。
「……うわぁぁっ!?」
ボクは悲鳴をあげそうになりながらも、なにか別のものに掴まれないか空に向かって手を伸ばす。
……ガシイッ!!
不意に、誰かがボクの手を握りしめる。やわらかい手だった。
「……ソラちゃんっ!!」
ラヴィさんだ……! ラヴィさんが、ボクを助けてくれたんだ……!
いつも天使みたいにやさしいラヴィさんだけど、この時は本当に天使に見えた。
た、助かった……! とボクはホッとしたんだけど、なぜか身体の落下は止まらない。
ラヴィさんの肩ごしに見える天空城が、どんどん遠ざかっていく。
「あ……あれっ!? ラヴィさん!? もしかして……飛び降りちゃったの!?」
空中でボクの手を握りしめたまま、「まぁ」と驚くラヴィさん。
「あ……! ソラちゃんが落ちたと思ったら、勝手に身体が動いちゃって……止まらなかったの……!」
しかもラヴィさんだけじゃない。
気がつくと、フルールと猫のポポも一緒についてきていた。
「あっ!? フルールにポポ!? なんで一緒になって飛び降りてるのっ!?」
「命令を受けていない間は、マスターと共に行動するのがゴーレムの基本思想です」「ニャーン!」
吹き上げる風に花びらを散らしながら、まるで当たり前のように言ってのけるフルールと、ムササビみたいに身体を広げているポポ。
……や……ヤバい! フルールもポポも、助けに来てくれたわけじゃないみたいだ……!
このままじゃ、みんな落ちて死んじゃう……! なんとかしないと……!
「そ、そうだアンジュさん! 羽根は!? 背中にある羽根で空を飛べないの!?」
「ウギャァァァァァーーーッ!?!? フギャァァァァァァーーーッ!?!?」
しかしアンジュさんは落下の恐怖で完全にパニックになっており、何を聞いても涙とツインテール振り乱してイヤイヤをするばかり。
ど……どうしよう!? 他になにか手は……!?
地面に叩きつけられるまで、もう時間がないっ……!?
ふと、ラヴィさんとフルールが寄り添ってきて、ボクとアンジュさんの身体を包み込んできた。
「……な、なに? ラヴィさん、フルール?」
「大丈夫よ、ソラちゃん、アンジュちゃん。ふたりとも、私が守ってあげるから……!」
「同じく、自分が緩衝材となります」
ボクを赤ちゃんみたいに抱きしめるアンジュさんと、花をエアキャップみたいに寄せてくるフルール。
そんなの、とんでもない……! とボクは思った。
「だ……ダメだよそんなっ!? ふたりが犠牲になるなんて!! は……離して!! 離してよっ!!」
「ううん、離さない……! ソラちゃん、お願いだから、いい子にしてて……!」
「不承諾しました。マスターを危機にさらす命令は受け入れられません」
「ウェァァァァァァァン!?!? 最低の人生から抜け出して、せっかく生まれ変わったのに、もう死ぬだなんて……!! まだまだしたいこと、いっぱいあったのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!! 恋とか、キスとかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! ヒギャァァァァァァァン!!!」
すでに死を受け入れ、静かに最期の時を待つ女の子と、ただただ泣き叫ぶ女の子。
ボクは信じられなかった。
なぜだ……! なぜなんだ……!?
なんでそんなにすぐにあきらめられるんだ……!?
「み……みんな……!! ダメだ……!! あきらめちゃダメだっ!! 最後まで……最後まであがくんだっ!! ボクたちはまだ頭も、身体も立派に動くじゃないかっ!! なのになんで、あきらめるんだっ……!?」
しかし、その言葉がみんなに届くより早く、ボクの意識は青に染まる。
ボクは、これほどまでに……自分が無力だと思ったことはなかった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
……耳慣れない川のせせらぎと、いつもの感触を頬に感じる。
ボクは、もう朝か……とうっすらした意識で感じていた。
でも……いつもと違う、困ったようなキュンキュンとした鳴き声が耳に入り、ハッと飛び起きる。
隣には犬のポポがいて、ボクの顔を必死に舐めていたんだ。
ボクが気がついたのが嬉しいのか、ポポの顔舐めはさらに激しさを増す。
「うわっぷ!? ちょ、く、くすぐったいって、ポポ!」
しかしポポはやめてくれない。
舐めるのが身体に良いことみたいに、長い舌でベロンベロンとひたすら舐めてきた。
しょうがないので納得してくれるまで舐めさせたあと、ボクは立ち上がる。
ボクは河原に倒れていた。
身体はびしょびしょで、ポポも濡れネズミになっていたので……きっと川に落ちたんだろう。
でもそのおかげで、高いところから落ちたのに助かったんだけど……意識を失っていたらしい。
それをポポが引き上げてくれたようだ。
「……あ! そうだ、みんなは!?」
ボクはあたりを見回す。でも、みんなの姿は見当たらない。
もしかして流されたのかな? と思い、川下に向かってみることにした。
このあたりの川は深くて流れが急だから、かなり流されている可能性がある。
ちなみに川をずっと下っていくと、かつてボクらがいた集落に着くんだ。
最初は自分の足で走ってたんだけど、それでは間に合わないかと思い、途中からポポに跨ってみんなを探す。
するとボクが気づいた所から、だいぶ離れた川下で……岸に流れ着いているふたりの女の子を見つけた。
「……アンジュさん! ラヴィさんっ!!」
駆け寄ると、ふたりともぐったりしていた。
「ソラちゃん……ソラちゃん……」
ラヴィさんは、うわごとのようにボクの名前を呼んでいたので、
「起きて! ラヴィさん! しっかりして!」
頬を叩いて呼びかける。
すると、うっすらと瞼を開けた。
しばらくぼんやりと視線をさまよわせてたんだけど、ボクがいるとわかった途端、
「ああっ……ソラちゃん! ソラちゃんっ……! よかったぁ……!」
ボクの首に手を回し、ギューッと抱きついてきた。
「ご、ごめんラヴィさん、いまはそれどころじゃないんだ!」
ボクは彼女の腕からするっと抜け出し、次はアンジュさんの様子を確かめる。
アンジュさんはいくら呼びかけても返事がなかった。
胸に耳を当ててみたら、心臓は動いていた。しかし、呼吸はしていない。
ボクはマウス・トゥ・マウスによる人工呼吸をやってみた。
仰向けに寝かせて、顔を上に向かせて気道を確保。
鼻をつまんで空気が漏れないようにしてから、唇どうしを密着させて息を吹き込む。
アンジュさんの胸がゆっくりとあがったところで唇を離し、息が吐き出されるのを待つ。
それを何回か繰り返していると、
「……かはっ! げほっ! こほっ!!」
口から水を吹き出しながら、アンジュさんが意識を取り戻した。
ボクが安堵のため息とともに、アンジュさんの身体から離れると、
「よ……よかったぁ! アンジュちゃん……!」
お預けを解かれた犬みたいに、さっそく抱きつくラヴィさん。
「ア……アタシ……助かった……の?」
「そうよ……そうよアンジュちゃん! ソラちゃんが助けてくれたの!」
「そ……そう……また、ソラに……」
アンジュさんは助かったというのに、なぜか元気がない。
でも、まだ意識がハッキリしてないんだろう、と思ってボクは気にしなかった。
それから近くの木に引っかかっているフルールを助け出し、ボクたちは全員無事に再会することができた。
ひとまずのピンチは、なんとか乗り越えることができたんだけど……まだ問題は残っている。
「うーん、どうやってあそこまで戻ろうかなぁ……」
ボクは気球のように、遥か上空に浮かぶ天空城を眺めながら……そうつぶやいた。
■■■奇跡ツリー■■■(現在の神様レベル:13)
今回は割り振ったポイントはありません。未使用ポイントが2あります。
括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。
●天候の奇跡
雲
(1) LV1 雲 … 家の煙突から雲を出せる
(0) LV2 虹 … 虹を出せる
(0) LV3 ??? … ???
風
(0) LV1 風 … 風を起こせる
(0) LV2 竜巻 … 竜巻を起こせる
(0) LV3 ??? … ???
雨
(1) LV1 雨 … 雨を降らせる
(0) LV2 洪水 … 洪水を起こす
(0) LV3 ??? … ???
雪
(0) LV1 雪 … 雪を降らせる
(0) LV2 大雹 … 大きな雹を降らせる
(0) LV3 ??? … ???
雷
(1) LV1 雷 … 雷を落とす
(0) LV2 導雷 … 目標に誘導する雷を落とす
(0) LV3 ??? … ???
火
(0) LV1 火の粉 … 火の粉を降らせる
(0) LV2 火の玉 … 火の玉を降らせる
(0) LV3 ??? … ???
●創造の奇跡
魔法生物
(2) LV1 ゴーレム … ゴーレムを創る
(1) LV2 小人成長 … 小人を人間にする
(0) LV3 ??? … ???
有機生物
(1) LV1 絶滅 … 生命を絶滅させる
(1) LV2 成長促進 … 生命の成長を早める
(0) LV3 ??? … ???
回復
(1) LV1 治癒 … 病気や怪我を治す
(0) LV2 死者蘇生 … 死んだものを蘇らせる
(0) LV3 ??? … ???
●神通の奇跡
神の手
(1) LV1 ジオグラフ … 大地を切り取る
(0) LV2 ウェポン … 武器を出す
(0) LV3 ??? … ???
神の叡智
(0) LV1 現界の声 … この世界の声を聞く
(0) LV2 異界の声 … 異界からの声を聞く
(0) LV3 ??? … ???
●天空城の奇跡
高度
(0) LV1 高度アップ … 天空城をさらに高く飛ばせる
(0) LV2 天空界 … 「天空界」まで飛ばせるようになる
(0) LV3 ??? … ???
速度
(0) LV1 速度アップ … 天空城の移動速度があがる
(0) LV2 高速移動 … 高速移動ができる
(0) LV3 ??? … ???
流脈
(0) LV1 消費減少 … 奇跡力の消費を抑える
(0) LV2 放出 … 天空城から物体を放出できる
(0) LV3 ??? … ???
障壁
(0) LV1 防御障壁 … 天空城を守るバリアを張る
(0) LV2 水中潜行 … 水中に潜れるようになる
(0) LV3 ??? … ???
●太陽の奇跡
気温上昇
(0) LV1 気温上昇 … 気温を上げる
(0) LV2 猛暑 … 猛暑にする
(0) LV3 ??? … ???
気温下降
(0) LV1 気温下降 … 気温を下げる
(0) LV2 寒波 … 寒波を起こす
(0) LV3 ??? … ???




