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13 火おこしで、さらに発展させます

 食べられるものを区別できるようになって、言語の意思疎通による協力もできるようになって……採取集落としては順調なスタートを切った。


 そう……いくら調子が良くても、まだここはスタート地点でしかないんだ。


 なんたって、まだ「アレ」がない。

 人間が生きていくために必要な「水」……それと対をなすもの……。


 そう「火」が……!


 人は、火を利用するようになってから、急速に発展した。


 調理ができるようになって食べられるものが増え、暖を取れるようになって寒い季節でも凍えることがなくなり、明かりとして夜も行動できるようになった。


 そして……人類にとって最強の武器として、猛威をふるった……!


 獣は火を恐れるから、焚いているだけで近寄ってこなくなる。

 ゴブリンやオークも火を使っていなかったから、もしかしたらモンスターにも効果があるかもしれない。


 ……という風に、火はいいことずくめなんだけど……ひとつ、問題点があった。


 それは、ボク自身が火を見たことがないということだ。

 どうやったら火が起こせるのかは、本で見て知ってるんだけど……。


 でも、悩んでいてもしょうがなかったので、ボクは見よう見まねで火おこしにチャレンジしてみることにした。


 まず、木を石オノで削って、火おこし棒を作る。

 そのあと、座りのいい木を土台として用意して、てっぺんに穴をあける。

 できた穴に木くずを入れて、その上から火おこし棒を立てる。

 両手で火おこし棒を挟みこんで、手をこすりあわせるように動かして……ひたすら穴をゴリゴリとやるんだ。


 なんてことを天空城の庭先でやっていると、猫のポポがやってきて……火おこし棒に向かってバシッバシッと猫パンチをしだした。


「ああっ、ポポ、火おこししてるんだから、邪魔しないで」


「……ソラ ナニ シテル?」


 ラヴィさんがボクの右肩にアゴをのせ、覗き込んでくる。

 いっしょにいた集落の女の子も、マネしてボクの左肩にアゴを乗せてきた。


 左肩にいる女の子の名前は、『スミレ』さん。

 みんなの名前をつけてあげたとき、スミレの花が好きだから、その名前になった。


 ラヴィさんより栗色のロングヘアよりだいぶ短い、セミロングの黒髪。

 服装については、ふたりとも葉っぱで作ったビキニみたいなのを着ている。


 彼女たちは女の子なのでそうなんだけど、男の子の場合は葉っぱの海パンみたいなやつ。

 ちなみにボクはずっと同じオーバーオールだ。


 いまは暖かいから、葉っぱだけでも別にいいんだけど、いずれ冬がやってくるはずだから……そのためにも火おこしをしなきゃいけないよね。


「ああ、ラヴィさん、スミレさん。ちょうどよかった、ちょっとポポを抱っこしてて。火おこしを邪魔してくるんだ」


「ヒオコシ?」


 ポポを抱き上げながら、不思議そうなラヴィさん。


「火を起こすんだ……見てて……!」


 ボクは一生懸命、火おこし棒をガリガリとこすりあわせる。

 でもいくらやっても、木くずがすり潰されるだけで……煙すら出る気配がない。


 その様子を、じーっと見つめるラヴィさんとスミレさん。触りたそうに手を伸ばしてくるポポ。


「スミレ ナニ シテル?」


 集落いちの力もちの男の子、『ウオン』さんが覗きこんできた。


 ウオンさんはスミレさんのことを気にかけているようで、よくスミレの花をプレゼントしている。

 いまもスミレさんが何をしているのか気になって、声をかけてきたようだ。


「ソラ ヒオコシ シテル」


「ヒオコシ?」


「あ、ウオンさんならできるかも、ちょっとやってみて」


 ボクはウオンさんにやり方を教えて、火おこしをやってもらった。


「ヨシッ……! ウオッ……ウオン! ウオオオン!」


 ウオンさんは名前の由来となったかけ声とともに、火おこし棒をこすりあわせた。

 ガリガリガリガリッ! と勢いよく棒が回る。なんだかボクがやるより期待できそうだ。


「……がんばって! ウオンさん! 休まずに続けて!」


「ガンバレ ウオン!」


「フミャア!」


「ガンバテ オンサン ヤスマヅヅケテ!」


 ボク、スミレさん、ポポの三人で応援する。

 ラヴィさんは応援しているように見えて、必死にボクの口真似をしていた。


「……ミテロヨ スミレッ!!」


 ウオンさはスミレさんに良い所を見せたいのか、さらに張り切って両手を激しく動かす。


 ガガガガガガガガガガガガッ……!!


「ウ……ウオッ! ウオオオオオッ!! ウオオオオオオオオオーーーーーーーーンッ!!」


 天に向かって、遠吠えのような雄叫びをあげるウオンさん。

 でも……火が起こりそうな気配がないのは、相変わらずだ。


 ……おかしいな、これだけ摩擦があれば、煙のひとつもあがりそうなものなのに……。


 土台から顔をあげると、額に汗するウオンさんに向かってスミレさんが、フーフー! と息を吹きかけていた。


「……スミレさん、なにをしているの?」


「クチ カゼ ダシテル!」


 脇目もふらず、教えてくれるスミレさん。

 なるほど、風を送ってウオンさんを涼しくしてあげてるのか。


 そういえば以前、みんなで汗をかきながら作業してるとき……なぜ涼しいときがあるのか聞かれたことがあるんだよね。


 ボクは、風のことを教えてあげた。

 風が吹くと、身体の熱が飛んでいくから涼しくなるんだ、って、手のひらの木の葉を熱にたとえて、それを口で吹いて飛ばしたんだ。


 『風』という、目に見えなくても肌触りがあるものは理解できたようなんだけど、『熱』という目に見えなくて肌触りもない存在を理解させるのは難しくて……みんなは、口でフーフーすると涼しくなる、というのを覚えただけだった。


 その時のウオンさんなんかは、調子に乗ってスミレさんをフーフーして、酸欠になってめまいを起こしてたっけ。

 ラヴィさんもボクをフーフーして、クラクラしてた。


 ……あれ、まてよ……? フーフーする……?


 何の気なしに思い浮かんだ回想……でもそれがヒントとなった。

 ボクは試しに、火おこしの土台にフーッと息を吹きかけてみる。


 すると、ふわっ……と白い煙があがったんだ……!


 そ……そうか、そうだったのか……!

 風があるからこそ、人は涼しくなり、風があるからこそ、火は燃え上がる……!


 原理は違うけれど、大事なのは、空気の流れだったんだ……!


「いいよ! ウオンさん! スミレさん! もっとやって! もっと!」


「ウオッ! ウオオオオオオオオオオーーーンッ!!」


「フーッ! フーッ! フーッ! フゥゥゥゥゥーッ!!」


「そう、その調子! ってラヴィさん! ボクじゃなくて、ウオンさんをフーフーしてっ!」


 ボクはウオンさんとスミレさん応援し、ラヴィさんをたしなめる。

 そして木くずを足しつつ、土台に息を吹きかけ続けた。


 すると、


 ……ボウッ!


 新人類の手による、はじめての炎が……誕生したんだ……!


「ウワアッ!?」「アアッ!?」「キャアッ!?」


 その熱さと勢いにビックリして、ひっくり返るウオンさんとスミレさん、そしてラヴィさん。

 ボクは初めて見る『火』というものに、肌をヒリヒリさせながらも、目を離せずにいた。


 初めて火を起こしたことで、1レベルアップしたことも、気づかないほどに……!


「す……すごい……これが……火……!」


 動画とかでは見たことがある。山火事のシーンなどはすごい迫力だった。

 初めて見た本物の炎は、その何千分の一くらいの規模だったけど……感じた迫力は、動画の何万倍……!


 水みたいに柔らかそうなのに、近づけば近づくほど、熱い……!

 水から感じるエネルギーはやさしいものなのに、火から感じるエネルギーは力強い……!


 まるで、牙を剥いている獣みたいに……今にも襲いかかってきそうだ……!


 なんて感動しているうちに、火はあっという間に天空城の草に燃え移ったので、ボクはようやく我に帰る。

 どうしようか慌てちゃったけど、飲むために置いておいたコップの水をかけて、なんとか消した。


  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


 それからボクは、集落から離れた河原で石を組み合わせて、火焚き場を作った。

 火を起こしたあと、ここでずっと焚き木を足して燃やし続けていれば、改めて火おこしをしなくてもいいというわけだ。


 それに、ここならまわりは石だから燃え移る心配はないし、もし火事になっても近くに川があるから、すぐに消し止められる。まさにいいことずくめだ。


 そのあとついでに、火おこし器も改良した。

 火おこし棒にツタを巻きつけて、引っ張って回転させられるようにしたのと、土台に風が通るようにして、火種ができやすくした。


 これで、そんなに力を入れなくても、火おこしができるようになった。

 ひととおりの準備を終えたところで……ボクはみんなを集めて、火おこし教室を開いた。


 ふたりでひと組になって、ツタを動かす係と、火おこし棒と土台を押さえておく係。

 男女でペアになってやってもらうと、時間はかかったけど、みんな火種を作れた。


 できた火種は、さっそく火焚き場に入れた。

 上から枯れ木を放りこんでみると、大きく燃え上がって……みんなびっくりして、怖がってた。


 人間もやはり獣と同じで、根源的に火を恐れる生き物らしい。

 でもおかげで、火に顔を突っ込むような無茶をする人はいなくて助かった。


 ……猫のポポは暖かいのが好きなのか、火に近づきすぎてヒゲを焦がしてたけど。


 でもこれで、火が使えるようになった……!

 これで、いろんなことができるようになるぞ……!


 燃え上がる炎を見つめていると、なんだか希望がわいてくるような気がして……不思議とボクの気持ちは高揚していった。

 それはみんなも同じようで、動物園から野生に戻ったオオカミみたいに、ウォーウォーと叫んでいた。

■■■奇跡ツリー■■■(現在の神様レベル:11)


 今回は割り振ったポイントはありません。未使用ポイントが3あります。

 括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


 ●創造の奇跡

  魔法生物

   (1) LV1 ゴーレム  … ゴーレムを創る

   (1) LV2 小人成長  … 小人を人間にする

   (0) LV3 ???   … ???

  有機生物

   (1) LV1 絶滅    … 生命を絶滅させる

   (1) LV2 成長促進  … 生命の成長を早める

   (0) LV3 ???   … ???

  回復

   (0) LV1 治癒    … 病気や怪我を治す

   (0) LV2 死者蘇生  … 死んだものを蘇らせる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●天候の奇跡

  雲

   (0) LV1 雲     … 家の煙突から雲を出せる

   (0) LV2 虹     … 虹を出せる

   (0) LV3 ???   … ???

  風

   (0) LV1 風     … 風を起こせる

   (0) LV2 竜巻    … 竜巻を起こせる

   (0) LV3 ???   … ???

  雨

   (1) LV1 雨     … 雨を降らせる

   (0) LV2 洪水    … 洪水を起こす

   (0) LV3 ???   … ???

  雪

   (0) LV1 雪     … 雪を降らせる

   (0) LV2 大雹    … 大きな雹を降らせる

   (0) LV3 ???   … ???

  雷

   (1) LV1 雷     … 雷を落とす

   (0) LV2 導雷    … 目標に誘導する雷を落とす

   (0) LV3 ???   … ???

  火

   (0) LV1 火の粉   … 火の粉を降らせる

   (0) LV2 火の玉   … 火の玉を降らせる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●神通の奇跡

  神の手

   (1) LV1 ジオグラフ … 大地を切り取る

   (0) LV2 ウェポン  … 武器を出す

   (0) LV3 ???   … ???

  神の叡智

   (0) LV1 現界の声  … この世界の声を聞く

   (0) LV2 異界の声  … 異界からの声を聞く

   (0) LV3 ???   … ???


 ●天空城の奇跡

  高度

   (0) LV1 高度アップ  … 天空城をさらに高く飛ばせる

   (0) LV2 天空界    … 「天空界」まで飛ばせるようになる

   (0) LV3 ???    … ???

  速度

   (0) LV1 速度アップ  … 天空城の移動速度があがる

   (0) LV2 高速移動   … 高速移動ができる

   (0) LV3 ???    … ???

  流脈

   (0) LV1 消費減少   … 奇跡力の消費を抑える

   (0) LV2 放出     … 天空城から物体を放出できる

   (0) LV3 ???    … ???

  障壁

   (0) LV1 防御障壁  … 天空城を守るバリアを張る

   (0) LV2 水中潜行  … 水中に潜れるようになる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●太陽の奇跡

  気温上昇

   (0) LV1 気温上昇  … 気温を上げる

   (0) LV2 猛暑    … 猛暑にする

   (0) LV3 ???   … ???

  気温下降

   (0) LV1 気温下降  … 気温を下げる

   (0) LV2 寒波    … 寒波を起こす

   (0) LV3 ???   … ???

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