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―回帰― 12/14
「うん。ああ、そういえば。」何とはなしに衣嚢に手を入れてみると、そのハンケチに触れる。今更そうしたところで如何なるわけでもなかろうに。そう思うよりも速く、妄想した論理が蘇ってきた。するとどうであろうか、胸中の暗雲は徐々に晴れ行き、いつしか余裕というものがそこに芽生えていたのである。置かれた状況下なら寧ろあの仏頂面した雑貨屋が浮かぶはずなのにと不思議がっていたが、次第僕はそれをお得意の、しかし無駄な思考で納得「させた」のである。
雑貨屋は一種の論理展開を内装としていた。そうすることで、何もかもが泰然としていたのである。そしてその論理の始まりはこのハンケチであった。僕はこれからこの煩わしい店主から二三と話題を振られるに違いない。それに対して、確固たる主張と根拠を示せばいいだけじゃないか。どれだけ話したってそれは問題じゃない。大切なのは隣の商品と最終的にはハンケチなのだ。
店主の問いかけは陳腐な世間話に移っていた。




