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莫迦な男  作者: 文月遊冶
4/13

―雄弁なる鉄塊― 4/14

「思えば今日は妙に暑い。散髪に行くにしても、もう少し日を考えるべきだった。」などと、床屋までの途を中ほどまで過ぎてしまったところでどうしようもない後悔をしては、先の無駄な思考の結果もあいまって意味もなく落ち込んだ。僕の悪い癖だ。

「まあどうせ邪魔くさい髪が短くなって涼感の足しになるだろうから差し引きだ。」こうやって変に肯定的に考えを改めようとするのもまた悪い癖だ。

 改めて書くと非常に煩わしいことを承知で確認するが僕は所謂クズというものだ。塵芥だ。学業は思わしいものでもないし、運動がさして得意というわけでもない。他者との交流は既述から察するに難くなく、苦手なのである。高等学生の時分、知り合って数か月の知人と何気なく会話を交わしていたところ、偶然にも自分の持つ数少ない得意とする分野の議論になった。それまで相槌程度の返答ばかりを繰り返していた僕はここぞとばかりに捲くし立てて、一方的な水かけ論を演出した。ひと段落ついたところで会話の相手が放った「君は好くそんなに言葉が次々と出せるな」という言葉を皮肉と理解したのはその晩のことであった。


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