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11 ついに赤ちゃんが、できました…!

 ボクは奇跡ツリーの画面を操作して、迷わず『小人成長』に1ポイントを割り振った。


 だって、小人たちは人間になりたがっている。

 その願いをボクが叶えてあげられるなら、1ポイントくらい安いもんだ。


 ボクはオジサンから『小人成長』の使い方を教えてもらったあと、さっそくやってみようと庭に出た。


「ヤッホーっ! 人間になりたい子、いるーっ!?」


 まわりの青空を、ぐるりと見回すようにして叫ぶと、


『はぁーーーーーいっ!!!』


 あちこちの草むらから元気な声とともに、小人が飛び出してきた。

 わあーっと歓声をあげながらボクの元に集まってくる。


 ボクはまず試しに、ひとりだけ人間にしてみることにした。

 記念すべき最初の小人は、『ジオグラフ』を使ったときにポポが見つけた子にしようと思ったんだけど……小人たちに尋ねても、誰も覚えていなかった。


 少し離れた場所で、お座りしている犬のポポにも聞いてみる。

 すると、ボクのまわりで輪になっている小人たちをフンフンと嗅ぎまわったあと……ひとりの小人を咥えて差し出してくれた。


 きっとこの子が、最初に見つけた小人なんだろう。


「よし、じゃあまずはキミを、人間にしてあげる!」


「わぁーわぁー! やったぁー!」


 ボクの手のひらにいる小人は、ピョンピョン跳ねて大喜びしだした。

 まわりの小人たちは「いいなーいいなー」と指を咥えて見上げている。


「大丈夫。いい子にしてたら、みんなも人間にしてあげるからね」


 ボクは園児たちをなだめる保育士さんみたいに言ってから、『小人成長』にとりかかった。


 手のひらの小人を、やさしく包み込んでから、


「小人成長……!」


 宣言しつつ、両手を閉じる。

 すると……小人は手のひらの中に収まるように、しゅるしゅると縮んでいく。


 花のつぼみのようになったボクの手。

 少し待つと、指の間から光が漏れた。


「よし……ここまでは、オジサンの言うとおりだ……!」


 ボクはウンと頷いたあと、きつく閉じていた手を、開花させるようにゆっくりと開く。

 すると、ボクの手のひらの中には……ハムスターくらいの、ちっちゃな赤ちゃんがいたんだ……!


「……わぁ……!」


 ボクは赤ちゃんがあまりにも可愛かったのと、うまくいってホッとしちゃったのか……自然と溜息を漏らしていた。

 でも和んでいたのも束の間、


「ほんぎゃあぁぁぁー!! ほんぎゃああああああーーーっ!!」


 赤ちゃんは高らかな息吹きとともに、風船みたいにムクムクと膨らみだした……!


「うわっ、あぶないっ!?」


 手のひらから落としそうになったので、あわてて抱きとめる。

 ここまま破裂しちゃうんじゃないかと心配したけど、人間の赤ちゃんくらいの大きさで膨張は止まった。


「ほ、本当に、赤ちゃんになっちゃった……!?」


 ボクはビックリしながらも、胸と腕でハッキリと感じていた。

 生まれたばかりの、命のぬくもりを。


 ずっしりとした重さはまさに……人ひとりの、命の重さだった……!


「きゃあー!? にんげんだ、にんげんだーっ!!」


 ボク以上にビックリして、逃げ惑う小人たち。

 それにビックリしちゃったのか、さらに大声で泣き出す赤ちゃん。

 さらにビックリして、右往左往しはじめるポポ。


 空に浮かぶ天空の城は、あっという間に蜂の巣を突いたような大騒ぎになる。


「ど、どうしようっ!? どうすればいいの!? ああっ、泣かないで、よしよし! べろべろばーっ! あばばばばばばば!」


 みんなが行ったり来たりする中、ボクはもう何がなんだかわからなくって……いっしょにアタフタしながら、赤ちゃんを泣き止ませるのに必死になった。


  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


 『小人成長』……小人を人間にする奇跡。

 使うことにより、小人(こびと)大人(おとな)にしてくれるんだと思っていた。


 でも、まさか……赤ちゃんになっちゃうだなんて……!


 ボクはまず、寝室にあったシーツをひっぺがしてきて、赤ちゃんを包んだ。

 するとお漏らしをしたので、寝室からまくらカバーを取ってきて、おむつがわりに履かせてあげた。


 ボクは赤ちゃんの世話をするのは初めて。

 いや、それどころか、触るのも初めて……いやいや、見るのも初めてなんだ……!


 だから赤ちゃんのちょっとした仕草で、ボクはパニックになった。

 どこか痛いの!? 痒いの!? くすぐったいの!? それとも暑いの!? 寒いの!? って。


 泣いたら泣いたで、どうやって泣き止ませればいいのかわからなくて……ポポと一緒にいろんなことをやった。

 大変だったけど……でも笑顔になってくれたときは、天使みたいで……今までに感じたことのない、最高の気持ちになれるんだ……!


 それにしても……赤ちゃんっていうのは本当に不思議な生き物だ。

 泣いていたらほっとけないし、笑ってくれたらこっちまで笑顔になっちゃう。


 そしてなぜだか当然のように、なにがあっても守ってあげなきゃ、って気持ちになるんだ。


 ボクは赤ちゃんに『ラヴィ』という名前をつけてあげた。

 フランス語で『生命』という意味だ。


 ボクはすでにこの生命を、何としても立派に育てあげるんだ……! という気持ちになっていた。


 でも……その時のボクは決意ばかりで、赤ちゃんに大事なことをすっかり忘れていたんだ。

 赤ちゃんとって、なくてはならない存在のことを……!


 赤ちゃんが懸命にボクの指をしゃぶっていたので、お腹が空いたのかな、と思って最初はリンゴをあげてみたんだ。

 でも、歯がないから食べられないことに気づいた。


 ボクは家の台所にあった皿で、リンゴをすり潰して食べやすくした。

 そうすると、口に入れてくれたんだけど……小さな破片でも喉につまらせて、苦しそうにするんだ。


 ボクはさらに小さくすり潰して、すりリンゴみたいにしてからあげるようにした。

 これで大丈夫かなと思ってたんだけど……赤ちゃんはすぐにお腹を壊してしまった。


 苦しいのか、ずっと泣いていて、おしめを変えても、いくらあやしても、泣き止まなくなった。

 とうとう熱まで出して、目に見えて衰弱しているのがわかって……ボクは心臓を突き上げられる思いだった。


「ああっ、もうっ! どうすれば、どうすればいいのっ!?」


 ボクは頭をかきむしって、自分も赤ちゃんになったみたいに暴れた。


 そしてようやく、気がついたんだ……!


 生まれたばかりの赤ちゃんには、母乳……ママのおっぱいが必要なんだ……!!

 最低でも粉ミルクがないと、赤ちゃんは大きくなれないんだ……!!


 やっぱり、ママだ……! ママがいないとダメだ……!!

 このままじゃ……死んじゃう……! 赤ちゃんが、死んじゃう……!!


 で、でも……! あきらめて、あきらめてたまるかっ……!!

 ボクがあきらめたら、本当に死んじゃうんだ……!!


「絶対に……絶対にあきらめないぞっ……!!」


 ボクは大声を出して、自分を奮い立たせた。

 もう泣くこともできなくなった赤ちゃんを抱いて、ホコラに向かう。


 天空石のオジサンは、ボクが『小人成長』で小人を赤ちゃんにしたのは知っていた。

 でもその赤ちゃんの命の灯が、今にも消えそうになっていることは知らないようだった。


「ソラよ、まだひとりしか人間がおらんようじゃな。人間はいくらいても困ることはないから、どんどん小人を成長させるとよいぞ」


 いつものように、画面の向こうでボクにアドバイスをくれるオジサン。


 でも内容としては、見当違い……!

 やっぱりボクがやったこと以外は、わからないんだ……!


 そうなると、赤ちゃんを助ける方法は自分で探すしかない。

 ボクは天空石を操作して、『奇跡ツリー』を開く。


 『図鑑』で調べることも考えたんだけど、今は一刻を争う。

 非常事態のときは知識を得るよりも、即効性のある奇跡に頼ったほうがいいと考えたんだ。


 奇跡ツリーはもう何度も見てるけど、改めてしっかりと内容を確かめる。

 そこで目についたのは、『創造の奇跡』の区分にある……ふたつのスキル。


  有機生物

   (0) LV1 絶滅    … 生命を絶滅させる

   (0) LV2 成長促進  … 生命の成長を早める


  回復

   (0) LV1 治癒    … 病気や怪我を治す

   (0) LV2 死者蘇生  … 死んだものを蘇らせる


 残った2ポイントを費やして『成長促進』を取り、赤ちゃんを一気に大人に成長させる。

 または同じく2ポイントで『死者蘇生』を取り、赤ちゃんの死に備える……!


 前者は『絶滅』のスキルも手に入るけど……今のボクには使いみちはなさそうだ。

 後者は『治癒』のスキルが手に入り……今のボクや、赤ちゃんにも役に立つ。


 ボクは視線を落とし、腕の中の赤ちゃんを見る。

 やつれていて、ぐったりとしていて……今にも消え入りそうな、薄い呼吸を繰り返している。


 もう、悩んでいる時間はない……!

 それにこんな赤ちゃんの姿は、もう二度と見たくない……!


「……よしっ!!」


 ボクは意を決して、ある『奇跡』に触れた。

■■■奇跡ツリー■■■(現在の神様レベル:8)


 今回は『小人成長』に1ポイントを割り振りました。未使用ポイントが2あります。

 括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


 ●創造の奇跡

  魔法生物

   (1) LV1 ゴーレム  … ゴーレムを創る

   (1) LV2 小人成長  … 小人を人間にする

   (0) LV3 ???   … ???

  有機生物

   (0) LV1 絶滅    … 生命を絶滅させる

   (0) LV2 成長促進  … 生命の成長を早める

   (0) LV3 ???   … ???

  回復

   (0) LV1 治癒    … 病気や怪我を治す

   (0) LV2 死者蘇生  … 死んだものを蘇らせる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●天候の奇跡

  雲

   (0) LV1 雲     … 家の煙突から雲を出せる

   (0) LV2 虹     … 虹を出せる

   (0) LV3 ???   … ???

  風

   (0) LV1 風     … 風を起こせる

   (0) LV2 竜巻    … 竜巻を起こせる

   (0) LV3 ???   … ???

  雨

   (1) LV1 雨     … 雨を降らせる

   (0) LV2 洪水    … 洪水を起こす

   (0) LV3 ???   … ???

  雪

   (0) LV1 雪     … 雪を降らせる

   (0) LV2 大雹    … 大きな雹を降らせる

   (0) LV3 ???   … ???

  雷

   (1) LV1 雷     … 雷を落とす

   (0) LV2 導雷    … 目標に誘導する雷を落とす

   (0) LV3 ???   … ???

  火

   (0) LV1 火の粉   … 火の粉を降らせる

   (0) LV2 火の玉   … 火の玉を降らせる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●神通の奇跡

  神の手

   (1) LV1 ジオグラフ … 大地を切り取る

   (0) LV2 ウェポン  … 武器を出す

   (0) LV3 ???   … ???

  神の叡智

   (0) LV1 現界の声  … この世界の声を聞く

   (0) LV2 異界の声  … 異界からの声を聞く

   (0) LV3 ???   … ???


 ●天空城の奇跡

  高度

   (0) LV1 高度アップ  … 天空城をさらに高く飛ばせる

   (0) LV2 天空界    … 「天空界」まで飛ばせるようになる

   (0) LV3 ???    … ???

  速度

   (0) LV1 速度アップ  … 天空城の移動速度があがる

   (0) LV2 高速移動   … 高速移動ができる

   (0) LV3 ???    … ???

  流脈

   (0) LV1 消費減少   … 奇跡力の消費を抑える

   (0) LV2 放出     … 天空城から物体を放出できる

   (0) LV3 ???    … ???

  障壁

   (0) LV1 防御障壁  … 天空城を守るバリアを張る

   (0) LV2 水中潜行  … 水中に潜れるようになる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●太陽の奇跡

  気温上昇

   (0) LV1 気温上昇  … 気温を上げる

   (0) LV2 猛暑    … 猛暑にする

   (0) LV3 ???   … ???

  気温下降

   (0) LV1 気温下降  … 気温を下げる

   (0) LV2 寒波    … 寒波を起こす

   (0) LV3 ???   … ???

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