#002「メッセンジャーズ」
@山猫荘
北山「話を整理しよう。一点目。お前たちは、一〇一号室の大家が飼ってる猫なんだな?」
タキ「お前呼ばわりしないでちょうだい。アタシはロシアンブルーのタキ」
ヨシ「アタシはアメリカンショートへアのヨシよ。ちゃんと名前があるんだから、覚えてね」
太田「二匹合わせて、冷戦キャッツ」
北山「変なチャチャを入れるな、陽介。――二点目。タキとヨシは、俺たちの案内役なんだな?」
タキ「そうよ。アタシが風ちゃんのナビゲーターで」
ヨシ「アタシが陽くんのナビゲーターよ。よろしくね」
太田「こちらこそ、よろしくね」
北山「受け入れが早すぎるぞ、陽介。少しは怪しめ」
タキ「あら。風ちゃんの方が、よっぽど怪しいと思うわよ」
ヨシ「そうよ、そうよ。前科七犯みたいな風貌じゃない」
太田「強盗、殺人、暴行、傷害、放火、誘拐。あと、立てこもりかな?」
北山「身に覚えの無い罪を着せるな。冤罪もいいところだ」
タキ「他に質問は、あるかしら?」
ヨシ「初回特典で、何でも答えるわよ」
太田「それじゃあ、下界に来てから、ずっと気になってたことを訊くね。ここの大家さんは、おじいさんなの? それとも、おばあさん?」
北山「どうでも良い情報を訊ねるな。時間の無駄だ」
タキ「そうでもないわ。どんな些細な疑問でも、未解決だとモヤモヤして仕事に専念できないものよ」
ヨシ「だから、お答えするわね。おばあさんに見える、おじいさんよ」
太田「おじいさんなんだね。スッキリした」
北山「俺は、今ので余計にモヤモヤしてるけどな」
タキ「性別の問題が出たから、ついでに言っておくわ。アタシたちは、雌猫に見える、雄猫よ」
ヨシ「雄としてのシンボルを切除されちゃってるけどね」
太田「つまり、去勢済みってことだね。どっちが映画評論をして、どっちがファッションチェックをするの?」
北山「ワイドショーの見過ぎだぞ、陽介。――頼むから、何の役にも立たない情報を追加しないでくれ。猫が人語を操ってるってだけでも、頭がパンクしそうなのに、オネエ口調で喋られた日には、もう、敵わない」
タキ「アタシたちだって、誰に対しても意思疎通が出来るわけじゃなくてよ」
ヨシ「そうよ。天神地祇や妖魔幽鬼でなきゃ、ただ鳴き声を発してるようにしか認識されないんだから」
太田「へぇ、そうなんだ。ラッキーだね、僕たち」
北山「アンラッキーだよ。聞き取れないほうが、よっぽど良い」
タキ「そんなこと言って邪険にしてると、痛い目に遭わせるわよ、風ちゃん」
ヨシ「そのコワモテを、十字に引っ掻いてやるんだから」
太田「京都の地図を買う手間が省けそうだね」
北山「俺の顔を何だと思ってるんだか。――三点目。その首輪に結んであるものは何だ?」
タキ「イッケナーイ。忘れるところだったわ」
ヨシ「陽くん、お願い。外して広げて読み上げて」
太田「オッケー」
太田、首輪に結ばれた紙を解く。
北山「待て。これは何かの罠かもしれないぞ」
タキ「大丈夫よ。これは只の依頼状なんだから」
ヨシ「見た目にそぐわず、臆病なんだから。風ちゃん、可愛い」
ヨシ、北山に跳び乗り、じゃれつく。
北山「ヒィ。頬に擦り寄るな、首筋を舐めるな、耳を噛むな」
タキ「ヨシばっかりズルイわ。アタシも」
タキ、北山に跳び乗り、じゃれつく。
北山「えぇい。もう、なるようになれ、だ」
太田「やっと観念して状況を受け入れる気になったみたいだね、風斗くん。それじゃあ、読み上げるよ」




