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―処暑― 3/14
「セミがもう鳴いているとは、妙に早いな。さしずめ早起きのセミなのだろう。」などと誰が聞いているわけでもなく呟きながら僕は夏というものを考察していた。
僕は夏を好く思っていなかった。嫌いかと問われれば、それは極端だと反駁する程度には最低の評価を下してはいないものの、人間で夏を至高の季節とする人にはやはり共感できなかった。それだけに僕は、何故自分と世間にそのような意見の相異があるのだろうと思わずにはいられなかった。
兎角暑い。率直なところこの一言に尽きるのだろう。冬は着込むなり、酒を飲むなりすれば暫くの暖を取ることができる。他方で、夏は裸以上に脱ぐものはなし、氷菓子を搔き込んでも一時の寒としかならず、熱風に煽られて打ち消されるのが常套起こるだけである。この否定的な考え方がズレとなっているのだろうと一つの意見として頭に浮かんだ。つまりは寒暖を問わず年中を楽しめる姿勢の有無こそが僕と他人の違いであり、僕というものを一つ決定づける要因なのである。
僕は根暗なのだ。




