#000「口は災いの元」
@天界
釈迦「下界にある日本という国は、深刻な睡眠不足に陥っています。夢神として、この事実は放って置けませんよね?」
夢神「はい。僕も件の国民病には、前々から危機感をいだいていました」
死神「俺、帰って良い? そもそも、何で冥界から喚ばれたのか、さっぱりわからないんだけど」
釈迦、二人に背を向け、説明を続ける。
釈迦「眠れない人間たちは、さまざまな問題を抱えています。失恋した人間、配偶者に悩まされる人間、上司に振り回される人間、子育てに追われる人間、介護や看護しなければならない人間、大切な家族を亡くした人間、失望した人間」
夢神「たぶん、この前のことが関係してるんだと思うんだ」
死神「何があったんだ?」
釈迦「イジメのターゲットや仲間外れにされたくない中学高校生。将来の為に今を犠牲にする受験生。膨大な書類作成と保護者対応に東奔西走する教職員。次々に運び込まれる患者に不眠不休で対応する医師」
夢神「閻魔様にフラれたらしいんだ」
死神「またかよ。閻魔は裏表があるタイプは嫌いなんだから、脈無しだってのに」
釈迦、二人の方を向く。
釈迦「誰が裏表があるですって?」
夢神「聞こえてましたか」
死神「俺の質問はスルーしたくせに」
釈迦「まぁ、いいでしょう。眠れない子羊の悩みを解決に導くのは、われわれ神仏の務めです。そうですね?」
夢神「はい、その通りです」
死神「待てよ。これは誘導尋問かもしれな」
釈迦「それでは、下界へ行ってらっしゃい」
釈迦、二人を突き飛ばす。
夢神「ひゃっ」
死神「うわっ」
釈迦「頑張りなさいよ。天界から見守ってますからね」




