#007「裏腹」
@山猫荘
黒沢「依頼内容は、欅坂少年の身辺調査、でよろしいですね?」
太田「はい。お願いします」
黒沢「それでは、ご契約内容を確認の上、署名を」
北山「細かい但し書きに注意しろよ。一ミリ角の字で、ビッシリ免責事項が書いてあるかもしれない」
黒沢「そのような姑息な手段は、悪魔の末席を汚す下種の極みがすることです」
太田「血液や毛髪を代償にする、みたいなことは書いてないね」
黒沢「魔女ではありませんから」
北山「魔物ではあるけどな」
黒沢「写真か何か、姿が分かる物をお持ちでしょうか?」
太田「ありますよ」
黒沢「拝見します。真ん中の子ですね」
北山「いつ撮ったんだ?」
黒沢「顔に見覚えはありませんね。いま受け持っている顧客ではないようです」
北山「オイ。寝てるあいだに勝手に写真を撮る奴が、どこにいる」
太田「ここにいるよ。だって、風斗くん。カメラを向けたら逃げるじゃないか」
黒沢「着ている服から察するに、一丁目方面でしょうね。――書けましたか?」
太田「はい」
黒沢「それでは、調査終了までは、普通にお過ごしください。三日後に結果をお知らせします」
北山「三日で調べられるものなのか? 本名も明らかになってないのに」
太田「任せてみようよ。――あ、そうだ。黒沢さん、スイーツはお好きでしたよね? プリン、食べますか? ちょうど三個あるんです。粗品のお礼も含めて」
黒沢「いただきます。甘い物が恋しいと思っていたところです。お皿とスプーンをお持ちしますね」
*
@奥右真マート
北山「天界の夢神が、魔界の悪魔と手を結んで大丈夫なのか?」
太田「黒沢さんは特別だよ。彼は、良い悪魔だから」
北山「矛盾してないか?」
太田「そのうち分かるよ。それより、風斗くん。使ったら元の場所に戻す、服を脱ぎ捨てない、新しいストックは、古いフローを使い切ってから開封する。この三つは、いつになったら身に付くの?」
北山「着替えたり、シャワーを浴びたり、食事をしたり、歯を磨いたり、眠ったり、下界の人間は面倒な生き物だよ、まったく」
太田「料理が美味しいって感覚は、新鮮だけどね」
北山「だからって、テレビに映った動物園や水族館の動物を、食材として見るなよ。あと、チョークやデンプン糊を食べさせようとするな」
太田「昼休み前に、お腹が空いたって言うからだよ」
北山「そりゃ、言ったけどさ。――それより、今晩は何にする?」
太田「そうだなぁ。カレーが安いから、カレーにしよう」
北山「作りすぎて残しても、絶対食べないからな」
太田「僕たち、見た目と味覚が正反対だもんね。プフッ」
北山「容姿は関係ないだろうが。笑うな」
太田「だって、その顔でカレーのプリンスくんを買うんだもん。ケーちゃんだって、もうちょっと辛いのにするよ」
北山「うるさい。暴君め」
太田「レジの人は、絶対、逆だと思ってるよ」




